〇長野県

2020年10月15日 (木)

(硫)テルル蒼鉛鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

テルル蒼鉛鉱 Tellurobismuthite Bi2Te3 硫化鉱物

硫テルル蒼鉛鉱 Tetradymite Bi2Te2S 硫化鉱物

(都茂鉱 Tsumoite BiTe 硫化鉱物)

 

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Tetradymite_mukaidanim_02

 

向谷鉱山の銀白色金属光沢鉱物です。テルル+蒼鉛系の鉱物だと思います。石英に埋もれた感じで、周りに散りばめられている黄色いのは蒼鉛土でしょうか。

候補としては、テルル蒼鉛鉱、硫テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つですが、とりわけ稀産の都茂鉱以外のどちらかではないかということで、タイトルはそのようにしました。

 

向谷鉱山で産出する銀白色金属光沢の鉱物は、ほとんどは硫砒鉄鉱だろうと思います。いろいろなサイトや本を見て、自分なりにその判別方法をまとめてみました(向谷鉱山での場合です。他で通用するかどうかは分からない。蓮台寺川流域では、ちょっと通用しないみたい)。

硫砒鉄鉱もビスマス‐テルル系鉱物も、色はきらきら輝く光沢の強い銀色~鋼色。

硫砒鉄鉱は、表面がでこぼこ、がさがさしていて、荒い感じ。きれいな結晶の表面は割となめらかだが、この場合の銀色は艶消しの銀色になる。ビスマス‐テルル系鉱物は、表面がとてもなめらかな部分を含み、その部分は鏡面のように平ら。

結晶が細かい場合、ひし形の反射光が見えたら、硫砒鉄鉱。

都茂鉱も結晶粒が細かく、脈状に密集することが多い。

蒼鉛土がすぐそばにある場合は、ビスマスを含む鉱物と思われる。

 

少なくとも、硫砒鉄鉱とビスマス‐テルル系鉱物の違いは何となく分かるような気がしますが、それ以上の違いは、なかなか判別できないですね。。。これにヘッス鉱(銀とテルルの鉱物)やアルタイ鉱(鉛とテルルの鉱物)なども加わると、もう無理という感じです。

今回の写真の場合、蒼鉛土らしきものもそばにありますし、表面がとても滑らかなので、ビスマス‐テルル系鉱物、しかも多分都茂鉱ではない、と考えました。ただいくつかの種類のビスマス‐テルル系鉱物がすぐ隣合わせになっていることも多いようですし、特に2枚目の写真は都茂鉱の可能性もあるのではないかとも思うのですが、どうでしょうね。。。見ただけでは分かりませんので、まあここまでが精一杯かな。

 

ところでデジタル鉱物図鑑だと、硫テルル蒼鉛鉱、テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つはどれも硫化鉱物の分類になっているのですが、後二者は硫黄(S)が含まれていないけれども硫化鉱物でいいの? ふと疑問に思って調べてみたら、硫黄のかわりに、砒素、セレン、テルルなどが金属元素と結合した鉱物は、性質が硫化鉱物と似ているのでひとまとめにすることもある、とのこと。

なんとなく分かったような分からないような。。。そんなに種類も多くないので、無駄に分類を増やすよりはまとめちゃったほうが取り扱いやすい、とかそういう感じなんでしょうか。

まあまたひとつ新しいことを覚えたので、良しとしましょう。

 

2020年9月26日 (土)

自然蒼鉛(長野県茅野市向谷鉱山)

Bismuth Bi 元素鉱物

 

Bismuth_mukaidanim_01

 

前回のヘドレイ鉱のすぐそばにあった、やはりヘドレイ鉱と思われる集合です(きらきら光沢のある黒い部分)。

その中央部に、周囲とちょっと違う質感の銀色のかたまりがあるのに気づきました。この部分が、自然蒼鉛(ビスマス)だと思います。

ところどころついている黄色いのは、蒼鉛土でしょうか。

『鉱物ウォーキングガイド』の向谷鉱山の項に、以下のような記述があります。

「自然蒼鉛は銀白色(錆びるとピンク色を帯びる)でやや粗粒の石英中におもにヘドレイ鉱を伴って産する。集合体の中心部が自然蒼鉛で、周囲がヘドレイ鉱という場合が多い」(松原聰著『鉱物ウォーキングガイド 関東甲信越版』丸善出版、平成24年)

