○埼玉県

2020年12月22日 (火)

孔雀石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Malachite Cu2(CO3)(OH)2 炭酸塩鉱物等

 

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秩父鉱山(渦の沢)の孔雀石です。特に面白いものを選んで。秩父鉱山とひとくちで言っても、その範囲はかなり広く、他のポイントではあまり見かけないのですが、渦の沢では孔雀石がついた石がちらほらと見られます。ここは中津川沿いでバス停のあるもっとも奥、森林科学館のすぐそばなので、秩父鉱山で一番行きやすいポイントのひとつですが、見つかる鉱物種は割と限られるみたいです。緑簾石や閃亜鉛鉱、磁鉄鉱などは、結構立派なものがありますね。

1枚目は、緑簾石の結晶が絹糸状の孔雀石に包まれています。周りの黒いのは閃亜鉛鉱かな?

あんまり珍しいものはないといいつつも、さすが秩父鉱山、もし他の場所でこれが見つかったらすごく嬉しいところですが、秩父では、まあこんなもんかな、ですんでしまう。。。

2枚目は丸く成長した孔雀石。層状に成長したさまがよく見えます。

海外では、建築建材として使われるくらいに大きな塊が採掘されますが、そういうのは見ても単なる緑の岩って感じで、いまいちつまらない。このくらい小さいほうがありがたみが増すというものですw モース硬度は4弱程度でそんなに硬いものではないので、「宝石」ではありませんが、装飾品、顔料として広く使われてきました。割とどこでもあるし、珍しいものでもないのですが、やっぱりこの緑色を見つけると、ついつい手にとってしまいます。

古代エジプトの時代から研磨して装飾品にしたりしていたそうですが、自分が孔雀石で一番きれいだと思うのは絹糸状のきらめきであって、磨いてしまったら台無しなんじゃないかとw やっぱり原石のままが一番好きかなぁ。

マラカイトの語源はギリシャ語でμαλαχή 、アオイ科の植物のことらしいです。葉っぱの色にちなんでいるとのことですが、検索して写真を見ても、まあ普通に植物の緑色としかいいようがないですねw 実物を見たわけではないので何ともいえませんが、何か他の植物とは違って孔雀石との共通点があったのでしょうか。。。

孔雀石には時に目玉のような形象が見られます(2枚目の写真も、その系統ですかね)。こういうものは魔除け、邪眼よけとして使われていたかもしれないそうですが、納得のいく話です。モノノケの視線を逸らす魔除けは、相手を見返して視線をさける目玉であったり、視線を一定させないための籠目だったりします。中国や日本の九字、西洋から日本まで見られる五芒星(日本の陰陽道では晴明九字ともいう)なども、その一系統です。北陸などで悪い日に家先に網模様の籠をつるしたりするのもこれで、どうもこの手の魔除け、邪眼よけというのは世界共通なのが面白いですね。

そう考えると、研磨して装飾品にしていたというのは、別に美しさを求めていただけでなく、模様を強調して、魔除けとしての効果を求めたものなのかもしれません(そうだとしたら台無しとかいってすいませんw)。自然に産する不思議な緑の目玉など、魔除けにぴったりな感じです。

まあ邪眼の力をなめるなよってことでw

 

2020年11月12日 (木)

磁鉄鉱(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Magnetite Fe2+Fe3+2O4 酸化鉱物

 

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秩父鉱山は橋掛沢の、きれいな十二面体の磁鉄鉱です。

磁鉄鉱自体はもうどこにでもある鉱物ですが、黄鉄鉱と同じで、ありふれているからこそそのきれいな結晶が際立っていると思います。大抵はかたまり状か八面体の結晶ですが、肉眼で結晶という不思議を見ることができるのはやはり魅力的ですね。磁石を近づけると、すごい勢いで吸いつきます。

