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▽炭酸塩鉱物等

2022年3月26日 (土)

菱苦土石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Magnesite Mg(CO3) 炭酸塩鉱物等

 

Magnesite_chichibum_01

Magnesite_chichibum_02

 

秩父鉱山・道伸窪のそばの沢で見つけたもの。面が湾曲していて、爪のような形状が特徴的ですね。

菱苦土石、苦灰石(Dolomite: CaMg(CO3)2)、菱鉄鉱(Siderite: Fe(CO3))のどれかではないかとかなり迷いました。色、形状、モース硬度、劈開などは、3つともほぼ変わりがないので、なかなか判断がつきかねます(秩父鉱山では全部産出するとのこと)。

冷希塩酸でほとんど反応が見られないこと、温希塩酸で発泡すること、溶液が無色であったことなどから、菱苦土石としました(苦灰石は冷希塩酸で発泡する。菱鉄鉱は溶液が黄緑色をしているとのこと〈藤原卓編著『必携鉱物鑑定図鑑』白川書院、2014年〉)。ちなみに長波UVでは蛍光しませんでした。

菱苦土石も菱鉄鉱も、方解石の仲間です。「苦土」はマグネシウムのこと。わかりやすい名前ですね。

上2枚の写真は同じ石の違う部分。ほぼ菱苦土石の塊です。

下の写真は同じ場所で採集した、違う石についていた菱苦土石。

 

Magnesite_chichibum_03

 

透明で白い地は方解石です。こちらも湾曲した菱形の結晶ですが、大小さまざまの球状に寄り集まっているのが特徴です。

どちらも石英、方解石、黄鉄鉱等が一緒についていて、特に3枚目の石では黄鉄鉱の双晶があちこちにくっついているという。。。なんかもうさすが秩父鉱山としか言えない。

 

菱苦土石(Mg(CO3))のMgが、Feになると菱鉄鉱(Fe(CO3))になりますが、自然界では「100%」「0%」というのはほとんど存在しないと思います。必ず他のものが混じっているもので、この菱苦土石も結構多くのFeが混じっているのかもしれない(黄鉄鉱〈FeS2〉が共存しているわけだし)。詳しいことはもっと信用ある資料で「固溶体」について調べてもらったほうがよいですが、ほとんどの鉱物の種類というのは、かっちりしたものではなくグラデーションになっていて、あやふやなものと考えたほうがよいのでは、名前をつけること(レッテルを貼ること)ははたして正しい認識方法なのか、などとたまに考えたりします。

「自然」というものは、もともとあやふやなのがデフォルトであるといえるかもしれません。「数字で表せない科学」「計算できない科学」というものが、現実では当たり前にあると感じます。科学において計算できるのは、計算できるように事象を限定しているからで、本当はありのまま計算せずに捉えることができるような方法があればそうしたほうがいいだろうし、むしろ計算することによって本質から離れてしまうことだってあり得るのでは。。。

 

「レッテルを貼る」というのは、人間関係では明らかに否定的な意味合いを含んでいますねw 相手に「〇〇主義者」などというレッテルを貼りつけて(その人の思想がどの程度その主義と重なっているかどうかは関係ない)、そのレッテルを批判することで、相手の言論を封じるという議論の仕方をしている人をよく見かけます。というか、「〇〇主義者」などという言葉は、いい意味でも悪い意味でも、そういう使い方しかできないものです。それは個人ごとに必ずあるグラデーションをスミベタで塗りつぶしてしまう。いやだねぇw

今では、その反対の意味であるはずの「多様性」という言葉ですら、使われすぎて、なんか「〇〇主義者」と似たニュアンスになってきてるような気がするのだ。

ということで、今回はキーボードが走りすぎて書いてしまったけれども、こういう「個人的意見」はできる限り書かないようにするのが一番ですねw 自省。。。

 

2021年11月25日 (木)

菱マンガン鉱(山梨県南巨摩郡身延町草間鉱山)

Rhodochrosite Mn(CO3) 炭酸塩鉱物等

 

Rhodochrosite_simobe_01

Rhodochrosite_simobe_02

 