この説明のとおりの産状ですね。割ってそれほど経っていない時の写真で新鮮なので、まだピンク色を帯びてはいません。

自然蒼鉛の左下のはじが階段状になって虹色に光っているのが、人工的なビスマスの結晶を思い起こさせます(ビスマスは融点が271.3℃と低低く扱いやすいので、一度溶かしてから再結晶させて、アクセサリーにしたりする。ビスマス、結晶で検索するとたくさん出てきます)。

「蒼」という字で青っぽい感じがしますが、蒼鉛は別に青いわけではありません。「蒼」は、青というより緑ですが、「古色蒼然」「鬱蒼」といった熟語からわかるように、深い色、薄暗い色、という意味合いが含まれているようです。

 

宮沢賢治に「永訣の朝」という有名な詩があります。死を目前にして喉がかわいた妹に頼まれ、お椀に雪を取りに外に出る、という内容ですが、そこに「蒼鉛いろの 暗い雲から/みぞれは びちょびちょ 沈んでくる」という一節があります。宮沢賢治は鉱物マニアで、多くの作品にたくさん鉱物やら地学用語が出てきますから、当然蒼鉛も知っていて、実物の自然蒼鉛の色と、字面のイメージから、こう表現したのです。

何節か前では、「うすあかく いっさう 陰惨な 雲から/みぞれは びちょびちょ ふってくる 」と書かれています。上の引用にもあったように、自然蒼鉛は錆びるとちょっとピンク味を帯びます。だから、ここでは「蒼鉛いろ」がまったく正しいわけです。それに、たとえば「鉛いろの暗い雲」では重苦しすぎるけれども、「蒼」の字が入るとちょっとイメージが変わってきますよね。

「雲外蒼天」という四文字熟語があります。雲の上には蒼い空が広がっているということからたとえて、困難(雲)を乗り越えれば必ず道は開ける(蒼天)という意味の熟語です。

蒼鉛の「蒼」という字に触発されたかのように、この後、「蒼天」、つまり「銀河や 太陽、気圏などと よばれたせかいの/そらから おちた 雪の さいごの ひとわんを…… 」という一節が現われ、雲の上まで意識が飛びます。賢治らしく急に意識が宇宙にまで広がり、妹の死というまったく一個人的な世界と、人間の世界をはるかに超越した広い世界が対比され、細々とした人間関係の生々しさがかき消されて、純粋な「生命の終焉」という現象への思いに蒸留されるかのようです。そこから賢治独特の硬質な情感が生まれてくる。

なんだかいささか理屈っぽい説明で、自分でも嫌になってきましたがw 「銀河鉄道の夜」の雰囲気も、まさにこれと同じですね。賢治にとって、鉱物の無機質さ、透明な存在感は、有機交流電燈である人間の魂の理想形だったのかもしれません。この硬質な肌触りが、賢治の一番の魅力ですね。この詩が、単なる一個人の感情の吐露に終わらず、誰しもが共感できる美しい表現となっている所以かと思います。

ところで、春の修羅の「屈折率」という詩では、雲を「亜鉛の雲」と表現してます。こういう細かい表現の違いは、鉱物好きでなければ分からないでしょう。

まさに賢治も、自分にとってはゲーテと同じく、偉大な先輩のひとりですね。

 

ところで全然関係ないのですが、『蒼き鋼のアルペジオ』で金剛が使ってた剣みたいの、デジタル鉱物図鑑の自然蒼鉛、2枚目の写真の、樹木のような形の結晶に似てますねw いや、ふと思い出しただけw

 

2020年9月23日 (水)

ヘドレイ鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

Hedleyite Bi7Te3 硫化鉱物

 

Hedleyite_mukaidanim_01

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金鶏金山のすぐそばにある向谷鉱山の、ヘドレイ鉱だと思います。

ここでは金属光沢の、特にビスマスとテルルの銀白色の鉱物も多いのですが、ヘドレイ鉱だけは黒くなることが多いようです。「黒色板状の結晶が積み重なった姿となり、へき開もまた板に平行に発達する」「石英に埋没するように産出する」(電子顕微鏡室/Electron Microscope Section、東京大学物性研究所)の説明のままの姿と思われます。

