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〇長野県

2021年4月11日 (日)

含クロム白雲母(長野県茅野市金鶏金山)

Fuchsite(Muscovite) K(Al,Cr)2AlSi3O10(OH,F)2 珪酸塩鉱物

 

Fuchsite_kinkeim_01

Fuchsite_kinkeim_02

Fuchsite_kinkeim_03

 

長野県金鶏金山の白雲母の変種です。クロムを含んでいるために緑を帯びていて、とてもきれいですね。金鶏金山はセリウムフローレンス石や水晶の日本式双晶、苦土電気石、滑石などさまざまな鉱物を産出しますが、この白雲母がここの代表といっていいのではないかと。現場に行きさえすれば、わざわざ探すまでもなくいっぱいあるので、あまり珍重されないかもしれませんが、結晶形もはっきりとしていて薄いものは透明度も高く、拡大するとほんとにきれい。

錆がついて茶や黄色く染まった部分と緑のグラデーションが、またポイントですね。薬品で錆をとってしまうと、この美しさがそこなわれてしまう、でも錆をとらないと稀産鉱物が探せない、というジレンマに直面することになります(珍しいセリウムフローレンス石はピンク色なので、錆がついてると紛れて探しにくい)。

写真は3種の形態を選びました。緑の鮮やかな1枚目、薄い錆で金色の花びらのように重なった集合と水晶の2枚目、透明度の高いうす緑の薄片の3枚目、どれも違っていいですねぇ(写真の出来には目をつむってください><)。地の無色部分は石英です。

緑の雲母のことを、Maripositeということもあります。MaripositeもFuchsiteも正式な鉱物名ではなく、白雲母(Muscovite)の一種。クロムではなくバナジウムが含まれると、ロスコー雲母となります。

フクサイトの名称は、ドイツ・バイエルン王国の化学者・鉱物学者であるヨハン・ネポムク・フォン・フックス(Johann Nepomuk von Fuchs、1774-1856年)に由来します。

1842年、やはりドイツの地質・鉱業・冶金・音楽学者のシャフホイトル(Karl F. Emil von Schafhäutl、1803-1890年)によって命名されました。この人、ちょっと面白い人物みたい。もともと印刷関連の職人であり、詩や演劇・物語などの文学作品も残していて、かなり多彩な方面で活躍しています。地質学関連では、アルプス地方の地質などの研究。音楽では、グレゴリオ聖歌などの研究のほか、楽器の音響についての研究もあり、ベーム式フルート(要するに現代のフルートのことです。それまでは主に木製で簡単なキーのついたようなトラヴェルソが使われていました)の開発にも関わっていたようです。文学ではキリスト教の色彩が濃い作品が多い。

 

グレゴリオ聖歌はヨーロッパではかなり異質なモノフォニックな音楽です。西アジアの影響を強く受けているものと思われます。なので、コードではなくモード(旋法)を基本としています。ヨーロッパでは唯一といっていいモノフォニーな伝統音楽ですね。

誤解している人も多いと思いますが、モノフォニーが進歩してポリフォニーになったりするような関係にあるものではありません。まったく別の、独立したものです。社会のあり方と音楽を簡単に関連づけることはできないと思いますが、狩猟を基本とする社会にはポリフォニーが、農耕を基本とする社会にはモノフォニーが多いような気がします(日本も基本モノフォニーな国でしたが、何分文化の掃きだめ的な位置にあるのでw)。

現在ポリフォニー(と平均律)が世界的に全盛なのは、ヨーロッパの帝国主義の賜物だと言ってしまっていいかも? 世界にはいろんな音楽があって、聞きなれていないものは理解できません。聞き方は、演奏の仕方と同じく、技能です。現在の日本人の大部分は、日本の伝統音楽は理解できません。聞きなれていないから。学校で1回だけちょこっと雅楽や長唄を無理やり聞かされても、退屈こそすれ、理解できるわけもないです。音楽の先生もほとんどの人は分からないけど聞かせているだけでしょう(学校の先生の多くはヨーロッパの数百年の範囲内の古典音楽という非常に狭い範囲しかまじめに勉強していないでしょうから)。

