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▽珪酸塩鉱物

2021年4月11日 (日)

含クロム白雲母(長野県茅野市金鶏金山)

Fuchsite(Muscovite) K(Al,Cr)2AlSi3O10(OH,F)2 珪酸塩鉱物

 

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長野県金鶏金山の白雲母の変種です。クロムを含んでいるために緑を帯びていて、とてもきれいですね。金鶏金山はセリウムフローレンス石や水晶の日本式双晶、苦土電気石、滑石などさまざまな鉱物を産出しますが、この白雲母がここの代表といっていいのではないかと。現場に行きさえすれば、わざわざ探すまでもなくいっぱいあるので、あまり珍重されないかもしれませんが、結晶形もはっきりとしていて薄いものは透明度も高く、拡大するとほんとにきれい。

錆がついて茶や黄色く染まった部分と緑のグラデーションが、またポイントですね。薬品で錆をとってしまうと、この美しさがそこなわれてしまう、でも錆をとらないと稀産鉱物が探せない、というジレンマに直面することになります(珍しいセリウムフローレンス石はピンク色なので、錆がついてると紛れて探しにくい)。

写真は3種の形態を選びました。緑の鮮やかな1枚目、薄い錆で金色の花びらのように重なった集合と水晶の2枚目、透明度の高いうす緑の薄片の3枚目、どれも違っていいですねぇ(写真の出来には目をつむってください><)。地の無色部分は石英です。

緑の雲母のことを、Maripositeということもあります。MaripositeもFuchsiteも正式な鉱物名ではなく、白雲母(Muscovite)の一種。クロムではなくバナジウムが含まれると、ロスコー雲母となります。

フクサイトの名称は、ドイツ・バイエルン王国の化学者・鉱物学者であるヨハン・ネポムク・フォン・フックス(Johann Nepomuk von Fuchs、1774-1856年)に由来します。

1842年、やはりドイツの地質・鉱業・冶金・音楽学者のシャフホイトル(Karl F. Emil von Schafhäutl、1803-1890年)によって命名されました。この人、ちょっと面白い人物みたい。もともと印刷関連の職人であり、詩や演劇・物語などの文学作品も残していて、かなり多彩な方面で活躍しています。地質学関連では、アルプス地方の地質などの研究。音楽では、グレゴリオ聖歌などの研究のほか、楽器の音響についての研究もあり、ベーム式フルート(要するに現代のフルートのことです。それまでは主に木製で簡単なキーのついたようなトラヴェルソが使われていました)の開発にも関わっていたようです。文学ではキリスト教の色彩が濃い作品が多い。

 

グレゴリオ聖歌はヨーロッパではかなり異質なモノフォニックな音楽です。西アジアの影響を強く受けているものと思われます。なので、コードではなくモード(旋法)を基本としています。ヨーロッパでは唯一といっていいモノフォニーな伝統音楽ですね。

誤解している人も多いと思いますが、モノフォニーが進歩してポリフォニーになったりするような関係にあるものではありません。まったく別の、独立したものです。社会のあり方と音楽を簡単に関連づけることはできないと思いますが、狩猟を基本とする社会にはポリフォニーが、農耕を基本とする社会にはモノフォニーが多いような気がします(日本も基本モノフォニーな国でしたが、何分文化の掃きだめ的な位置にあるのでw)。

現在ポリフォニー(と平均律)が世界的に全盛なのは、ヨーロッパの帝国主義の賜物だと言ってしまっていいかも? 世界にはいろんな音楽があって、聞きなれていないものは理解できません。聞き方は、演奏の仕方と同じく、技能です。現在の日本人の大部分は、日本の伝統音楽は理解できません。聞きなれていないから。学校で1回だけちょこっと雅楽や長唄を無理やり聞かされても、退屈こそすれ、理解できるわけもないです。音楽の先生もほとんどの人は分からないけど聞かせているだけでしょう(学校の先生の多くはヨーロッパの数百年の範囲内の古典音楽という非常に狭い範囲しかまじめに勉強していないでしょうから)。

