▽岩・石ころ

2020年8月29日 (土)

タマネギ状構造(神奈川県東丹沢~山梨県秋山)

神奈川県の東丹沢周辺では、よくタマネギ状構造、あるいはタマネギ状風化が見られます。

昔は牡丹石ともいわれていました(日本で牡丹石と呼ばれている石には、まったく違う種類のものがいくつかあるようです)。『新編相模国風土記稿』に、「牡丹石。(青野原村ニ産ス。本草綱目ニ井泉石ト見ヘタルハ。卽是石ノ類カ。)」(巻之百十六 津久井県巻之一)と書かれています。

個人的には青野原の山というと焼山くらいしか行ったことがありません。タマネギ状構造を見た記憶はないのですが、別の石のことではないと思います。その詳細は「地誌のはざまに 青野原の牡丹石」に詳しいので、興味ある方はそちらをどうぞ。

風土記稿」の同じ個所には道志川の貝石というのも載っていて、これはカネハラニシキの化石のことでしょう。大室山の貝沢あたりから流れてきたものと思われます。

 

タマネギ状構造は東丹沢、特に大山や広沢寺の鐘ヶ岳周辺には多く見られ、どちらも信仰の山であり、参拝者、あるいは行者たちにとっては、よく目にする馴染みのあるものだったでしょう。山岳信仰と鉱山、本草学は、深い結びつきがあります。行者たちは、多分この周辺でとれる役に立つ石や草のエキスパートだったはず。

東丹沢の山岳信仰の中心は愛川町の八菅山ですが、飯山あたりには銅鉱もあり、鋳物師の拠点だったといいます。七沢には多々良沢なんていう名前の沢もあり、ちょっと気になりますね。今ではこのあたりで鉱石を採集したなどという話はまるで聞かないのですが。

ちなみに宮ケ瀬から流れる川は中津川といいます。中津川といえば、鉱物好きには気になる地名で、特に秩父や恵那の中津川は、日本でも指折りの稀少鉱物の産地として有名です。神奈川の中津川は、地学的には牧馬・煤ヶ谷構造線という古いプレート境界線にあたり興味深いところですが、鉱物的にはいまいちパッとしませんねw

 

タマネギ状構造は、岩が節理に沿って次第に丸みをもって風化していったものですが、出来方については、ここがわかりやすいかも。平塚市博物館「東丹沢のタマネギ石(4)−そのでき方−

 

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大山の東、日向薬師の奥、屏風沢上流の枯れ棚。雨が降れば流れるであろう水流で、なめらかに浸食されているのでしょうか。皮がめくれたようにはなっていませんね。でも、節理に沿ってタマネギ状構造が発達している様子がよくわかります。割れ目の白い脈は、沸石でしょうか。

さらに沢の奥まで行くと、まるで屏風のようにたった岩壁が広がっていて、沢名の由来になったと思われます。

 

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鐘ヶ岳、広沢寺からの登山道の途中。古い参詣道で、番地を記した江戸時代の道しるべが登山口から頂上まで続いています。

鐘ヶ岳は昔は大山と並ぶ信仰の山で、多くの参詣者でにぎわったらしいですが、今は登山者も少なく静か。頂上には浅間神社がありますが、頂上の少し下には寺もあったようで、礎や瓦などが発掘されています。

 

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大山三峰の南。不動尻から稜線に登山道を登って、ちょっとのところだったと思います。

不動尻は、心霊スポットで有名な七沢の山神隧道を越えた先にある、大山や三峰の登山口。この周辺は暗くてじめっているし、キャンプ場だったころの名残りの廃墟もあったりして、おせじにも気分のいいところとはいえないので、まあ心霊スポットになる気持ちはわかるw

 

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宮ヶ瀬湖の南畔、林道土山高畑線沿いにあります。土山峠からちょっと行ったところの、橋のきわ。

これだけ立派なのは、見たことないですね。

 

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山梨県秋山の高柄山稜線上。

 