アラビアのウード奏者の人の話で、音楽の幅を広げたいとヨーロッパに音楽留学に行ったそうです(それまでヨーロッパの音楽はほとんど聞いたことがなかった)。初めてオーケストラの演奏会に行ったのですが、いつまでたってもずっと音合わせをしていて、全然始まらないなあと思っていたら、拍手が起こって終わっちゃったとかいう。。。「音楽」として認識できなかったわけですね。西アジアの多くの国の人からしたら、オーケストラは音が合っていないのが気になって仕方ないんじゃなかろうか。調律に非常に厳密ですし、オーケストラは管楽器と弦楽器、さらに鍵盤もあって(それぞれ音程のとり方の仕組みが違う)音合わせが難儀な音楽形態ですからね。。。

音楽は世界の共通語だなんてよく言われますが、それはまったく無知からきた誤解です。音楽は言語と同じ、母国音楽以外のものをきちんと聞ける(演奏できる)ようになるには、勉強や慣れ、多くの時間が必要だと思います。それでも、はたして本当にそれが母国音楽の人と同じように聞けているのかどうか。。。結局のところ、頭の中で翻訳をするという余分な作業をしているのではないか。。。大元のところで理解の方法は異なっているのではないか。そういう疑問はけっしてなくなることはないと思いますね。

音楽は言語と同じと書きましたが、音楽そのもののあり方としては、言葉というよりむしろ数学に近いものです。現代では音楽は基本的に感情的なものと思われ、求められていて、「作者の思いを伝える」とかそういった面が強調されることが多いですが、世界には、感情はむしろ邪魔であるという音楽も多くあります。たとえば南インドの伝統音楽では、音楽は宇宙とか世界とか、そういうものを表現するものであって、人間的な側面はできるだけ排除すべき要素であるとされます。日本の雅楽も儀典や占いのための音楽ですし、現代でも感情的な要素を排除した純粋な音の気持ちよさを追及する分野もありますね(特にエレクトロな分野の一部)。そのような数学的な側面が重視される音楽なら、共通語になりえるのかな、と考えたりもします。

そういう数学的な世界の表象として、自分は鉱物の世界が好きなのかもしれない。

 

って、途中から鉱物全然関係なくなってしまい、最後に無理やり鉱物を持ち出してまとめようとしてみましたw

 

2020年12月29日 (火)

硫砒鉄鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

Arsenopyrite FeAsS 硫化鉱物

 

Arsenopyrite_mukaidanim_01

Arsenopyrite_mukaidanim_02

Arsenopyrite_mukaidanim_03

 

そんなに珍しいものではないですが、こんなにはっきりとしたさまざまな形状の結晶を見られるのは、なかなかないんじゃないでしょうか。

向谷鉱山の石は、叩くと大抵ニンニクか、ニラのような匂いがして、この硫砒鉄鉱がきらめいています。毒なんですけどね。。。農薬や殺虫剤などの原料である亜砒酸は、硫砒鉄鋼と燃料を燃やしてその煙から生産していたのですが、その煤煙が周辺を汚染したり、労働者が被害を受けたりしました。実際、こういった鉱物を触ったあとは、手を洗うようにしています。こういった鉱物の産地から流れている沢の水とかは飲まないほうがいいかもしれません。自分は、鉱山の下の水は飲むことはないです。たとえ特に毒性のある鉱物がでなくても、なんとなく気分良くないので。昔の鉱山の砒素生産地は、すべて撤去処理されていて、現在では採掘生産されていません。

Arsenopyriteは、砒素黄鉄鉱(arsenical pyrites)を短縮した言葉で、1847年、ドイツの鉱物学者グロッカー(Ernst Friedrich Glocker: 1793-1858)によって命名されました。ギリシャ語のarsenikon(雄黄:As2S3)が由来で、古代では、雄黄は顔料、強壮剤、毒薬などとして使用されていたようです。昔から、錬金術ではかなり重要でよく知られていたようで、単体の砒素の発見者は、ドイツの錬金術師マグヌス(Albertus Magnus: 1193-1280)とされています。中国や日本では、毒砂といわれていました。西欧でも中国でも、昔から暗殺などによく使われていたようです。