アラビアのウード奏者の人の話で、音楽を幅を広げたいとヨーロッパに音楽留学に行ったそうです(それまでヨーロッパの音楽はほとんど聞いたことがなかった)。初めてオーケストラの演奏会に行ったのですが、いつまでたってもずっと音合わせをしていて、全然始まらないなあと思っていたら、拍手が起こって終わっちゃったとかいう。。。「音楽」として認識できなかったわけですね。西アジアの多くの国の人からしたら、オーケストラは音が合っていないのが気になって仕方ないんじゃなかろうか。調律に非常に厳密ですし、オーケストラは管楽器と弦楽器、さらに鍵盤もあって(それぞれ音程のとり方の仕組みが違う)音合わせが難儀な音楽形態ですからね。。。

音楽は世界の共通語だなんてよく言われますが、それはまったく無知からきた誤解です。音楽は言語と同じ、母国音楽以外のものをきちんと聞ける(演奏できる)ようになるには、勉強や慣れ、多くの時間が必要だと思います。それでも、はたして本当にそれが母国音楽の人と同じように聞けているのかどうか。。。結局のところ、頭の中で翻訳をするという余分な作業をしているのではないか。。。大元のところで理解の方法は異なっているのではないか。そういう疑問はけっしてなくなることはないと思いますね。

音楽は言語と同じと書きましたが、音楽そのもののあり方としては、言葉というよりむしろ数学に近いものです。現代では音楽は基本的に感情的なものと思われ求められることが多く、「作者の思いを伝える」とかそういった面が強調されることが多いですが、世界には、感情はむしろ邪魔であるという音楽も多くあります。たとえば南インドの伝統音楽では、音楽は宇宙とか世界とか、そういうものを表現するものであって、人間的な側面はできるだけ排除すべき要素であるとされます。日本の雅楽も儀典や占いのための音楽ですし、現代でも感情的な要素を排除した純粋な音の気持ちよさを追及する分野もありますね(特にエレクトロな分野の一部)。そのような数学的な側面が重視される音楽なら、共通語になりえるのかな、と考えたりもします。

そういう数学的な世界の表象として、自分は鉱物の世界が好きなのかもしれない。

 

って、途中から鉱物全然関係なくなってしまい、最後に無理やり鉱物を持ち出してまとめようとしてみましたw

 

2021年3月18日 (木)

マンガン斧石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

マンガン斧石 Axinite-(Mn) Ca4Mn2+2Al4[B2Si8O30](OH)2  珪酸塩鉱物

チンゼン斧石 Tinzenite Ca2Mn2+4Al4[B2Si8O30](OH)2  珪酸塩鉱物

 

Axinitemn_chichibum_01

 

前回の鉄斧石から続き、今回はマンガン斧石。秩父鉱山、大黒下の川原産です。

鉄斧石の鉄FeのかわりにマンガンMnが入ったもので、若干肌色がかった感じ。マンガン鉱物に多い赤・ピンク系が若干混じっているってことか。結晶が少しずつズレながら重なって集合しているさまがわかります。結晶面が滑らかなので、きらめきがきれいです。

大黒の川原わきの斜面はどうやらズリでできているようで、さらにその一部の狭い範囲だけでマンガン系の石が多く見られます(ピンクの菱マンガン鉱が目立つ)。このマンガンがらみの石に、いろいろな珍しい鉱物が共存していることが多いようです。マンガン斧石も、その狭い範囲内で見つかります。

同じ石の別の箇所には、色の濃いものもついていました。

 

Axinitemn_chichibum_02

 

表面に赤さびがついているわけではなさそうです。これは、マンガン斧石よりマンガン成分を多く含む、チンゼン斧石ではないかと思うのですが、どうでしょうね。写真を見る限り、こんな色をしていることが多いみたいですが。

マンガン斧石に比べるとかなり珍しいようで、ぐっと産地は減ります。CaのかわりにMnがちょっと増えただけなんですが、こんなに色が変わっちゃうものなんですかね。まあ分析したわけではないので、記事のタイトルは「マンガン斧石」としておくことにします。鉱物の組成というのは連続的なグラデーションで、わずかな差の鉱物の場合、分析なしでは判断できません。色なんてちょっとした差で変わってしまいます。。。