他にもビスマス・テルル鉱物は多く見られましたが、自然金はありませんでした。でも、金よりもビスマス・テルル鉱物のほうが稀産ですし、見つけるとうれしいですねw 判別するのは難しいですが。。。

これを採集した場所ですが、ネットや本で見る向谷鉱山の場所とは違う、ちょっと離れたところだったみたいです。

というのは、普通は稜線の林道から廃林道に入って鉱山跡まで行くらしいのですが、このあたりの林道、うちの車では多分走れないのですよね。林道に非常に弱い車で、目的地目前にしてあきらめるということも時にあったりするので、この時も下の青柳駅に車を置いて、歩いて登りました。地図を見て、目的地までの最短最適のルートを探していくのが好きなので(というか鉱物を集めることよりも、そちらのほうがメインといっていいかも)、まあそれはそれでいいのですが、向谷鉱山までのルートも、結構大変でした。

行ってみるまではどうなっているか分からない廃林道、あるかどうか分からない地形図上の道を探しながら、基本的には地形を読みながら尾根上や沢を歩いたりします。この周辺の地図上には描いてある道も、ほとんどすでに見つけられませんでした。ただ、地形が割となだらかなのと、踏み跡(獣道)やら多分植林の作業道も多く、ヤブも深くないのは助かった。

で、直接下から鉱山跡があると思われる地点まで登りつめ、古い石垣と小さなズリを見つけてそこで採集したのですが、どうやらそこは、メインのズリからちょっと離れた地点だったみたいです。大きめの石を叩いたら、例のニンニクのような匂いがして、割とあっけなく様々な鉱物を見つけることができました。あまり人が来ないところだったのかな。

帰りは芝平峠(オオダオ)に出て、金鶏金山にも寄り下山しましたが、林道の展望が開けたところから、編笠山から蓼科山までの八ヶ岳の大展望もありましたし、登山としても結構面白かったです。

ちなみに、金鶏金山まで普通に登る林道の途中にも八ヶ岳展望台という場所があって、展望図が置いてあったりしますが、木が成長してしまったのか、そこからは何ひとつ見えませんw

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2020年9月16日 (水)

水晶(日本式双晶など)(長野県茅野市金鶏金山)2

石英 Quartz SiO2 酸化鉱物

 

長野の金鶏金山で見つけた水晶です。日本式双晶を中心にまとめました。その2。

 

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V字型の双晶2つ。1枚目の写真の水晶は、採集した中でも一番大きいもので、肉眼でも見えるサイズです。

双晶ができる原因は一体なんなのでしょう。不純物で双晶ができやすいといいます。双晶が多い地方に共通するものが多分あるのでしょうが、まだ解明されきっていないのかもしれません。その原因についてかっちり説明してくれるものが、なかなか見当たらないので。

普通はいくら水晶がたくさんあっても双晶なんて見られないのに、あるところにはたくさんあるのが面白いです。その原因が化学物質なのか、環境なのかわかりませんが、何か決定的な原因があるはず。金鶏金山であればビスマスとかクロムとか、そういった特徴的な要素が何か影響していたりするのか。。。

 

ところで、ネットで検索していて、面白いところを見つけました。水晶デバイスの開発の歴史をまとめたサイトです(「微の歴史 QMEMSストーリー」)。とりわけ、第4回、戦後の工業における水晶をめぐる状況や、人工水晶の開発の経緯など、なかなか興味深いものがありますね。ちなみに双晶は水晶デバイスには使用できないそうです。

このサイトはセイコーエプソンのHP内にあります(クオーツ式腕時計を世界で最初に開発したのが、諏訪精工舎=セイコー)。そういえば、金鶏金山に行く途中だったか、エプソンの工場の前を通ったような。。。まあ諏訪がまさに本場ですもんね。

 

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両錘の水晶です。2つの水晶の先端に挟まれています。2つの水晶の間に「種」が挟まり、その種から両側に成長していったということでしょうか。こうやってできるんですねぇ。というか、この水晶自体も貫入双晶になってる?