考えてみると、山に行くと簡単に人が死ぬレベルの毒がありふれていることに気づきました。

この硫砒鉄鉱も割とどこでもありますし、秋であれば、丹沢・道志あたりに行けば必ず見るドクツルタケは、1本食べれば大人でも死ぬレベルだそうです。ドクツルタケは人に採られないで残っているし、真っ白で目立つのです。また、トリカブトも多いです。昔トリカブト殺人事件とかありましたね。花が咲けば簡単に判別できますが、葉っぱだけだと山菜として食べるニリンソウと似ているので、注意が必要です。以前、うちの庭にも、自然に生えていましたw

海であれば、ヒジキにも若干含まれているとか。イギリスでは食べるなと勧告されているそうです。思うに、もともとあのあたりの国の人は、海草を食べる習慣がないんじゃなかろうか。あのあたりの海は海草が豊かそうな気がするし、海に囲まれているくせに、なんか食べ物の偏向がひどくないですか?w というか、アイルランドあたり、じゃがいもに依存しすぎではなかろうか。じゃがいもを使ってない料理ってあるのかなw

お米にも砒素は含まれており、スウェーデンでは、子どもに食べさせるな、大人も毎日食べるなとされているそうです。日本人からすると、シュールストレミングやサルミアッキのほうがよほど「危険」な気がしますがw

まあ食べ物はそれぞれの地方でいろいろな習慣がありますので、こういう冗談のもとにしやすいですね。とはいっても、ちょっとシビレるのがいいとか言いつつフグを食べる日本人は、やっぱりちょっと気狂いじみてる気もしますが。。。

ちなみに自分は、何度かあたってるカキはちょっと苦手><

 

2020年11月19日 (木)

スコロド石(長野県茅野市向谷鉱山)

Scorodite Fe3+(AsO4)・2H2O 燐酸塩鉱物等

 

Scorodite_mukaidanim_01

 

細かい硫砒鉄鉱の間の隙間に、青白い半透明の球状の鉱物が見られました。拡大すると、非常に小さな粒々の集合のように見えます。これはスコロド石ではないかと思いますがどうでしょうか。淡い青色が魅力的です。

スコロド石は鉱山のズリなどで見られることの多い砒素の二次鉱物です。鉱山では硫砒鉄鉱は邪魔ものなので、ズリによく捨てられます。その集められた硫砒鉄鉱が風雨にさらされ酸化すると、砒素の部分が抜け、その砒素でスコロド石が生成されることが多いといいます。また、温泉水からもできます。

微小成分によって、青から緑を中心に、黄から褐色、紫などのさまざまな色になります。まれにきれいな柱状、両錘状の結晶になることもありますが、土状や塊、双晶して擬六面体・八面体などになったり、いろいろな形状をとります。こういうのはほんとに困りますね。上の写真のものは、とても小さな結晶が球状にまとまった姿だと思います。硫砒鉄鉱はいろいろなところで見られ、硫砒鉄鉱のあるところならスコロド石は大体あるそうですので、そんなに珍しいものではないのですが、いろいろな形、色、産状があるのでわかりづらく、そんなに意識することがないですね。大きくきれいな結晶なんてそうそうあるもんじゃないですし。

語源はギリシャ語のスコロドン(σκοροδον, skorodon)、ニンニクのことです。和名はそこから葱臭石(そうしゅうせき)。叩いたり、加熱すると、ニンニクやニラのような匂いがすることからつけられました。匂いが語源の石はスコロド石くらいじゃないでしょうか。まあ中には食べられる鉱物だってありますしね。。。(塩とか氷だって鉱物)

砒素を含む鉱石を叩き割るとこの匂いはよくするので、鉱物を探す人にはおなじみだと思います。実際、向谷鉱山で叩いている時、よくこの匂いがしました。山梨の黄金沢、鈴庫、本沢鉱山などでも、よくかぐ匂いです。こういう時は硫砒鉄鉱かスコロド石がついているのでしょうが、スコロド石は上に書いたように一定した姿、色ではないので、よく分からないんですよね。。。

その毒性から、硫砒鉄鉱と一緒に、殺鼠剤や殺虫剤の原料として使われていました。 砒素といえばカレー、もしかしたら砒素カレーはニンニク風味がついてたのかなどとつい考えてしまったのは、クラスのみんなには内緒だよっ☆