名前は、スイスのチンゼン(Tinzen, Tinizong)という地名に由来します。チンゼンそばのAlpe Parsettensというところで産するらしいですが、この場所がどういうところなのかよく分かりません。Alpeというのは、アルプスの山の名前ではなく、アルプスの中腹の草原地帯のことなのだそうですが、そこに鉱山等があったのか、露頭なのか。。。google mapで検索しても出てきませんね。

 

荒川の上流、奥秩父もみじ湖で、奥秩父の三国山を源流とする支流の中津川が合流します。さらに少し上流、中津川の支流・神流川が合流しますが、その神流川沿いに大黒の鉱山跡があります。地形図にも(廃坑)として表記されている、まさに秩父鉱山の中心地といっていいところですね。中津川はずっと深い渓谷が続きますが、このあたりは川原が若干広がっていて、気持ちのいいところです。

川沿いの崖にいくつか掘ったあとが見られますが、特に大きな坑口が真っ黒い口をあけていて、なかなか不気味な感じです。多分中は深い坑道が延々と続いているんでしょう。自分は洞窟とか苦手なので、鉱山あとにいっても坑道に入ることはほとんどないんですが、そういうのが好きな人たちの記録や写真を見ているとちょっと面白そうだなとも感じますが、感じるだけで入りたくはないですねw ベルヌの『地底探検』みたいなもんですかねぇ。

 

Chichibum_daikoku_01Chichibum_daikoku_02
左:神流川沿いの崖に大きな坑道が。右:大黒付近の沢の様子。

 

2021年3月11日 (木)

鉄斧石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Axinite-(Fe) Ca4Fe2+2Al4[B2Si8O30](OH)2 珪酸塩鉱物

 

Axinitefe_chichibum_01

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秩父鉱山・六助沢で採集した、鉄斧石です。斧の形が明確にわかる結晶ではありませんが、うす紫がとてもきれいな結晶。周囲の緑の小さな結晶は、緑簾石です。

名前は見てわかる通り、まさに結晶の形が斧のようだということで、1797年、フランスの鉱物(結晶)学者・ルネ=ジュスト・アユイ(René Just Haüy:1743~1822年)によって、ギリシャ語のαξίνα(axina:斧)を語源として命名されました。時代的にちょうどフランス革命の真っただ中で生きた人ですね。聖職者でもあった彼は実際、聖職者民事基本法に反発して投獄されたりしています。

それまでは鉄電気石の一種と考えられており、さまざまな人によって、いろいろな名前をつけられていたようです。その名前を連ねてみると。。。Espéce de Schorl、Schorl violet、Schorl transparent lenticulaire、Thumerstein、Thumite、Yanolite、Glasschörl、axinit、ferroaxinite。。。一番シンプルで短いaxinitになってよかったな、と(ちなみに「Schorl」は鉄電気石のことです)。

現在ではその成分の違いによって、鉄斧石(Fe)、苦土斧石(Mg)、マンガン斧石(Mn)、チンゼン斧石(Mnが多い)の4種類に分けられ、斧石グループを作っています(2007年より)。鉄斧石がもっとも産出が多いらしいですが、自分にとってはこれが初めて見つけた鉄斧石です。スカルンなどでは割と出やすいようです。

 

狭い範囲にいくつものスポットがある秩父鉱山ですが、各ポイントで微妙に出るものが違っていて、大変楽しいです。しかもそれぞれの結晶が立派で種類も多く、何度行ってもあきないで時間を忘れてしまいます。六助沢は、普通の鉱石のほか、マンガン、輝安鉱などのアンチモン鉱物なども産出するところで、もうちょっといろいろ探してみたいですね。まだそれほど上まで行ったことがないので。

もともと六助鉱山では金・銀・鉛などを採っていたようですが、日窒鉱業開発(現・ニッチツ)に買収されてからは、肥料の重要な原料の硫酸を目的に、閃亜鉛鉱が採掘されていたようです。その経緯については「樵路巡遊」というサイトの「六助道【廃径】が詳しいですので、興味ある方はぜひ。