黄鉄鉱はあまり役にたちませんが、磁鉄鉱(の風化した砂鉄)は、たたら製鉄の原材料として、日本ではもっとも重要な鉱物のひとつでした。ちなみに「たたら」とは元々ふいごのことですが、次第に砂鉄と木炭を熱して鉄の原料を作る際の炉、さらには製鉄場のこともたたらといわれるようになりました。語源は、サンスクリット語の「熱」を意味するタータラ、ダッタン語の「猛火」を意味するタタトルからきているなどといろいろな説がありますが、いずれにせよインド・中央アジアあたりから伝わったもののようです。

磁鉄鉱といえば、自然の鉱物の中で最も磁気が強いものですが、それでも磁石といえるほどの強さはありません。さらに磁性が強くなって自ら砂鉄などを引き寄せるようになったものを天然磁石・ロードストーン(Lodestone、Loadstone)といいます。落雷の電流によって生成されるともいわれていますし、または磁鉄鉱が酸化・風化によって磁赤鉄鉱(Maghemite)となると、天然磁石になります。

ロードは道とか進路という意味で、リード(lead)と同じ語源を持ちます。人を導いてくれる羅針盤などからついた名前でしょう。

 

Magnetiteの語源ははっきりとはしていないのですが、ひとつは、古代ギリシャ・テッサリアのマグネシア(Μαγνησία)で磁鉄鉱がとれたので名前がついたという説があります(マグネテス人という人々が住んでいたらしい)。ただ、マグネシアには滑石の鉱山もあり、滑石からできた白い粉をマグネシアと呼んだ→マグネシウムの由来、という話もあり、実にややこしいことになっています。ここでは磁鉄鉱、滑石だけでなく、マンガンなども産出したようですね。さらに、ギリシャのマグネシアの人々が小アジアに移住し、現在のトルコにもマグネシアという地名が2か所あります。そして、そのうちの1か所からも磁鉄鉱は産出したようです。質が悪くあまりくっつかないという話が残っているので、多分ロードストーンではなくまさに磁鉄鉱だったんですね。

もうひとつ、プリニウスの「博物誌」には、ギリシャの詩人ニカンドロスによると、マグネスという羊飼いが放牧をしている時、偶然発見したので、その名前から命名されたという話が載っています。

。。。まあとにかくあのあたりが語源ってことですね(あやふや)。

羅針盤が作られたのは中国ですが(11世紀、宋の時代)、磁石は紀元前から「慈石」として知られていました。どうやら石が引き合うさまを、親子の慈しみになぞらえたようです。現在の中国河北省には磁県という地名がありますが、これは慈石が採れた慈石山という山があり、そこから慈州→磁州→磁県と変わってきたらしいです。

 

硫黄と同様、世界の磁鉄鉱史もかなり面白そうですね。多分調べれば調べるだけいろいろと出てきそうですが、きりがないので、このへんにしときます。

 

2020年9月 8日 (火)

赤鉄鉱?(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Hematite Fe2O3 酸化鉱物

 

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秩父鉱山・橋掛沢(奥のスカルン露頭のあたり)で採集した石です。

うす青い水晶がとてもきれいな石です。

そのそばにある薄いのは最初は特に気にせず、ルーペで見ていた時は雲母だろうと思っていたのですが、顕微鏡で見てみたら、なんだか違うようなのに気づきました。

赤銅色のすごく薄い板2枚で、銀色の中身を挟み込んだような構造になっていますが、これは一体なんでしょう?

中身と外側は全然別のもののように見えるので、2つの鉱物の組み合わせということになります。薄焼きの煎餅でクリームをはさんだ、神戸のゴーフルっていうお菓子がありますが、そんな感じ。あるいは、オランダのストロープワーフルとか。複数の鉱物で形成された、一定の形状の構造、こういうのを指す言葉が、多分あるに違いないと思うのですが(きっとありますよねぇ?)、調べきれませんでした。それとも、名前がつくような決まった現象というわけではない?