 

2020年10月15日 (木)

(硫)テルル蒼鉛鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

テルル蒼鉛鉱 Tellurobismuthite Bi2Te3 硫化鉱物

硫テルル蒼鉛鉱 Tetradymite Bi2Te2S 硫化鉱物

(都茂鉱 Tsumoite BiTe 硫化鉱物)

 

Tetradymite_mukaidanim_01

Tetradymite_mukaidanim_02

 

向谷鉱山の銀白色金属光沢鉱物です。テルル+蒼鉛系の鉱物だと思います。石英に埋もれた感じで、周りに散りばめられている黄色いのは蒼鉛土でしょうか。

候補としては、テルル蒼鉛鉱、硫テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つですが、とりわけ稀産の都茂鉱以外のどちらかではないかということで、タイトルはそのようにしました。

 

向谷鉱山で産出する銀白色金属光沢の鉱物は、ほとんどは硫砒鉄鉱だろうと思います。いろいろなサイトや本を見て、自分なりにその判別方法をまとめてみました(向谷鉱山での場合です。他で通用するかどうかは分からない。蓮台寺川流域では、ちょっと通用しないみたい)。

硫砒鉄鉱もビスマス‐テルル系鉱物も、色はきらきら輝く光沢の強い銀色~鋼色。

硫砒鉄鉱は、表面がでこぼこ、がさがさしていて、荒い感じ。きれいな結晶の表面は割となめらかだが、この場合の銀色は艶消しの銀色になる。ビスマス‐テルル系鉱物は、表面がとてもなめらかな部分を含み、その部分は鏡面のように平ら。

結晶が細かい場合、ひし形の反射光が見えたら、硫砒鉄鉱。

都茂鉱も結晶粒が細かく、脈状に密集することが多い。

蒼鉛土がすぐそばにある場合は、ビスマスを含む鉱物と思われる。

 

少なくとも、硫砒鉄鉱とビスマス‐テルル系鉱物の違いは何となく分かるような気がしますが、それ以上の違いは、なかなか判別できないですね。。。これにヘッス鉱(銀とテルルの鉱物)やアルタイ鉱(鉛とテルルの鉱物)なども加わると、もう無理という感じです。

今回の写真の場合、蒼鉛土らしきものもそばにありますし、表面がとても滑らかなので、ビスマス‐テルル系鉱物、しかも多分都茂鉱ではない、と考えました。ただいくつかの種類のビスマス‐テルル系鉱物がすぐ隣合わせになっていることも多いようですし、特に2枚目の写真は都茂鉱の可能性もあるのではないかとも思うのですが、どうでしょうね。。。見ただけでは分かりませんので、まあここまでが精一杯かな。

 

ところでデジタル鉱物図鑑だと、硫テルル蒼鉛鉱、テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つはどれも硫化鉱物の分類になっているのですが、後二者は硫黄(S)が含まれていないけれども硫化鉱物でいいの? ふと疑問に思って調べてみたら、硫黄のかわりに、砒素、セレン、テルルなどが金属元素と結合した鉱物は、性質が硫化鉱物と似ているのでひとまとめにすることもある、とのこと。

なんとなく分かったような分からないような。。。そんなに種類も多くないので、無駄に分類を増やすよりはまとめちゃったほうが取り扱いやすい、とかそういう感じなんでしょうか。

まあまたひとつ新しいことを覚えたので、良しとしましょう。

 

2020年9月26日 (土)

自然蒼鉛(長野県茅野市向谷鉱山)

Bismuth Bi 元素鉱物

 

Bismuth_mukaidanim_01

 

前回のヘドレイ鉱のすぐそばにあった、やはりヘドレイ鉱と思われる集合です(きらきら光沢のある黒い部分)。

その中央部に、周囲とちょっと違う質感の銀色のかたまりがあるのに気づきました。この部分が、自然蒼鉛(ビスマス)だと思います。

ところどころついている黄色いのは、蒼鉛土でしょうか。

『鉱物ウォーキングガイド』の向谷鉱山の項に、以下のような記述があります。

「自然蒼鉛は銀白色(錆びるとピンク色を帯びる)でやや粗粒の石英中におもにヘドレイ鉱を伴って産する。集合体の中心部が自然蒼鉛で、周囲がヘドレイ鉱という場合が多い」(松原聰著『鉱物ウォーキングガイド 関東甲信越版』丸善出版、平成24年)