石目当ての人もよく見かけるところですが、釣り人も割と見かけます。こんな鉱山の川で魚とれるのか分かりませんが、どうなんでしょう、釣れたとしても、あんまり食べたくはないような気もしますけど。。。以前も釣りの人と会ったら、「割れた石がたくさんあるけどこれはなんだろう?」という反応でした。ですよねー、お互い自分の興味あることはよく知ってるけれど、そうでなければ全然知らないものですよね。

自分も川や海によく行っていたにも関わらず、これまで釣りだけはなぜか全然やらないできてしまいました(唯一冬の赤城山でワカサギ釣りだけはしたことがあるが、一匹も釣れずw)。今となっては石釣りに忙しくて、とても手が回りません。

 

2021年3月 5日 (金)

珪孔雀石(石英)(栃木県日光市小来川鉱山)

Chrysocolla (Cu2-xAlx)H2-xSi2O5(OH)4・nH2O 珪酸塩鉱物

 

Chrysocolla_okorogawam_02

Chrysocolla_okorogawam_01

 

珪孔雀石だと思うのですが、それにしては透明感があるし、普通塊状や膜状でしか見られないのになんとなく結晶形があるように見えて、なんだろうと思っていました。色が濃いところから、淡く水色がついた透明なところまで、場所によってかなり幅があって、拡大するとなかなかきれいです。

多分、これは宝石の世界でジェムシリカとか、クリソコラ・カルセドニーとか言われるものではないかと。。。ネットで説明を見ると、珪孔雀石に石英がしみ込んで硬くなったものと書いてあります。石英が珪孔雀石にしみ込む? SiO2を含んだ熱水が浸透し、中に取り込んだ状態で石英に成長したということかな? つまり珪孔雀石を含有した石英ってことですかね? それならなんとなくイメージがわきますが。見かけ上は、珪孔雀石を含んで水色がついた石英といわれると、なるほどと納得できる感じではあります。一応宝石の部類なのだそうです。確かに、珪孔雀石そのものよりもずいぶん硬度は増しているし、透明度が上がって美しさも増していますね。

普通は珪孔雀石というと、ガラス質というよりは樹脂と陶器状のあいだという感じで、透明感は全然ないイメージ(そういうのしか見たことない)。鉱物の種類としては、石英とするべきかもしれませんが、石英は水晶として何度か取り上げているので、珪孔雀石として載せることにしました。多分普通の珪孔雀石はこの先取り上げないと思うし(どこにでもあるし、そんな面白いものじゃないですしねw)。

 

クリソコラという名前の歴史はとても古く、古代ギリシャの哲学者・博物学者のテオプラストス(Θεόφραστος, Theophrastos: BC371~287年。特に植物学で有名。「石について」〈Περὶ λίθων 〉という著作がある)によって最初に使用されたそうです。さらにその名前を、フランスの鉱物学者アンドレ・ジャン・フランソワ・マリー・ブロシャン・ド・ヴィリエ(André-Jean-François-Marie Brochant de Villiers:1772~1840年)が、1808年に復活させました。ブロシャン銅鉱のブロシャンさんですね。

金を意味するχρυσός(クリューソス)と、にかわ、のりを意味するκόλλα(コラ)が語源です。古代の処方として、銅の二次鉱物を粉末にして金と混ぜることによって、溶けやすくするという方法がどうやらあったらしい。珪孔雀石はどこでも手に入りやすいですし。あるいは、この鉱物そのものの名前というより、金を扱いやすくするための銅系の薬剤の名前だったのかもしれませんね。

 

2021年2月24日 (水)

普通輝石(静岡県賀茂郡南伊豆町伊浜)

Augite (Ca,Mg,Fe)2Si2O6 珪酸塩鉱物

 

Augite_ihama_01

Augite_ihama_02

 