 

2020年9月12日 (土)

水晶(日本式双晶など)(長野県茅野市金鶏金山)1

石英 Quartz SiO2 酸化鉱物

 

長野の金鶏金山で見つけた水晶です。日本式双晶を中心にまとめました。その1。

大きなものはないのですが、時々平板水晶ばかりついている石があり、そういう石の晶洞を探すと、多くの双晶を見つけることができます。見つけた双晶はすべて平板で、六角柱状のものは見つけていません。V字型が多いです。

顕微鏡があるならば、ここが一番簡単に双晶を見られる産地かもしれません。現地では気づかなかったけれど、家で顕微鏡で見て双晶がついてた! という石がいくつもありました。

 

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水晶の日本式双晶といえば、なんといってもこのハート型ですね。かわいい。

自分が見つけた初めての双晶水晶です。何とか肉眼でも確認できるサイズ。

 

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X字型の貫入日本式双晶。左の大きなのもy字をした双晶ですね。

こんな感じで、小さな晶洞の中にたくさんの双晶がちりばめられていて、顕微鏡で探すのが実に楽しいです。透明度が高いので、群晶になっていると双晶に気づきにくいのです。

 

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これは軍配型といっていいのかな。左右の先っちょに、白雲母がめりこむようにくっついています(金鶏金山では、クロムを含んだ緑の白雲母が多い)。全体的に鉄さびがついて赤茶けています。さびはシュウ酸等でとることもでき、水晶などは透明できれいになるのですが、味気なくなってしまうと感じることも多いです。特にここの石は白雲母の緑と茶色がきれいなグラデーションになっていることも多いので。

 

2020年8月23日 (日)

デューク石(長野県茅野市金鶏金山)

Dukeite Bi3+24Cr6+8O57(OH)6・3H2O 酸化鉱物

 

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金鶏金山の、クロムとビスマスを含むデューク石。

鮮やかなレモンイエローの球顆状の結晶が割れた状態です。2枚目の写真は、割れた断面を拡大。周囲の黄色い部分も、同じデューク石かどうかはよくわかりませんが、石の割れ目から、別の球顆状結晶もちら見えしています(もちろん怖くて割ったりできませんがw)。

小割した金鶏金山の石を顕微鏡で確認していて見つけた時、そのあまりの鮮やかさに思わず声が出てしまいました。稀産鉱物すぎて、アウト・オブ・眼中、探してもいなかったのですが、異様なくらいに存在感があります。

デジタル鉱物図鑑で、クロムとビスマス(蒼鉛)を含む鉱物を検索すると、このデューク石とクロム蒼鉛石の2種しか出てきません(どちらも写真なし)。クロムとビスマスの両者が併存する環境が、めったにないために、稀産鉱物となっているわけです。金鶏鉱山の石は、もともとクロムを含んでいたところに、後からビスマスを含む熱水がきて反応したらしいですが、いずれにせよ、非常に珍しい環境により生成された珍しい鉱物ということですね。クロム蒼鉛石にいたっては、ネットで検索してもカラー画像すらありません。

アメリカ・ノースカロライナのデューク大学で保管されていた、ブラジル・ミナス・ジェライス・Posse鉱山産のプッチャー石の標本から発見されたそうです(2000年報告)。命名は、アメリカのメアリー・デューク・ビドル財団あるいはデューク大学にちなんだもの。デューク大学の名前の元になったデューク一族(大学への経済的支援をした)の関係者だと思いますが、詳細は知りません(アメリカは、こういう政治家とか資産家とかにちなんだ命名が多いのか? 文化の違いというありがちな言葉だけで済ませてしまっていいのかどうか、最近は疑問に感じている)。

(「メアリー・デューク・ビドル財団」で検索したら、なんか怪しげな本にあたってしまったので、やる気をそがれてあやふやな笑みを浮かべつつ、そこで調べるのをやめることにしましたw まあね、別に詳しく調べる必要もないしねw)

世界でこの石が報告されているのは、発見された標本の産地・ブラジルのPosse鉱山、フランスのLe Val-d'Ajol、そして日本の金鶏金山の3か所だけです。Posse鉱山というところで今でも見つかるのかどうかは分からず。フランスは、詳細はまったくわからず。論文が複数ありはっきりしているのは日本の金鶏金山だけで、今現在でも発見できる可能性があるのは、ほとんど日本のみという感じなんでしょうか。