身延にある下部温泉の奥、草間鉱山(下部鉱山)は、マンガンを主体とする産地です。マンガンだけでなく、銅の鉱床も入り混じっているようです。草間鉱山のある下部川の支流・入ノ沢をさらに上流まで遡れば、武田の金山跡(茅小屋金山)もあるらしい。自分が現地に行ったときには河川工事作業中で、鉱山跡まで行けなかったので、仕方なく林道そばの川原でさがしました。それでもチョコレート色のハウスマン鉱、黒く輝くブラウン鉱などは目につくところに多く落ちていたし、塊状の満礬柘榴石、また自然銅らしい部分を含んだ石などもありました。沸石も豊富です。

かなり昔から本などで紹介されていたようで、有名なポイントですが、さすがに不便な場所でもあり、そうそう気軽に訪れるわけにもいきません(昔、碧っぽいうさぎの人が隠れたりしてましたよねぇ、そういえばw)。下流の川原でもこれだけ色々見つかるのだから、ズリまで行けばまだいろいろあるかもしれません。

写真は、赤く四角っぽい菱マンガン鉱(だと思います)の結晶ですが、その周りに一面についているきらきら光り輝く粒子はなんだろう。小さすぎてわからない(ベメント石:Bementite〈Mn7Si6O15(OH)8〉かな?)。相変わらず微細な結晶ですが、実体顕微鏡の接眼レンズごしに見るその姿は、息をのむくらいにきれいですね。二次元の写真では、なかなか表現しきれないです。

Rhodochrositeは「バラ色」という意味のギリシャ語(ρόδο χρώς)が語源で、方解石の仲間で硬度も3.5~4程度と硬くないのですが、その色の美しさから大きなものは宝石としても扱われます。日本も代表的な産地のひとつですが、鉱山がすべて閉山して久しい今となっては、立派な結晶はそうそう見つからないでしょうね。それでも、各地のマンガン鉱山跡では、今でも割と目にすることの多い鉱物です。でも真っ赤なものはそうそう見つからない感じ。

 

入ノ沢の草間鉱山(下)でしばらく石を探したあと、本流の下部川の川原に降りてみたのですが、ここもいろいろ面白い石がありますね。しかも、草間鉱山のようなマンガンに加えて、それとはちょっと違う系統の石英を中心とした鉱物なども見つかります。どうやら下部川の上流には、ほかにも面白そうな場所があるみたい。。。このあたり、もうちょっと探索してみたいなあ。

 

Shimobe_01

入ノ沢そばの林道に立っている、湯之奥金山の説明板。草間鉱山については何も記述がないが、ここが鉱山跡への入口。

 

ところで、現在(2021/11)、身延はたいへんに不便な状況にあります。草間鉱山に行ってから富士山側に抜けようとしたら、身延から中ノ倉を通って本栖湖に抜ける道が崩れて通行止めとか。迂回路を使えと看板があったのだけれども、それが、一度甲府盆地まで出てから精進湖を通るルートで、どれだけ遠回りなんだよ。。。

ちなみに草間鉱山の林道の奥も、湯之奥猪之頭トンネルで天子山地を突っ切って、朝霧高原・人穴の方に通じているのですが、ここも今のところ通行止めです。つまり、富士宮から精進湖まで、身延と富士山麓側との通行ができるところがすべて封じられているという状況です。折角、富士川沿いを、甲府と静岡をつなぐ中部横断自動車道が繋がったというのにねぇ。。。

 

2021年8月29日 (日)

方解石(埼玉県秩父郡小鹿野町二子山)

Calcite Ca(CO3) 炭酸塩鉱物等

 

Calsite_futagoyama_01

Calsite_futagoyama_03

 

秩父鉱山の北にある二子山の方解石です。

鉱物目当てで行ったのでなく、以前登山目的のみで訪れた時に、きらきら光っていてきれいだったので拾ってきたものです(最近戸棚を整理していて発見しましたw)。方解石であることは知っていましたが、まだ鉱物を集めたりしていないころの昔のことです。多分、東峰・西峰を登ったあと、魚尾道峠(よのうとうげ)に下りる途中だったような気がしますが。。。方解石のポイントって、股峠近くでしたっけ? 近くは通っているはずなので、ポイントから登山道に転げ落ちてきたものかもしれません。