普通輝石かなぁ? 多分。

西伊豆の南端、妻良と雲見の間の小さな港町・伊浜近くの山の中で採集しました。場所的には蛇石火山の範囲内になると思います。

蛇石火山は140~130万年前に噴火したとされる第四紀の火山です。侵食によってかなりなだらかな地形となっていて、蛇石峠西にある大峠そばの520m峰が山地の最高峰。名前は青野川上流の蛇石という地名からきていますが、ここにある蛇のように見える蛇石がジオパークのポイントになっています。この蛇石は伝説では蛇石集落の北2kmちょっとのところにある蛇石大池(現在低層湿原となっている)まで続いているということですが、この大池もどうやら火口跡地のようです。

妻良から雲見までの道路(マーガレットライン)は海から離れてずっとなだらかな山の上を通りますが、妻良側の約半分くらいは蛇石火山の噴出物の領域です。鉱物的には妻良の付近にマンガン鉱山があったようですが、行ったことはありません。妻良から南の岬の先にある浜を目指して、二十六夜山を周る道を歩いたことがありますが、植生が日本っぽくなく、南洋的なヤブがかなりきつく、岩場もあって結局行き着けませんでした。でも、林道の途中で立派な柱状節理が立ち並んでいたのを見つけたのは思わぬ発見でした(こちらはジオポイントにはなっていない。まあ伊豆は柱状節理多いですもんね)。

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普通輝石は火成岩(と一部の変成岩)に含まれることの多い造岩鉱物で、ごく普通に見られるものです。

語源はギリシャ語のαυγή(アヴギ)。現代ギリシャ語では「暁」という意味で、古代ギリシャ語だとαὐγήは「太陽の光」「光線」「光沢」というような意味です。劈開のさまからつけられたようです。前回の重晶石の回にも名前が出てきたドイツのヴェルナー(Abraham Gottlob Werner, 1749-1817)によって、1792年に命名されました。

なんといっても名前がね、「普通」ですからね、名前につける言葉じゃないですよねぇw

その名前のとおり非常に地味でありふれた存在ですけど、きちんと結晶形が出ているのをそう頻繁に見るわけではありません。ミクロな結晶から、マクロな地質、火山地形まで思いをはせることができるのが、地学の面白さですね。

 

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妻良南の岬付近から、北側方面を見る。海をへだてて向こうに見えるのは左から、波勝崎、高通山、さらになだらかな蛇石火山。

 

2021年1月25日 (月)

灰鉄輝石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Hedenbergite CaFe2+Si2O6 珪酸塩鉱物

 

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秩父鉱山の山鳥露頭の川原にあったもの。灰鉄輝石の針状結晶の集合だと思いますが、どうでしょうか。針状の細かい結晶を拡大すると、結構透明感がある感じです。灰鉄輝石というと、もうちょっと緑っぽいイメージがありますけど、鉱物って同じ種類でもいろんな色合いがあって、判断しずらいですよねぇ。

自分の大ざっぱな感覚では、スカルンで放射状の集合があったら、緑系のものであれば灰鉄輝石、白ければ珪灰石という感じ。山鳥の露頭近くには灰鉄輝石が多いらしいので、間違いないと思うんですが。。。

大抵の鉱物図鑑って肉眼で見えるくらい大きくて立派な標本の写真しか載ってないので、こういう顕微鏡レベルの小さなものの判断基準にはなかなかならない気がします。せめて海外のすごいものの写真でなく、国内の標本の写真を使ってくれればいいんですけど。。。保育社の豊遙秋・青木正博著『検索入門 鉱物・岩石』という本は、日本で採集できる(立派な結晶ではない)地味な写真を使っていて、しかも石の成因別になっているので、結構参考になります。こういう類の顕微鏡写真主体のものがあれば一番いいんだけど(売れなさそうw)。

(ところでキンドルの鉱物本をいくつか持ってるんですが、キンドル版ってなぜ文字検索できないのだろう。データ版である意味がまったくないと思うのだけれど。持って歩くのが楽なのはいいんだけど、いいところといったらそれくらいで、検索できないデータって買う価値ないよなあといつも思います)

 

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こちらは、同じ秩父鉱山の大黒下にあったもの。川原でなく、その上の広い駐車スペース脇の石山の中に落ちてたもの。あの辺の斜面って、大黒抗のズリでできてるみたいですが、そこを均して平地にした時の石の山だと思います。これも灰鉄輝石だろうと思いますが、どうなんだろう。