 

金鶏金山では、自分はビスマス系らしき部分はほとんど見つけられなかったのですが、多分ちょっとした場所の違いなのでしょうね。露頭の位置がちょっと違えば、転石の位置もかなり変わってきますし。

金鶏金山はもう一度行って、じっくり探してみたい場所のひとつです(向谷鉱山もまだ行ってない)。

 

2020年8月10日 (月)

苦土電気石(長野県茅野市金鶏金山)

Dravite NaMg3Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)3(OH) 珪酸塩鉱物

 

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南アルプスの北端・入笠山の、さらに北の山域にある、金鶏金山の苦土電気石です。

ここの苦土電気石は、少量のクロムを含んでいて、透明感のある鮮やかな緑色をしています。珍しいものではなく、特にここでは、白雲母や水晶とともに繊維状、針状でごく普通に見られるものですが、拡大すると透き通った結晶が実に美しいものです。

鉄さびで茶色の皮膜に覆われていることも多いのですが、シュウ酸につければきれいになります。こういう処理はできればやりたくはないのですが、ここで稀に見られるフローレンス石やデュモルチ石などを探すために、いくつかきれいにしてみました。上の1、2枚目の写真などは、そうやってきれいにしたものです。

 

金鶏金山は例によって武田信玄時代の金山のひとつで、この周辺にはいくつも当時の、あるいはその後の鉱山時代の遺構が残っています。下のJR青柳駅から要所に道標までありますし、現地にも説明板が設置されていますが、はたしてどれだけの人が見るのか。。。バイクの人は少々いるようですが、興味ある人いるかなぁ。まあいないよねw

林道沿いなので、軽トラやジムニー等なら楽に現地まで登れると思いますが、うちの車だと無理なので、林道の往復16kmを歩かなければなりません。ショートカットの山道(あるいは尾根等)を通っても、かなり長いです。。。さらに、このあたりの山道は、どうやらオフロード・バイクがよく走っているようで、道が深く掘られてつるつるになっているところもあって、かなり歩きにくい。。。登山者には、見向きもされていない地域で、ヤマレコの記録もほとんどありません(ここの記録は結構参考にしているのですが)。

すぐそばにはろう石山があり、ろう石、苦土(フォイト)電気石、デュモルチ石などが組になっていることが多いことを考えると、金鶏金山でも苦土フォイト電気石がありそうに思うのですが、どうなんでしょうか(デュモルチ石はあるらしい)。

また、ここから直線距離で1kmたらずのところには、向谷鉱山跡もあります。こちらにも行くつもりだったのですが、さらに遠くなるし、金鶏金山が想像以上に面白かったので、行くのをあきらめました。この地域の山の様子も何となく分かったので、下からまっすぐ歩いて登れそうなあてがついたので、またの機会に行ってみたいですね。

 

ところで、最近行ったまったく別の山域なのですが、休業中の山小屋でトタンを抑えている石が白っぽくて気になって見てみたら、ちょっとした水晶がついているのを見つけました。あってもおかしくない地域だし、確かにところどころで石英のかたまりを見つけたのですが、鉱物採集のポイントとしてはまったく話はなく、古い山行の記録を見てもヒントは全然ない(昔の山行記録だと、鉱山の調査をしていたとか、たまに書かれていたりするんですよね)。これは! と思ったのですが、後でそこから1kmも離れていないあたりに武田の金山があったというあやふやな噂があることを知りました。

山梨周辺だと、なんだか武田信玄がすみからすみまで探しつくし、その後追いをしているだけなのか、という気分になりましたw 地質図を見るより、信玄の行動、信玄関連の地域の伝説などを調べたほうがいいような気がしてきます。戦の進軍の際にも、そういうポイントを絡めているように感じることもあります。

信玄なんなんだよw

 

2020年7月16日 (木)

ヘスティングス閃石(長野県川上村甲武信鉱山)

Hastingsite NaCa2(Fe2+4Fe3+)(Si6Al2)O22(OH)2 珪酸塩鉱物

 