透明度が高く、あちこち結晶内部が七色に光っているところがあって、とてもきれいです。方解石は非常にありふれた鉱物ですが、場所によってまったく異なる、さまざまな形態で見られるのが、とても楽しいのです。ここの方解石はそのシャープさ、透明さ、輝きに非常に魅力があります。

西峰と東峰からなる二子山は石灰岩の山で、フズリナ(紡錘虫)やウミユリの化石なども見つかります。古生代に南の海で堆積した有機物の層がプレート移動してきて、中生代ジュラ紀に日本に付加した後に隆起してできた山です。遥か遠い過去の海の残滓を垣間見ることができます。

このあたりには同じような断崖絶壁の山も多いですが、二子山は特に独立した岩稜の見かけのすごさや、普通の登山道があることもあって、人気の山ですね。クライミングの人も多いです。西峰には普通の登山道のほかにも中・上級者用の鎖などがついていないルートもあって、岩を登るのが好きだけどクライミングまではちょっと。。。という人にもとても面白い山です。昔鎖が邪魔と言われて、わざわざはずしたらしい。確かに、峻険とはいえ、手がかり足がかりは多くて、登りやすいです(表妙義などとは比較になりません)。

最近特によく感じる一般登山道の過剰整備を思うと、鎖をすべてはずしたルートを残したのは、高く評価されるべきだと思います。日本ではちょっとしたところでも危ないあぶない危険きけん! と、誰でも子ども扱いするのがデフォななか、よくこういう大人な対応をしたなあと感心します。最近、「山を登りにきたのに、いつのまにか階段ばかり登っていた、な、なにを言っているのかわからねーと思うがry)」と思うことが多くてねw

秩父の石灰岩の山は、いくつか採掘の対象となり、姿を変えています。二子山の隣の叶山も石灰岩が採掘され、下の写真のような姿です。掘られる前はどんなだったんでしょうね。。。子どものころ見た記憶の中の武甲山の姿は、今見る姿とずいぶん印象が違うんですが。。。これらの山々がコンクリートの材料になり、日本の近代化を支えてきたわけです。どんなに姿を変え、たとえ消えてなくなってしまったとしても、山の名前は記憶にとどめておきたいですね。

 

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魚尾道峠付近から見た西峰の岩稜。まるでミニ・ヨーロッパ・アルプスといった風情。

 

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西峰の岩尾根と、隣の叶山。石灰岩が採掘される前は、二子山のような岩山だったのかも?

 

2021年6月 8日 (火)

含ストロンチウム方解石(茨城県北茨城市華川町花園)

Strontium-rich Calcite (Ca,Sr)CO3 炭酸塩鉱物等

 

Calsite_hanazono_02

Calsite_hanazono_01

 

ストロンチウムを含んだ晶質石灰岩(大理石)、方解石です。ストロンチウムによって、うす青い色がついているといいます。ストロンチウムを含む鉱物といえば、天青石、糸魚川石なども、やはりこんなうす青い色合いですね(糸魚川石なんて実際に見たことはないですけど)。そんなにはっきりした色ではないのですが、だからこそ、とても美しいです。

天青石や方解石では青い色のもとになっていますが、炎色反応では深紅で、花火の赤にも使われるそうです。

ストロンチウムというと、原発の事故などで放出された放射性同位体・ストロンチウム90が有名かもしれません。ウランの核分裂で生成される代表的な放射性物質がストロンチウム90で、カルシウムと化学的な性質が似ているので、体内に取り込まれると骨などに集まって留まる傾向があり、危険であるとされています(方解石に含まれやすいとか関係があるかどうかは知らない)。現在でも、大気圏内核実験や原発事故などの影響で、わずかな量が大気圏内に残留しています。