自分の少ない経験の中でいうと、最初見た時、金鶏金山にたくさんあった苦土電気石と見かけそっくりじゃん、と思った(苦土電気石(長野県茅野市金鶏金山)秩父鉱山でも苦土電気石は出るみたいだけど、金鶏金山ではクロムが含まれているから緑がかってるのであって、そうでなければこんな色ではないみたいだし、とすれば、灰鉄輝石しかないかなぁ、と。

多分もっといろんな博物館等で現物を見ればいいんだろうけど、そういうところに行く時間があったら現場に行きたいと思ってしまうのがいけないんだろうなあ。きれいな鉱物をコレクションしたいわけでなく、「探す」ということが好きなんですね。だから、目的の鉱物が見つからなくても、まあそれはそれで仕方ない。本当は、名前のはっきりした実物を実際に見ないと、覚えられないとは思うんですが。自分はミネラルショーみたいなところは行ったことはないし、行く気もないのです。それで知識がなかなか増えなくても、まるで見当違いの間違ったことを書いてしまっても、それは仕方ない、実際、よく分からないのだからw

 

ごくまれに、こういうズリなどで、別の場所で採れた石を捨てていく人がいるらしいですね。正直、意味がわからない。。。河津鉱山のズリとかに石捨て場みたいになった場所が昔あったらしいですし、ここ秩父でも出るはずのないものが落ちていたことがあったらしい。

重機を持ち出したとかいう話や、多人数で端から端まで一気に掘り起こしたとか。。。大きな露頭の岩が一夜にして消えた、などという話もありますね。自分も、別の場所ですが、大きなつるはしやスコップを使って掘っている人を見かけたことがありますが、これはアウトかな、と。こうなると採集とはいえずもはや採掘ではないかと。多分売るために掘っているのではないかと思いますが、こういうものを手にしてしまう可能性が0ではない以上、どんな場合でも、お金で鉱物を買うことは一切しないと個人的に決めています(当然売る、交換する、などもなし)。売り買いが悪いといっているわけではありません。現在ではどんなことも経済と無縁ではいられない。これは自分だけの決め事で、コレクションが目的ではない自分だからこそできることですし、他の人がどう考え行動するかはその人の問題で、口を出す気はないのだ(ただ、違う産地の石を違うところに捨てるのはやめてくれとは言いたい)。

まあこの話題は書き出すと過激な文面に走りやすいのでもうやめますが、この機会に自分のやり方を明記しておいてもいいかな、と思い、書いておきますね。

 

2021年1月 9日 (土)

緑閃石(群馬県藤岡市八塩鉱山)

Actinolite □Ca2(Mg4.5-2.5Fe2+0.5-2.5)Si8O22(OH)2 珪酸塩鉱物

 

Actinolite_yashiom_01

Actinolite_yashiom_02

 

緑閃石は別名、透緑閃石、アクチノ閃石、陽起石などともいわれます。写真のような粗い結晶だと緑のきれいな鉱物ですが、もっと細かい繊維状、針状でもよく見られます。さらに肉眼では見えないくらい細い結晶の緻密な集合=塊りは、中国では硬玉(ヒスイ)に対して軟玉(ネフライト:nephrite)と呼ばれて、宝石の一種となります(石英より少し柔らかい)。

アクチノライトという英名の語源は、ギリシャ語。1794年、アイルランドの地質学者・化学者のリチャード・カーワン(Richard Kirwan、1733-1812)によって命名されました。ακτίνα(aktina:光線)とλίθος(lithos:石)の組み合わせですが、繊維状のイメージからきているんでしょうかね。

ところで、この緑閃石にはもうひとつ属するグループがあります。天然に産するの繊維状珪酸塩鉱物のことを、石綿、アスベストと総称します(上の写真にも、一部繊維状結晶があります)。現代における鉱物三大悪役のひとつ、アスベストですねw でもその歴史は非常に長いようです。