藤野木・愛川構造線、牧馬・煤ヶ谷構造線という古いプレート境界線に沿って、タマネギ状構造が続いているように感じます。

タマネギ状構造は、火山性タービダイト(海底の乱泥流堆積物のこと。普通、粗粒ほど先に下に沈み、細粒ほど後から沈み、層ができる)でしか見られないそうです。最初は海であったプレートの境界は、陸地にはさまれた深い海になり、隆起して山になった両側から多量の土砂が流れ込み段々浅くなっていき、やがては山間の川となります。その過程で堆積岩ができ、常に強い力を受けているために、割れ目(節理)もできやすいということなのでしょう。

 

東丹沢は鉱物的にはそれほど面白いところではないのですが(それでも鉱山跡はちらほらとある)、地学的にはとても興味深い地域です。

夏は行きたくないところですけど(暑いし山ヒルがががが)

 

2020年7月12日 (日)

柱状節理〈1〉(神奈川県足柄下郡新崎川流域)

Columnar jointing

 

Columnar-joint_shinzaki_01

Columnar-joint_shinzaki_02

 

岩の分類を追加します。

柱状節理は大好きで、いろいろ見てきましたが、この滝は一番のお気に入りです。新崎川上流の中尾沢F2になります。10年くらい前から、毎年年末~新年に一度お参りみたいな感じで訪れていましたが、2年位前、沢がひどく荒れて経路がわかりにくく、ちょっと危ない感じになりました。それ以来、ちょっと足が遠のいているのですが、最近はどうなっているのか。。。

滝としてはそんなに大きいものではないのですが、美しさという点では、これに勝る滝を見たことはありません。ちょうど南向きの沢なので、日の光がよく当たり、細かいしぶきがきらめくさまは見ていて飽きません。

中尾沢を遡行し、F1(時間によってはよく虹が出ている)の左を巻いてよじ登ると、いきなり目の前に現れます。さらに右岸の小尾根を伝って、落ち口に登ることもできます。ちゃんとした登山道などはありません。この辺は、地形図に道として描かれていても実際にはもう跡形もないものも多いです。箱根周辺のハコネダケ(ササ)のヤブは、通行不可能といっていいので、あまりうろちょろできないのですが。。。(このあたりで、わずか数十メートル程度のヤブが越えられず、撤退したことがありますw)

 

柱状節理は、溶岩が岩になり、さらに冷えていく過程で収縮するために4~7角形に規則正しく割れ目ができて、柱状になったものです。

すべて火山といってよい伊豆にはあちこちに柱状節理が見られ、特に火山から流れた溶岩が沢沿いに流れ、冷やされてできた例が多いようです。冷却面に垂直に柱ができるので、ここの場合、沢に沿って沢を埋めるように溶岩が流れて固まり、そのあとに上にまた水が流れて崩れていって滝ができたのでしょう。滝の上に登ると、川床に六角形の岩が続いているのが分かります。

ここに行くには湯河原の梅園で有名な幕山から入りますが、幕山で多くのクライマーが練習している岩も柱状節理です。ただその柱状節理は幕山の噴火で流れた溶岩でできていて、写真の柱状節理は、箱根外輪山の白銀山からの溶岩ということになります。

箱根は超有名観光地ですが、あまり知られていないスポットもいくつかあり、人でいっぱいになって欲しくないなあと思ったりしていたり。。。

 

2020年6月16日 (火)

オンファス輝石角閃石岩(愛媛県四国中央市関川流域)

オンファス輝石 Omphacite (Ca,Na)(Mg,Fe,Al)Si2O6 珪酸塩鉱物

角閃石 amphibole 珪酸塩鉱物

 

Omphacite_sekikawa_02

Omphacite_sekikawa_01

 

石ころです。

愛媛県の関川は、赤石山系(主峰・東赤石山1706m)から瀬戸内海にそそぐ、わずか二十数キロの川で、その長さと山の高さを考えても分かる通り、とても急です。日本の川は滝だと言った(とされる)のは、お雇い外国人技師のオランダ人、デ・レーケですが、まさにその典型ともいえる川ですね(富山の川のことを言ったらしいですが)。

日本の関東山地から九州まで、中央構造線に沿って続く三波川変成帯は、日本最大の変成岩帯です。関川の上流、赤石山やすぐそばの鉱山で有名な別子のあたりも、その三波川変成帯に属しますが、とりわけ高温・高圧によって変成度の高い岩石が生成され、他では見られない石がたくさん産出する地域です。

特にエクロジャイト(Eclogite:主に鉄礬柘榴石とオンファス輝石で構成される石)が有名です。

この石は、関川大橋の少し下流、関川と浦山川合流点あたりで拾いました。

Sekikawa_01

多分、オンファス輝石を含んだ角閃石だと思います。色の濃いのが角閃石で、薄いのがオンファス輝石。。。なのかなぁ?