当然のことながら、鉱物に含まれるストロンチウムや花火などのそれは、放射性ではありません。ペグマタイトの放射線のほうがはるかに高いでしょう。花園のペグマタイトには、燐灰ウラン鉱、モナズ石、ジルコンなどの放射性鉱物が含まれているので。いちいち心配していても仕方ありません。放射線もウイルスも自然界に普通に存在するものですからね。杞憂というものです。

(ところで、「杞憂」という言葉は中国の『列子』に出てくる話ですが、杞の国のとっても心配性の人が空が落ちてこないか心配しているのをみて、ある人がそんなあり得ないことを心配してもしょうがないと説いて聞かせたことからきています。でも実際にはこの先には続きがあって、その話をきいたまた別の人が、あり得ないということはない、もしかしたら空が落ちてくるかもしれないぞ、といったとか。。。で、さらに最後に列子が、落ちようが落ちまいがまあどうでもいいんじゃないの、としめくくりますw だから、実際には「杞憂」という言葉では、その話題を締めくくることはできないのだw)

 

福島との県境にほど近い北茨城の花園山(798m)は阿武隈高地に属し、基本なだらかな山体ですが、花園川の浸食によって渓谷が造られ、滝場も多く見られます(だから沢は思いのほか険しく、気軽に遡行はできない感じ)。周辺はペグマタイトがとても豊富な地域ですが、花園鍾乳洞はその中心部から若干離れたところにあります。ペグマタイトの露頭があちこちにあり、気になってなかなか先に進めない楽しい道中ですが、最後、道はヤブの中に消えます。昔は行きやすかったみたいですが、現在ではトゲトゲの草がいっぱいで、半そでだと傷だらけになりますよ。。。夏には行きたくないかなw

 

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ヤブに埋もれた花園鍾乳洞。入口はとても狭い。

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鍾乳洞の前には、大きな晶質石灰岩がごろごろ落ちている。

 

多分、次に続きます。

 

2021年5月17日 (月)

孔雀石(静岡県下田市稲生沢川流域)

Malachite Cu2(CO3)(OH)2 炭酸塩鉱物等

 

Malachite_rendaiji_01

Malachite_rendaiji_02

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河津鉱山由来と思われる孔雀石。さすが河津鉱山と思わざるを得ない姿ですね。けっして珍しい石ではないけれど、こんな繊維状の集合はそうそうないんじゃないでしょうか。先端が細くなるにしたがって、緑から白に変わっていく孔雀石の性質がよくわかります。

3枚目の写真も、孔雀石でいいのかな? すごく薄い絹布のような、ベルベットが淡い緑にきらめいたような姿が不思議。孔雀石は細かくなっていくとどんどん緑が薄くなっていって、白に近づいていくのが特徴で、似たような緑の鉱物と見分けるときもこの性質が助けになります。

以前紹介した秩父鉱山の孔雀石もきれいだったけれど、それとはちょっと違ってより繊細な感じです。やっぱり河津鉱山って秩父鉱山と並ぶ東日本を代表する鉱物の産地だったんだなと実感しますね。。。緑の鉱物といえば、河津鉱山では特にブロシャン銅鉱が有名ですが、まだ見たことはないです。やっぱり憧れます。ちなみにブロシャン銅鉱は孔雀石と似ていますが、色が白方向によることはありません。

日本画では孔雀石の粉末を岩絵具(緑青)として使いますが、粒子の細かさによって色合いを変え、緑から白まで十数段階にも分けられています。細かく砕いた孔雀石をふるいにかけ、大きさをそろえ、不純物をのぞいていく。さらに細かくするには水に沈殿させ、沈殿の速度によって少しずつ選別していきます。この作業を水簸(すいひ)といいますが、まだ機械ではなく人の手で行っているお店もあるようです。大きな数十kgの固まりを何か月もかけて細かく割り、選別していくとか。

産地によって色の微妙な違いとかあるのかな? 日本産の天然藍銅鉱を使った群青の岩絵具とか、いったいいくらくらいになるんだろうw 皮膜状の藍銅鉱じゃ絵具にできないだろうから、結晶を砕くんでしょうか。なんかもったいないw