または、全然違うものに見えるけれど、実は同じもので、外側が酸化したりして変化しているだけ?

3枚目の写真は、中身の銀色の部分が露出した状態だと思います。

ネット等で探してみても似たようなものは見つかりませんでしたが、外側の部分のみでいえば、若干酸化して赤味のついた赤鉄鉱の板状結晶のように見えます。雲母状の集合のことを雲母鉄鉱、板状結晶を鏡鉄鉱といったりします。時に雲母状結晶が花びらのように重なって、アイアンローズといわれたりもしますね。秩父鉱山の産出リストにも赤鉄鉱は出ているし、まあ間違いないのではないか。。。?(自信があるわけではない)

中身の銀色の部分も、やはり単体で見れば、赤鉄鉱のようにも見えてきます。

ということで、とりあえず?付きの赤鉄鉱ということでタイトルをつけることにしました。

 

2020年6月 6日 (土)

クリントン石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Clintonite CaAlMg2(SiAl3O10)(OH)2 珪酸塩鉱物

 

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雲母の一種、クリントン石だと思います。秩父鉱山産。脆雲母に分類されます。

ネット等で見るのは石灰沢産出のものばかりで、デジタル鉱物図鑑でも産地は秩父では石灰沢しか書いていないのですが、これは隣の橋掛沢で拾った石についていました。地質図を見ると、同じスカルンの脈が石灰沢と橋掛沢を横切っているので、そこから出たものですかね(片山信夫他「秩父鉱山橋掛沢、石灰沢及び出会附近のスカルン鉱物の産状」『鉱物学雑誌』第2巻第1号、1954年)。ちなみに、日本で最初に見つかったのは、秩父の道伸窪だそうです。昔はザンソフィライト(Xanthophyllite)といわれていました(阿部英一「埼玉県秩父鉱山産ザンソフィライト」『地質学雑誌』第51巻第607号、昭和19年)。

白地に青緑の結晶が映えて、とてもきれいです。

白い部分は大体方解石だと思うので、シュウ酸か希塩酸につけて溶かせば、隠れているものが現われてきそうな気もしますが、まあこのままでも十分かと思います。

ちなみに、石灰沢でも、クリントン石らしいものは拾いました。

 

Clintonite_chichibumsekkai_01

 

写真ではあまり出ていないけれど、スピネルがついていないか探して、石のほんのりと青緑に染まった部分を見ていて発見しました(スピネルはなかったw)。

クリントンというと、米大統領だったビル・クリントンのことを思い出すと思いますが、もちろん関係ありません。ニューヨーク州知事などを務めたアメリカの政治家・博物学者のデウィット・クリントン(DeWitt Clinton、1769-1828)にちなんでつけられた名前です。石の原産地はニューヨーク州オレンジ・カントリー。デウィット・クリントンはニューヨークのエリー運河を推し進めた人物だそうです。もしかしたら、原産地と運河が何か関係あるとか、そういうことでしょうかね?

いずれにせよ、石に昔の政治家の名前をつけるとか、自分にはちょっと分かりかねる趣味ですw

 

日本ではそういうのはあまりやらない気がします。日本以外の国では、軍艦(艦艇)の名前は大体過去の偉人とか軍人の名前ですが、日本では人の名前を一切つけませんでした(日本とイギリスはちょっとおかしいw)、例外ありまくりですが、大体戦艦は日本の旧国名(長門とか武蔵とか)、空母は瑞獣などから(瑞鳳とか飛龍とか)、重巡洋艦は山の名前(妙高とか鳥海とか)、軽巡洋艦は川(阿武隈とか酒匂とか)、駆逐艦は和風月名、自然現象や樹木名(睦月とか、〇風、〇波、〇雨とか)、海防艦は島(八丈とか福江とか)からきています。一説によると、明治天皇が、「沈んだら申し訳ない」と言ったとか言わないとか。。。