この説明のとおりの産状ですね。割ってそれほど経っていない時の写真で新鮮なので、まだピンク色を帯びてはいません。

自然蒼鉛の左下のはじが階段状になって虹色に光っているのが、人工的なビスマスの結晶を思い起こさせます(ビスマスは融点が271.3℃と低低く扱いやすいので、一度溶かしてから再結晶させて、アクセサリーにしたりする。ビスマス、結晶で検索するとたくさん出てきます)。

「蒼」という字で青っぽい感じがしますが、蒼鉛は別に青いわけではありません。「蒼」は、青というより緑ですが、「古色蒼然」「鬱蒼」といった熟語からわかるように、深い色、薄暗い色、という意味合いが含まれているようです。

 

宮沢賢治に「永訣の朝」という有名な詩があります。死を目前にして喉がかわいた妹に頼まれ、お椀に雪を取りに外に出る、という内容ですが、そこに「蒼鉛いろの 暗い雲から/みぞれは びちょびちょ 沈んでくる」という一節があります。宮沢賢治は鉱物マニアで、多くの作品にたくさん鉱物やら地学用語が出てきますから、当然蒼鉛も知っていて、実物の自然蒼鉛の色と、字面のイメージから、こう表現したのです。

何節か前では、「うすあかく いっさう 陰惨な 雲から/みぞれは びちょびちょ ふってくる 」と書かれています。上の引用にもあったように、自然蒼鉛は錆びるとちょっとピンク味を帯びます。だから、ここでは「蒼鉛いろ」がまったく正しいわけです。それに、たとえば「鉛いろの暗い雲」では重苦しすぎるけれども、「蒼」の字が入るとちょっとイメージが変わってきますよね。

「雲外蒼天」という四文字熟語があります。雲の上には蒼い空が広がっているということからたとえて、困難(雲)を乗り越えれば必ず道は開ける(蒼天)という意味の熟語です。

蒼鉛の「蒼」という字に触発されたかのように、この後、「蒼天」、つまり「銀河や 太陽、気圏などと よばれたせかいの/そらから おちた 雪の さいごの ひとわんを…… 」という一節が現われ、雲の上まで意識が飛びます。賢治らしく急に意識が宇宙にまで広がり、妹の死というまったく一個人的な世界と、人間の世界をはるかに超越した広い世界が対比され、細々とした人間関係の生々しさがかき消されて、純粋な「生命の終焉」という現象への思いに蒸留されるかのようです。そこから賢治独特の硬質な情感が生まれてくる。

なんだかいささか理屈っぽい説明で、自分でも嫌になってきましたがw 「銀河鉄道の夜」の雰囲気も、まさにこれと同じですね。賢治にとって、鉱物の無機質さ、透明な存在感は、有機交流電燈である人間の魂の理想形だったのかもしれません。この硬質な肌触りが、賢治の一番の魅力ですね。この詩が、単なる一個人の感情の吐露に終わらず、誰しもが共感できる美しい表現となっている所以かと思います。

ところで、春の修羅の「屈折率」という詩では、雲を「亜鉛の雲」と表現してます。こういう細かい表現の違いは、鉱物好きでなければ分からないでしょう。

まさに賢治も、自分にとってはゲーテと同じく、偉大な先輩のひとりですね。

 

ところで全然関係ないのですが、『蒼き鋼のアルペジオ』で金剛が使ってた剣みたいの、デジタル鉱物図鑑の自然蒼鉛、2枚目の写真の、樹木のような形の結晶に似てますねw いや、ふと思い出しただけw

 

2020年9月23日 (水)

ヘドレイ鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

Hedleyite Bi7Te3 硫化鉱物

 

Hedleyite_mukaidanim_01

Hedleyite_mukaidanim_02

 