ぱっと見は濃い緑の地味な感じなのですが、ルーペや顕微鏡で見てみると、吸い込まれそうな透明感のある深い緑で、めちゃくちゃきれいでびっくりします。ちょっぴりクロムが混じっているのかも?(クロムが入ると、緑の鮮やかさが増す)

あたりには、柘榴石の点々が一面についた石が多く転がっていて、わざわざ探すまでもなく拾えます。ここの柘榴石は自形結晶も多いけれど、川を転がってきているからか、そんなにシャープな感じではないです。割っても大して変わらないので、もともと鋭角的な結晶ではないようですね。他にも、白雲母が混じって銀色に輝くものも多く見られました。

 

ここで拾った石をもうひとつ。エクロジャイトといいたいところですが、オンファス輝石はあまり入ってなさそうなので、柘榴石角閃石岩でしょうか。

 

Eclogite_sekikawa_01

 

赤いのが鉄礬柘榴石。濃い緑が角閃石です。

もう一度、ゆっくり1日かけて探してみたいし、赤石山にも登ってみたいけれど、また四国まで行けますかねぇ。。。

 

2020年5月31日 (日)

黒曜石(静岡県伊豆市皮子平)

Obsidian SiO2(H2O) 酸化鉱物

 

Obsidian_kawagodaira_06

 

鉱物ではなく石ころです。

伊豆の天城にある皮子平は、約3200年前に大爆発した東伊豆火山群のひとつで、このへんでは珍しい流紋岩質火山。伊豆で最も激しかった噴火で、西の広い範囲にわたって火山灰が飛び(琵琶湖でも見つかっている)、考古学の縄文後期の年代指標としても使われています。天城山稜の戸塚峠すぐ北にある火口跡から現在の筏場南端まで、約4kmにわたって溶岩流が流れ、さらに火砕流が駆け下りました。地形図を見ても、現地で見ても、溶岩の流れた痕、その両端と先端が切り立っているさまがはっきりとわかります。

火口周辺の広い範囲にわたって黒曜石が散らばっているので、噴火で火山ドームが形成され黒曜石ができたあと、さらに爆発的噴火で周囲に吹き飛ばされたのではないかと思います。北の溶岩流上の林道や天城主稜線上だけでなく、西の大見川を挟んだ対岸の尾根上にも結構大きなかけらがごろごろしています。

傾斜の緩い溶岩流上は今ではその多くが植林地ですが(天城のすべての植林杉の祖先である「精英樹」がある)、上のほうはブナ(伊豆最大といわれるブナがある)、ヒメシャラの森となっていて、稜線から外れていることもあって、人気の少ない別天地です。

北の筏場から、筏場林道、軽石林道(わかりやすい林道名!)などで溶岩流上を歩くか、天城主稜線の戸塚峠から下って行くことになりますが、いずれにせよ、アプローチは結構長くて大変かも。ちなみに火口地点は柵で人工的に囲まれてしまっていて、入れません。

Kawagodaira_01Kawagodaira_02
左:皮子平。右:筏場蛇喰川、皮子平から流れた火山泥流(ラハール)堆積物の崖。

 

ここの黒曜石は、同じ伊豆の柏峠や神津島のもののように真っ黒できれいではなく、白い粒(斜長石の斑晶)が多く入っているのが特徴。割って石器にはしずらい感じで、実際ほとんど使われた形跡はないようです。

顕微鏡で見ると、ガラス質の部分は透き通っていて、中に多くの結晶や気泡のようなもの、石英のかけらのような屈折率が違う面?や虹色の反射が見えて、とてもにぎやかです。深い水の中をのぞき込んでいるようで、とてもきれいですね。構成物としては、斜長石、斜方輝石、角閃石、磁鉄鉱、単斜輝石など。

以下はマクロ写真集。残念ながら、どれがどれかは分かりませんw すべて、ガラスの中に浮いているものです。

 

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