マンガン鉱物で岩絵具を作れば、時間とともに色が変わっていくのかな? ほんの一瞬しか色がもたない絵で、そのはかない変化のさまを記録して、無常観を表現するとかどうかな。1日くらいしか色がもたない緑マンガン鉱の色絵具とかどうでしょう?(どうでしょうと言われましてもw)。

 

2020年12月22日 (火)

孔雀石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Malachite Cu2(CO3)(OH)2 炭酸塩鉱物等

 

Malachite_chichibum_01

Malachite_chichibum_03

 

秩父鉱山(渦の沢)の孔雀石です。特に面白いものを選んで。秩父鉱山とひとくちで言っても、その範囲はかなり広く、他のポイントではあまり見かけないのですが、渦の沢では孔雀石がついた石がちらほらと見られます。ここは中津川沿いでバス停のあるもっとも奥、森林科学館のすぐそばなので、秩父鉱山で一番行きやすいポイントのひとつですが、見つかる鉱物種は割と限られるみたいです。緑簾石や閃亜鉛鉱、磁鉄鉱などは、結構立派なものがありますね。

1枚目は、緑簾石の結晶が絹糸状の孔雀石に包まれています。周りの黒いのは閃亜鉛鉱かな?

あんまり珍しいものはないといいつつも、さすが秩父鉱山、もし他の場所でこれが見つかったらすごく嬉しいところですが、秩父では、まあこんなもんかな、ですんでしまう。。。

2枚目は丸く成長した孔雀石。層状に成長したさまがよく見えます。

海外では、建築建材として使われるくらいに大きな塊が採掘されますが、そういうのは見ても単なる緑の岩って感じで、いまいちつまらない。このくらい小さいほうがありがたみが増すというものですw モース硬度は4弱程度でそんなに硬いものではないので、「宝石」ではありませんが、装飾品、顔料として広く使われてきました。割とどこでもあるし、珍しいものでもないのですが、やっぱりこの緑色を見つけると、ついつい手にとってしまいます。

古代エジプトの時代から研磨して装飾品にしたりしていたそうですが、自分が孔雀石で一番きれいだと思うのは絹糸状のきらめきであって、磨いてしまったら台無しなんじゃないかとw やっぱり原石のままが一番好きかなぁ。

マラカイトの語源はギリシャ語でμαλαχή 、アオイ科の植物のことらしいです。葉っぱの色にちなんでいるとのことですが、検索して写真を見ても、まあ普通に植物の緑色としかいいようがないですねw 実物を見たわけではないので何ともいえませんが、何か他の植物とは違って孔雀石との共通点があったのでしょうか。。。

孔雀石には時に目玉のような形象が見られます(2枚目の写真も、その系統ですかね)。こういうものは魔除け、邪眼よけとして使われていたかもしれないそうですが、納得のいく話です。モノノケの視線を逸らす魔除けは、相手を見返して視線をさける目玉であったり、視線を一定させないための籠目だったりします。中国や日本の九字、西洋から日本まで見られる五芒星(日本の陰陽道では晴明九字ともいう)なども、その一系統です。北陸などで悪い日に家先に網模様の籠をつるしたりするのもこれで、どうもこの手の魔除け、邪眼よけというのは世界共通なのが面白いですね。

そう考えると、研磨して装飾品にしていたというのは、別に美しさを求めていただけでなく、模様を強調して、魔除けとしての効果を求めたものなのかもしれません(そうだとしたら台無しとかいってすいませんw)。自然に産する不思議な緑の目玉など、魔除けにぴったりな感じです。

まあ邪眼の力をなめるなよってことでw

 

2020年11月30日 (月)

コーリンガ石(群馬県藤岡市八塩鉱山)

Coalingite Mg10Fe3+2(CO3)(OH)24・2H2O 炭酸塩鉱物等

 

Coalingite_yashiom_01

Coalingite_yashiom_02

 

群馬県、三波川近くの八塩鉱山のコーリンガ石(赤褐色の部分)だと思います。

ブルース石を含む蛇紋岩の風化によって生成される鉱物で、1年間野外にそれを置いておくと、コーリンガ石ができるそうです(堀秀道『楽しい鉱物図鑑②』草思社、1997)。うちの庭のズリに置いておいて、実験してみますかね。

どちらの写真も上部に青緑の部分があり、これがブルース石ではないかと思います。八塩鉱山の石の多くは、半透明・青緑のきれいな部分がついてますが、全部ブルース石なのかな?