金鶏金山のすぐそばにある向谷鉱山の、ヘドレイ鉱だと思います。

ここでは金属光沢の、特にビスマスとテルルの銀白色の鉱物も多いのですが、ヘドレイ鉱だけは黒くなることが多いようです。「黒色板状の結晶が積み重なった姿となり、へき開もまた板に平行に発達する」「石英に埋没するように産出する」(電子顕微鏡室/Electron Microscope Section、東京大学物性研究所)の説明のままの姿と思われます。

他にもビスマス・テルル鉱物は多く見られましたが、自然金はありませんでした。でも、金よりもビスマス・テルル鉱物のほうが稀産ですし、見つけるとうれしいですねw 判別するのは難しいですが。。。

これを採集した場所ですが、ネットや本で見る向谷鉱山の場所とは違う、ちょっと離れたところだったみたいです。

というのは、普通は稜線の林道から廃林道に入って鉱山跡まで行くらしいのですが、このあたりの林道、うちの車では多分走れないのですよね。林道に非常に弱い車で、目的地目前にしてあきらめるということも時にあったりするので、この時も下の青柳駅に車を置いて、歩いて登りました。地図を見て、目的地までの最短最適のルートを探していくのが好きなので(というか鉱物を集めることよりも、そちらのほうがメインといっていいかも)、まあそれはそれでいいのですが、向谷鉱山までのルートも、結構大変でした。

行ってみるまではどうなっているか分からない廃林道、あるかどうか分からない地形図上の道を探しながら、基本的には地形を読みながら尾根上や沢を歩いたりします。この周辺の地図上には描いてある道も、ほとんどすでに見つけられませんでした。ただ、地形が割となだらかなのと、踏み跡(獣道)やら多分植林の作業道も多く、ヤブも深くないのは助かった。

で、直接下から鉱山跡があると思われる地点まで登りつめ、古い石垣と小さなズリを見つけてそこで採集したのですが、どうやらそこは、メインのズリからちょっと離れた地点だったみたいです。大きめの石を叩いたら、例のニンニクのような匂いがして、割とあっけなく様々な鉱物を見つけることができました。あまり人が来ないところだったのかな。

帰りは芝平峠(オオダオ)に出て、金鶏金山にも寄り下山しましたが、林道の展望が開けたところから、編笠山から蓼科山までの八ヶ岳の大展望もありましたし、登山としても結構面白かったです。

ちなみに、金鶏金山まで普通に登る林道の途中にも八ヶ岳展望台という場所があって、展望図が置いてあったりしますが、木が成長してしまったのか、そこからは何ひとつ見えませんw

Mukaidanim_01

 

 

2020年9月16日 (水)

水晶(日本式双晶など)(長野県茅野市金鶏金山)2

石英 Quartz SiO2 酸化鉱物

 

長野の金鶏金山で見つけた水晶です。日本式双晶を中心にまとめました。その2。

 

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V字型の双晶2つ。1枚目の写真の水晶は、採集した中でも一番大きいもので、肉眼でも見えるサイズです。

双晶ができる原因は一体なんなのでしょう。不純物で双晶ができやすいといいます。双晶が多い地方に共通するものが多分あるのでしょうが、まだ解明されきっていないのかもしれません。その原因についてかっちり説明してくれるものが、なかなか見当たらないので。

普通はいくら水晶がたくさんあっても双晶なんて見られないのに、あるところにはたくさんあるのが面白いです。その原因が化学物質なのか、環境なのかわかりませんが、何か決定的な原因があるはず。金鶏金山であればビスマスとかクロムとか、そういった特徴的な要素が何か影響していたりするのか。。。

 

ところで、ネットで検索していて、面白いところを見つけました。水晶デバイスの開発の歴史をまとめたサイトです(「微の歴史 QMEMSストーリー」)。とりわけ、第4回、戦後の工業における水晶をめぐる状況や、人工水晶の開発の経緯など、なかなか興味深いものがありますね。ちなみに双晶は水晶デバイスには使用できないそうです。

このサイトはセイコーエプソンのHP内にあります(クオーツ式腕時計を世界で最初に開発したのが、諏訪精工舎=セイコー)。そういえば、金鶏金山に行く途中だったか、エプソンの工場の前を通ったような。。。まあ諏訪がまさに本場ですもんね。

 

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両錘の水晶です。2つの水晶の先端に挟まれています。2つの水晶の間に「種」が挟まり、その種から両側に成長していったということでしょうか。こうやってできるんですねぇ。というか、この水晶自体も貫入双晶になってる?