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甲武信鉱山の代表的な鉱物ともいえる、へスティング閃石。

肉眼やルーペで見ると、割と地味な風合いの、濃緑がかった繊維質の不思議な石という感じですが、顕微鏡をのぞき込むと金属的に思える輝きが素敵な鉱物です。角閃石の仲間。甲武信鉱山で検索すると、鉄へスティング閃石と書かれたものが多くヒットするので、これもそうなるのでしょうか。

初めて甲武信鉱山に行って、第2テラスで深緑のきれいにカットされたようなきらきら輝く石を拾って、感動しました。それがこの石。水晶は内包物の多い透明度のあまり高くないものが多く、形もちょっといびつな感じで、自分にとっては甲武信鉱山といえば、このヘスティング閃石とベスブ石のイメージです。

水晶のポイントは見るも無残な感じで掘り荒らされていて、木々の根っこがむき出しになっていたりして、正直あまりそこにいたくないのです。

甲武信鉱山のポイントは結構急な山を登らないといけませんが、梓川沿いの選鉱場あとでも、へスティング閃石がちょっとくっついた石は割と見かけました。

 

自分が鉱物に凝りだしたきっかけは、甲武信鉱山でした。でも、なぜ最初にそこに行こうと思ったのか、思い出せないw ベスブ石目当てだったような気がしますが。。。

あと、湯沼鉱泉はねこでいっぱいだと聞いて、そこにひかれたのかもしれない。

実際、ねこだらけでした。人よりもねこのほうが我が物顔であちこちで丸くなっていて、ここは天国かとw ねこしか入れない部屋もあるとか。どのねこも自由気ままに生活している感じです。ねこが嫌いな人だったら、一瞬たりとも耐えられないと思います(ねこアレルギーのお客さんは、自分の車の中で寝たとかw)。

川上村は遠いですね、清里まで行って、そこから山の中に入っていかなきゃならない。秩父・中津川から三国峠を越えれば着くと考えると、ずいぶん大回りしているわけですが、うちの林道に非力な車だと三国峠を越えるのは多分無理(一度行ってみたいんですが)。

またねこに会いに行きたいなぁ。

 

2020年5月26日 (火)

氷長石(長野県川上村甲武信鉱山)

Adularia KAlSi3O8 珪酸塩鉱物

 

Adularia_kobushim_01

 

結晶の形から、透明な氷長石の結晶だと思います。

長石はいろいろな種類がありますが、氷長石は、カリウムを主成分とするカリ長石のグループに含まれる、正長石の仲間です。

ネット上や鉱物の本にある甲武信鉱山の氷長石の写真を見ると、大きな白濁した標本ばかりで透明なものはほとんど出ていませんが、顕微鏡サイズだとこんな透明なものもあるんですね(ちなみに、この石は氷長石の出るポイントではないところで拾ったものです。どこだったかなあ、その近くの緑水晶のポイントだったか)。

英名のアデュラリアは、イタリアに近いスイス南部のアデュラ山からきています。イタリアでアデュラ山というと、その山域の最高峰3402m峰のこと。ドイツ語だと同峰はラインヴァルトホルンといい、アデュラといえば、アデュラ・アルプスという広い山域のことを指すとか。ややこしい。

この石を最初に報告したのはイタリアの自然研究者、建築家のエルメネジルド・ピニ(1739-1825)ですが、スイスを旅行中に手に入れたとのこと。どちらの意味でアデュラと名付けたんでしょうね。現地の人にどこで拾ったか聞いたら「ああこれはアデュラのあたりの沢で拾ったんじゃよ」(UFO特番のインタビュー吹替風に)みたいな? ところで、ゲーテはこのピニとミラノで会ったそうですが、その時に氷長石を見せてもらったようです。ハルツ旅行中に輝く真っ白い方解石を見つけて「ピニのもっていた氷長石を思い出した」と日記に書いています(木村直司編訳『ゲーテ地質学論集・鉱物篇』筑摩書房、2016年)。鉱物の話題で盛り上がったんでしょうねぇ。

自然研究者、科学・数学分野の専門家であり文学者でもある人物といえば、日本の寺田寅彦、ペルシャのオマル・ハイヤームなどがいますが、やはりゲーテはちょっと他に比べるもののない一頭地を抜く存在です。さらに政治家でもあるというのは、ちょっと想像を越えています。