特に2枚目の写真は、青緑を含む上部(ピントがあってないところ)は採集した時割って出てきた面で、コーリンガ石がついているのは露出していた表面のみでした。ズリに転がっているうちに、コーリンガ石になってしまったんですね。黒い粒々は、クロム鉄鉱だと思います。

上記の本にも書いてありますが、たった1年で違う種類になってしまうとは、なんとまあいそがしい鉱物ですねw(マンガン系もそうですが)

コーリンガ石には、大気中の炭酸ガスを吸収する作用があります。二酸化炭素は現在ではなにやら大変な悪者的扱いになってしまっていますが、地球上に普通に存在する、絶対に必要なものでもあります。実際に炭酸ガスが増えているのか、それを原因とした影響がはっきり現れているのか、それが人間の活動によるものなのか、ということは別として、冷静に考えることが必要かなと思います(正直にいうと、政治的影響が大きすぎて、どの立場の話もそっくりそのまま信用していいのかどうか疑問を感じないでもないこともなくはないこともない←態度を明確にできないということを表現していますよw)。

 

カリフォルニア州のコーリンガ近くの蛇紋岩のアスベスト鉱床で最初に発見(報告)されたことから、この名前がつきました。ネットや本で調べると、コーリンガ石とコーリング石2種類の表記があったので、どっちがいいのだろうと調べていたら、以下のような事情があることが分かりました。

元々はコーリングという地名だったようですが、サザン・パシフィック鉄道(Southern Pacific Railroad)の駅Coaling Station Aという表記を省略してCoaling Aと書いていたのが定着して、コーリンガ(Coalinga)になってしまったようです。だからまあ、どっちでもいいのかなw(Coalingiteに「a」は入ってないですし)

 

2020年11月 8日 (日)

水苦土石(群馬県藤岡市八塩鉱山)

Hydromagnesite Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O 炭酸塩鉱物等

 

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Hydromagnesite_yashiom_02

Hydromagnesite_yashiom_01

 

水苦土石は、学名やそれを直訳した日本語名の通り、水とマグネシウムを主要な成分とする鉱物です(苦土はマグネシウムのこと)。

写真の通り、薄い板状で先の尖ったソードのような透明結晶が放射状または球顆状に集合することが多く、蛇紋岩中に産し、表面にいっぱいへばりついているのはなかなか見映えのするものです。

ここでは他に似たような鉱物として、アルチニー石やあられ石もありますが、先の尖った形ですぐに見分けがつくと思います(かなり小さいですけど)。あられ石もやっぱり放射状の白い結晶が石にへばりついていますが、水苦土石とはサイズが違い、数センチレベルの大きさがあります。自分が見た限りでは、大きいのは大体あられ石ですね。あと水苦土石は純白ですが、あられ石はちょっと濁っていて光沢がない感じ。

下2枚の写真の部分は先端の形をはっきり確認できないのですが、すべて板状の結晶の集合のように見えるので、水苦土石としています。アルチニー石は針状・繊維状になるとのこと、見たことないけど、モルデン沸石みたいな感じでしょうかね? もしかしたら下2枚はアルチニー石の可能性もなきにしもあらず?