 

2020年9月12日 (土)

水晶(日本式双晶など)(長野県茅野市金鶏金山)1

石英 Quartz SiO2 酸化鉱物

 

長野の金鶏金山で見つけた水晶です。日本式双晶を中心にまとめました。その1。

大きなものはないのですが、時々平板水晶ばかりついている石があり、そういう石の晶洞を探すと、多くの双晶を見つけることができます。見つけた双晶はすべて平板で、六角柱状のものは見つけていません。V字型が多いです。

顕微鏡があるならば、ここが一番簡単に双晶を見られる産地かもしれません。現地では気づかなかったけれど、家で顕微鏡で見て双晶がついてた! という石がいくつもありました。

 

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水晶の日本式双晶といえば、なんといってもこのハート型ですね。かわいい。

自分が見つけた初めての双晶水晶です。何とか肉眼でも確認できるサイズ。

 

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X字型の貫入日本式双晶。左の大きなのもy字をした双晶ですね。

こんな感じで、小さな晶洞の中にたくさんの双晶がちりばめられていて、顕微鏡で探すのが実に楽しいです。透明度が高いので、群晶になっていると双晶に気づきにくいのです。

 

Quartz_kinkeim_03

これは軍配型といっていいのかな。左右の先っちょに、白雲母がめりこむようにくっついています(金鶏金山では、クロムを含んだ緑の白雲母が多い)。全体的に鉄さびがついて赤茶けています。さびはシュウ酸等でとることもでき、水晶などは透明できれいになるのですが、味気なくなってしまうと感じることも多いです。特にここの石は白雲母の緑と茶色がきれいなグラデーションになっていることも多いので。

 

2020年8月23日 (日)

デューク石(長野県茅野市金鶏金山)

Dukeite Bi3+24Cr6+8O57(OH)6・3H2O 酸化鉱物

 

Dukeite_kinkeim_01

Dukeite_kinkeim_02

 

金鶏金山の、クロムとビスマスを含むデューク石。

鮮やかなレモンイエローの球顆状の結晶が割れた状態です。2枚目の写真は、割れた断面を拡大。周囲の黄色い部分も、同じデューク石かどうかはよくわかりませんが、石の割れ目から、別の球顆状結晶もちら見えしています(もちろん怖くて割ったりできませんがw)。

小割した金鶏金山の石を顕微鏡で確認していて見つけた時、そのあまりの鮮やかさに思わず声が出てしまいました。稀産鉱物すぎて、アウト・オブ・眼中、探してもいなかったのですが、異様なくらいに存在感があります。

デジタル鉱物図鑑で、クロムとビスマス(蒼鉛)を含む鉱物を検索すると、このデューク石とクロム蒼鉛石の2種しか出てきません(どちらも写真なし)。クロムとビスマスの両者が併存する環境が、めったにないために、稀産鉱物となっているわけです。金鶏鉱山の石は、もともとクロムを含んでいたところに、後からビスマスを含む熱水がきて反応したらしいですが、いずれにせよ、非常に珍しい環境により生成された珍しい鉱物ということですね。クロム蒼鉛石にいたっては、ネットで検索してもカラー画像すらありません。

アメリカ・ノースカロライナのデューク大学で保管されていた、ブラジル・ミナス・ジェライス・Posse鉱山産のプッチャー石の標本から発見されたそうです(2000年報告)。命名は、アメリカのメアリー・デューク・ビドル財団あるいはデューク大学にちなんだもの。デューク大学の名前の元になったデューク一族(大学への経済的支援をした)の関係者だと思いますが、詳細は知りません(アメリカは、こういう政治家とか資産家とかにちなんだ命名が多いのか? 文化の違いというありがちな言葉だけで済ませてしまっていいのかどうか、最近は疑問に感じている)。

(「メアリー・デューク・ビドル財団」で検索したら、なんか怪しげな本にあたってしまったので、やる気をそがれてあやふやな笑みを浮かべつつ、そこで調べるのをやめることにしましたw まあね、別に詳しく調べる必要もないしねw)