自分は学生のころ、ドイツ詩の授業(山口四郎先生)をとっていましたが、ゲーテの詩ほど完璧に詩形にのっとり、なおかつ想像喚起力に満ち溢れたものは他にはないなあと思ったのを覚えています。またいまでも覚えている数少ないドイツ語の授業で、物理学者のハイゼンベルクのゲーテについての講演を取り扱ったものがありました。ゲーテの原植物(Urpflanzen)について、DNAを思わせるなどと語っていたのがすごく印象的でした。考えてみれば、DNAは原植物であると同時に原動物でもあるわけで。。。(ゲーテにとっての原植物が観念論でなく現実に存在するはずだという考え方は、あくまでフィールドワークを中心としたゲーテらしいところで、好きだなあw)

岩石については、ゲーテはヴェルナーの影響で水成論をとっていたようですが、フンボルトの火成論以降はかなり揺れていたようです。ちょうどそういう時代だったということでしょうね。光の粒子論と波動論もそうですが(ゲーテの色彩論)、定説が確立していない時代に生きていたら面白かっただろうなあと思います。

 

まあ一言でいうと、楽しそうに採集旅行にいそしむゲーテは、鉱物好きにとっては偉大な大先輩なのですw

 

2020年5月16日 (土)

ベスブ石(長野県川上村甲武信鉱山)

Vesuvianite (Ca,Na)19(Al,Mg,Fe)13(SiO4)10(Si2O7)4(OH,F,O)10 珪酸塩鉱物

 

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鉱物好きには有名な、長野県・甲武信鉱山のベスブ石です。

ねこでいっぱいの湯沼鉱泉で泊まって、ベスブ石目当てで行きましたが、期待を裏切らないきれいな標本が採集できました。美しい結晶という意味では、ここのベスブ石は日本でも最高級ですね(そんなに他の産地を知っているわけではないけれど)。ほうじ茶の葉っぱのような渋い色、透明度もすばらしいし、うちでは珍しく顕微鏡を必要としない大きさですw

2枚目の石は骸晶っぽく成長丘が発達していて、複雑な形になっています。柘榴石に時々こんな感じのものがありますね(甲武信鉱山でも割と見られる)。

このひとかけの石だけ、きれいな結晶でなく、形状がいろいろ変化したベスブ石がいくつもついていて、下の写真も同じ石から。

Vesuvianite_kobushimin_02

 

これはもしかして双晶になってるのかな?(双晶についてはこちら

ベスブ石の双晶はネットで探しても出てこないし、どういう形状になるか分からないんですが、何重か斜めに繰り返し接触したように見えます。

あれだけどこにでもたくさんある水晶の双晶がごく稀なのを考えれば、産地の限られたベスブ石の双晶はすごく珍しいものかも!?

ベスブ石の結晶構造は柘榴石と類縁関係にあるらしく、秩父鉱山などでは、確かにどっちだか分からないようなそっくりな見かけをしています(甲武信鉱山のベスブ石は分かりやすいですが)。柘榴石の双晶というのも、あまり聞いたことないですが、これを調べれば参考になるかも? このくらいしか見つけられませんでした(和田信之、広渡文利、高野幸雄「光学異常を呈するザクロ石の光学性・双晶点群および化学組成」『鉱物学雜誌』13巻6号、1978年)。

 

湯沼鉱泉は何度か行きましたが、遠く八ヶ岳を望める高地で、何度行っても楽しいです。何となく、子どものころいつも行っていた丹沢の山小屋を思い出します。動物がいっぱいいるところとか、匂いとか。。。裏の沢沿いの湿地帯には、季節になると水芭蕉が咲き乱れます(木道が壊れてて歩きにくいけれど)。

甲武信鉱山のあたりの山は岩がちで面白いですが、険しいだけでなく、シャクナゲのヤブの大変さを思い知らされたところでもあります。地形図で歩きやすそうな地形に見えても、地図にあらわれない隠れたキレットやヤブで、想定の数倍の時間がかかります。でも知られていない鉱物ポイントが隠れているかもしれないし、多分、ハマるとこれほど面白い山域はないかもしれません。。。

Kobushim_02Kobushim_01

左:長峰北2200m圏峰の東小尾根岩稜帯。右:同2000m圏峰から、右・小川山、左・金峰山。