 

クロムやあられ石を採掘していたという八塩鉱山跡は、群馬県と埼玉県の県境にあります。利根川の支流のひとつ、神流川沿いの八塩温泉、その上の御倉御子神社の背後の山の中にちょっと入ったところです(川向うは埼玉県)。下に弁天山・桜山ハイキングコースのための駐車場もあり(付近のコース地図も置いてあった)、ポイントは弁天山展望台のすぐそばなので、それほど遠くもなく、便利もよいです(神社の駐車場まではうちの車では入れなかったし、使わない方がいいと思う。歩いても大した距離じゃないです)。

すぐ南には、神流川の支流で地質学的には名の知れた三波川があります。日本最大の広域変成帯のひとつである三波川変成帯はこの周辺を東限として、中央構造線に沿って、西に向かって紀伊半島、四国、九州と日本列島を横断して続いています(このブログでも、オンファス輝石角閃石岩(愛媛県四国中央市関川流域)でとりあげています)。

実際、鉱山に行く途中の林道中、きらきら輝く膜のへばりついた石英の塊がよく落ちているのですが、それを見たとき、四国・別子鉱山の近くの渓谷で見た石とそっくりだなぁと思ったのです(もしかしたらこのあたりの沢とかで、藍晶石とか見つかりませんかね?)。ちなみに、下の駐車場にも大きな石英がころがっていたり、ポイントに行く途中、滑石の露頭があったりと、鉱山そのもの以外でも興味深いものが多く見られます(どちらも鉱山のズリにはまったくない)。神社の石段にも、石英の脈が走っていたり、さすが三波川(周辺には他にいくつも鉱山跡があります)。

鉱山直上には弁財天、山の神の祠と展望台がありますが、展望台にも青緑に縞模様の入った三波川の結晶片岩・三波石が置かれているので、ついでに見に行くといいかも?(天気が良ければ日光の山々、筑波山とちょこっと赤城山も見えてお休みどころですが、工場の音がうるさいかもしれない。。。)

 

Yashiom_01

八塩鉱山の坑口。坑口前の広場にはトロッコのレールや石組が多く残っている。

 

2020年9月19日 (土)

白鉛鉱(静岡県下田市稲生沢川流域)

白鉛鉱 Cerussite Pb(CO3) 炭酸塩鉱物等

 

Cerussite_rendaiji_01

 

静岡県下田で拾った石。下田の街中を流れるのが稲生沢川。

石の出所としては、河津鉱山の川沿いにあったというズリ跡から流れてきたものだと思います。当然のことながら、数多い坑道のどこから出た石かは分かりません。河津鉱山の石が説明されるときの特徴のひとつである、陶器状の石英のついた石もいくつか見られました。

白く細長いのが白鉛鉱だと思います。UV長波で黄色く光ります。半透明の米粒みたいのはなんだろう? 石英? 方解石? それともこれも白鉛鉱?(この米粒はUVでは光りません)

黄色く染色されているのは、テルル成分かもしれません。他も、黄色に染まった石が多いです。もしそうなら、上部の金属光沢は、自然テルルやテルル蒼鉛鉱などのテルル系鉱物かもしれませんが、見ただけでは判別は無理なので、ここではとりあえずスルーってことでw

このすぐそばの晶洞の様子が下の写真。

 

Cerussite_rendaiji_02

 

半透明の牙状の結晶が白鉛鉱だと思います。ただし、UVで黄色く光る部分と光らない部分があります。その違いは普通の照明をあててみても、まったく分かりません。

こちらにも、半透明や白~肌色の粒状のものがついているのですが、これ、ものによっては六方晶系の短柱状結晶に見えます。これも、UVで黄色く光るものと光らないものが混在しています。白鉛鉱は斜方晶系なので、これは白鉛鉱ではないですね(ただし、双晶によって擬六方晶系の形をとることも多いそうですが)。

最初にこれを見た時は、色とか、六角柱状とか、鉛系ということで、山梨で採集したミメット鉱をすぐに思い出しました(ミメット鉱(山梨県甲州市黄金沢鉱山))。河津鉱山では、緑鉛鉱、ミメット鉱、すべて産出します。種類が多いというのも困りますね、特定しにくくて(贅沢すぎるw)。

まあ今回は白鉛鉱の項なので、どちらであるか予想しませんが、どちらかであろうとは思います。

それにしても、河津鉱山の石、ちょっと割ってみるだけで、非常に面白いです。多分この先鉱山跡に行けるようになることはないと思うのですが、これが今では匂いのひどいドブ川(特に蓮台寺川はひどい。多分水に触ると病気になる)にわずかに転がっているだけというのは、ちょっと悲しすぎませんかね。