世界でこの石が報告されているのは、発見された標本の産地・ブラジルのPosse鉱山、フランスのLe Val-d'Ajol、そして日本の金鶏金山の3か所だけです。Posse鉱山というところで今でも見つかるのかどうかは分からず。フランスは、詳細はまったくわからず。論文が複数ありはっきりしているのは日本の金鶏金山だけで、今現在でも発見できる可能性があるのは、ほとんど日本のみという感じなんでしょうか。

 

金鶏金山では、自分はビスマス系らしき部分はほとんど見つけられなかったのですが、多分ちょっとした場所の違いなのでしょうね。露頭の位置がちょっと違えば、転石の位置もかなり変わってきますし。

金鶏金山はもう一度行って、じっくり探してみたい場所のひとつです(向谷鉱山もまだ行ってない)。

 

2020年8月10日 (月)

苦土電気石(長野県茅野市金鶏金山)

Dravite NaMg3Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)3(OH) 珪酸塩鉱物

 

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南アルプスの北端・入笠山の、さらに北の山域にある、金鶏金山の苦土電気石です。

ここの苦土電気石は、少量のクロムを含んでいて、透明感のある鮮やかな緑色をしています。珍しいものではなく、特にここでは、白雲母や水晶とともに繊維状、針状でごく普通に見られるものですが、拡大すると透き通った結晶が実に美しいものです。

鉄さびで茶色の皮膜に覆われていることも多いのですが、シュウ酸につければきれいになります。こういう処理はできればやりたくはないのですが、ここで稀に見られるフローレンス石やデュモルチ石などを探すために、いくつかきれいにしてみました。上の1、2枚目の写真などは、そうやってきれいにしたものです。

 

金鶏金山は例によって武田信玄時代の金山のひとつで、この周辺にはいくつも当時の、あるいはその後の鉱山時代の遺構が残っています。下のJR青柳駅から要所に道標までありますし、現地にも説明板が設置されていますが、はたしてどれだけの人が見るのか。。。バイクの人は少々いるようですが、興味ある人いるかなぁ。まあいないよねw

林道沿いなので、軽トラやジムニー等なら楽に現地まで登れると思いますが、うちの車だと無理なので、林道の往復16kmを歩かなければなりません。ショートカットの山道(あるいは尾根等)を通っても、かなり長いです。。。さらに、このあたりの山道は、どうやらオフロード・バイクがよく走っているようで、道が深く掘られてつるつるになっているところもあって、かなり歩きにくい。。。登山者には、見向きもされていない地域で、ヤマレコの記録もほとんどありません(ここの記録は結構参考にしているのですが)。

すぐそばにはろう石山があり、ろう石、苦土(フォイト)電気石、デュモルチ石などが組になっていることが多いことを考えると、金鶏金山でも苦土フォイト電気石がありそうに思うのですが、どうなんでしょうか(デュモルチ石はあるらしい)。

また、ここから直線距離で1kmたらずのところには、向谷鉱山跡もあります。こちらにも行くつもりだったのですが、さらに遠くなるし、金鶏金山が想像以上に面白かったので、行くのをあきらめました。この地域の山の様子も何となく分かったので、下からまっすぐ歩いて登れそうなあてがついたので、またの機会に行ってみたいですね。

 

ところで、最近行ったまったく別の山域なのですが、休業中の山小屋でトタンを抑えている石が白っぽくて気になって見てみたら、ちょっとした水晶がついているのを見つけました。あってもおかしくない地域だし、確かにところどころで石英のかたまりを見つけたのですが、鉱物採集のポイントとしてはまったく話はなく、古い山行の記録を見てもヒントは全然ない(昔の山行記録だと、鉱山の調査をしていたとか、たまに書かれていたりするんですよね)。これは! と思ったのですが、後でそこから1kmも離れていないあたりに武田の金山があったというあやふやな噂があることを知りました。

山梨周辺だと、なんだか武田信玄がすみからすみまで探しつくし、その後追いをしているだけなのか、という気分になりましたw 地質図を見るより、信玄の行動、信玄関連の地域の伝説などを調べたほうがいいような気がしてきます。戦の進軍の際にも、そういうポイントを絡めているように感じることもあります。

信玄なんなんだよw