おかげで、万葉集などに駆逐艦の名前が散見されるようになりました。風流でいいですね。現代の海上自衛隊の護衛艦も、これらの船名を受け継いでいます。個人的には、最近流行りの「グローバル・スタンダード」とかいって、浅はかに人名をつけたりしないでほしいですねw

 

2020年4月29日 (水)

黄鉄鉱(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Pyrite FeS2 硫化鉱物

 

Pyrite_chichibum

 

全体が見えないのでよく分からないけれど、黄鉄鉱の双晶ではないかと思います。

角がシャープで複雑な幾何学的結晶は、見ていてテンションあがります。

ネットで黄鉄鉱の双晶を調べたら、ドイツの十字形に貫入双晶した黄鉄鉱が有名らしいです(鉱物たちの庭)。何となく似た雰囲気ですね。

双晶というのは、複数の同じ種類の単結晶が、原子配列に則して結合した状態で成長したものです。鉱物によって、いろんな結合の仕方があります。鉱物の種類ごとに原子配列は決まっているのだから、その結合の角度も当然厳密に決まっていて、たとえば水晶の日本式双晶だと、必ず84度33分の角度で接しています。二つの結晶がひっついたまま、それぞれ個別に成長したものは山ほどありますが、それとはまったく別の現象です。

こういうのは結晶学の分野になるのでしょうけど、自分はあまり詳しくありません。

鉱物趣味を持つようになってから、無機化学は勉強しなおしているのですが、結晶学まではなかなか手が出せません。以前からの地質学への興味から鉱物に入った自分にとっては、結晶学というのはちょっと異質で難しすぎ。。。

 

この石は、秩父鉱山のとあるポイントで拾ったものです。

急斜面の崩れかけた廃道をたどって(自分の一番得意な分野なので、自然と足が向かったw)、大きな黄鉄鉱や黄銅鉱の自形結晶がごろごろしている夢のような産地を見つけました。坑口らしきものもありました。多分、かなり古い坑道か、試掘の跡ではないかと思います(他の坑口のように、きちんと廃坑処理されていない)。鉱物の多さから見て、多分あまり知られていないところなのかも?(だから場所ははっきりと書かないよw)。

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2020年4月26日 (日)

水晶(埼玉県秩父市赤岩峠)

(石英) Quartz SiO2 酸化鉱物

 

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埼玉中津川の秩父鉱山エリア、赤岩峠付近の沢で拾った石についていました。

これは水晶? 骸晶の一種でしょうか。うまい具合にかっこいい姿になってますね。見た目、水晶とトパズのあいのこみたいな雰囲気を醸し出してます。

多分、水晶の成長段階で、激しい環境の変化が何度か繰り返され、その成長のあとが段々になり(成長丘)、さらに六角形の一辺が欠けて五角形でうまくバランスがとれた角度に偶然なってしまった、とかいう感じではないかと。。。

とても小さいんですが、顕微鏡をのぞいていると、なかなか異質さが際立ってみえます。

 

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同じ石に、他にもいくつかこんな水晶がついていました。

柘榴石だと、こんな成長丘のついたものは割と見かけますが、それに似た感じです。

 

ニッチツ鉱山社宅の廃墟から赤岩峠への道は、途中スカルン地域も通るし、大理石が転がるなかなか楽しい登山道です。さすが秩父鉱山エリア。他にも面白い石が転がってたりします。

赤岩の頂上からは秩父鉱山の谷を見下ろせ、岩稜を少し先までいけば、両神山の大展望もあります。

多分石目当ての人で、赤岩まで足を延ばす人はあまりいないと思いますが、両神山、赤岩、さらに大ナゲシなど、面白そうな山がたくさんあるので、また石拾いもからめて、行きたいところです。知られていない産地とか、ないとも限りませんしね。

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ニッチツ鉱山社宅跡から赤岩を見上げる

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赤岩付近から両神山