結局日本における鉱物趣味は、ヨーロッパのような歴史もないですし(明治以前だとほとんどわずか一人、木内石亭しかいない)、金銀掘って儲けるとか、そんな認識しかないんでしょうね(ただ、武田信玄は鉱物マニアだったような気がしないでもないw)。

 

2020年7月18日 (土)

水亜鉛銅鉱(栃木県日光市小来川鉱山)

Aurichalcite (Zn,Cu)5(CO3)2(OH)6 炭酸塩鉱物等

 

Aurichalcite_okorogawam_01

Aurichalcite_okorogawam_02

 

水色の、なんかしゃくしゃくして冷た美味しそうなのが水亜鉛銅鉱です。緑の部分は孔雀石。名前の通り、銅鉱床に生じる、水酸基、亜鉛と銅から成る二次鉱物です。

繊維状集合の濃緑の孔雀石と水亜鉛銅鉱の組み合わせがいい感じですね。特に水亜鉛銅鉱のさわやかな絹糸光沢・真珠光沢の輝きに目を奪われます。

鉱物の魅力の要素のひとつに、組み合わせ、共生があります。鉱物の同定にも役立つし(自分はまだよくわかっていないんですが)、さまざまなミクロの世界の風景を作っている要素です。てのひらの上に乗る小さな石のかけらを顕微鏡でのぞくと、広大な「風景」が広がっているのには、いつも驚きます。

 

水亜鉛銅鉱・Aurichalciteという名前はギリシャ語からきているらしいのですが、はっきりとしていないようです。一説には、オリハルコン(oreichalkon)(!)が語源とか。

wikipediaでは、オリハルコンは、「語源は、オロス(ὄρος, oros;山)のカルコス(χαλκός, khalkos;銅)。『ホメーロス風讃歌』や、ヘーシオドスの『ヘラクレスの盾』などの詩に初めて登場するが、これらの作品では真鍮(黄銅、亜鉛の合金)、青銅(銅との合金)、赤銅(銅との合金)、天然に産出する黄銅鉱(銅との混合硫化物)や青銅鉱、あるいは銅そのものと解釈・翻訳されている。ラテン語では、オリカルクム(orichalcum)。アウリカルクム(aurichalcum;金の銅)とも呼ばれた」(wikipedia 2020/07/18)と記述があります。銅系の金属一般のことだった? まああくまで現代での解釈なので、実際に何に対して使われていた名前なのかは、はっきりしないようです。

なんといっても有名なのは、プラトンの『クリティアス』Κριτίας, Critias)で、アトランティスの幻の金属として出てきたせいですが、読んだことはないです。個人的には光瀬龍のSF(あるいは萩尾望都のマンガ)、『百億の昼と千億の夜』の冒頭エピソードで、プラトンが「(この金属は。。。)オリハルコン!」という場面のせいで、生涯印象付けられてしまいましたw

銅と亜鉛の鉱物につける名前の語源としては、なんとなく納得はいきますが、名前をつけた人は、この水色の美しい輝きが幻のオリハルコンみたいだと思ったんでしょうかねぇ。アトランティス→海→水→水色→水亜鉛銅鉱、というイメージのつながり?(『クリティアス』には、アトランティスの王家は海の神、ポセイドンの末裔だったとあるらしい)

他にも、大プリニウスの『博物誌』には、すでに失われた銅系鉱石・アウリカルクム(auricalcum;金の銅)についての記述もあるそうです。いずれにせよ、このあたりの伝説上の金属によせた命名であるみたいです。

 

ただ水亜鉛銅鉱はモース硬度は1-2で、すごくもろい鉱物で、爪でも簡単に壊れてしまいます。

宝石といわれる条件のひとつは硬いことで、これはその美しさが永続するものである、ということなんでしょうが、水亜鉛銅鉱はまったくあてはまりません。幻の金属は、はかないってことでしょうかねぇw