古代エジプト、中国など、はるか古代から燃えない布としてずっと使われてきた石綿ですが、日本でも、かぐや姫が結婚の条件として出した無理難題のひとつが、火山に住む火鼠という幻獣の皮でできた、燃えない衣でした。和名類聚抄には「(巻18・毛群部第29・毛群名第234・20丁表4行目)火鼠 神異記云火鼠[和名比禰須三]取其毛織為布若汚以火焼之更令清潔矣」とあります。汚れたら燃やすと清潔になるらしい。

これは中国では火浣布(かかんぷ)として知られていて、実際は想像上のものでなく、石綿のことと思われます。かぐや姫の話では、苦労してようやく天竺由来の「火鼠のかはごろも」を手に入れた右大臣安倍のみうしが贈ったのですが、本物かどうか火にくべて試したら燃えてしまったので、結婚したくないかぐや様は喜んで「おかわいいこと」と笑った、という。。。(ちょっと違う)。かぐや様はつれないですねぇw

『列子』には、周の穆王が西戎を攻めたときに、西戎が降伏の印として錕鋙の剣と火浣布を献上してきたとあります。また『抱朴子』によると、火浣布には三種類あるらしい。一つは、肅邱という島に生えている、燃やしても灰にならない木があり、この木の花を布に織ったもの、一つは、この木の皮を灰と一緒に煮て布に織ったもの、一つは、毛が三寸ばかりの白鼠が上空の木に住んでいて、この毛は火中で焼けず、集めて布を織ったもの。最後のものがかぐや姫の火鼠のことですね。

江戸時代には、平賀源内が石綿を製作したり、「火浣布説」「火浣布略説」という書を著しています。彼は金山事業の関連で埼玉中津川の秩父鉱山周辺に何度も訪れており、あるいはここで見つけた閃石類を使ったのかもしれません。

西洋では、マルコ・ポーロの『東方見聞録』に「サラマンダーの皮」というものが出てきます。なぜトカゲとかネズミとかが火に強いということになったんでしょうか。多分なにかしら理由があるはずですが。。。

 

現代ではもはや原則生産されていない石綿、アスベストですが、子どものころは理科の実験で、ビーカーを熱する時に下に敷くものとして、まだ使われていました。生産されていないといっても、まだ使われてそのままになっている建築物は多く、その排出量がピークを迎えるのはこれからだそうですが。

アスベストといっても鉱物名ではなく、蛇紋石族のクリソタイル、角閃石族のクロシドライト(リーベック閃石)、アモサイト、アンソフィライト (直閃石)、トレモライト(透閃石)、そしてこのアクチノライト(緑閃石)の、繊維状結晶の総称です。アスベストとして使用されてきたのはほとんどはクリソタイルで、緑閃石はアスベストの原料としては、ほとんど使用されていないようです。緑閃石の鉱山なんて、聞いたことないですし。

大きな結晶だと、淡い緑の半透明がほんとにきれいなんですけどね。

 

2020年12月 7日 (月)

苦土かんらん石(静岡県伊東市宇佐美)

Forsterite Mg2(SiO4) 珪酸塩鉱物

 

Forsterite_usami_01

Forsterite_usami_02

 

東伊豆の宇佐美、大崎海岸の苦土かんらん石です。白いのは灰長石かな?

宇佐美と網代の間、約5kmほど続く大崎海岸は、伊豆によくある断崖と海岸が続いており、多分大崎火山の溶岩流が海に落ち込んだあとだと思いますが(断崖には節理がよく発達している)、小さいけれども緑の透明なかんらん石や、灰長石の大きな結晶も見られます。

網代と海岸続きの上多賀の鉄かんらん石は以前とりあげましたが(鉄かんらん石(静岡県熱海市上多賀))、矢印のような形がなんだか似てますね。

宇佐美海岸には無料駐車場(夏には有料になる?)が多く、そこからちょっと歩いて行ける大崎海岸は行きやすいところですが、あまり奥まで行くのはちょっとためらわれます。多分場所によっては大潮で通行困難になりそう。でも、行きやすい東伊豆にしては人の少ない穴場的な海岸で、晴れていると気持ちいいです。冬だと東伊豆は風があまりないので、あったかい(西伊豆は風が強くて大変)。

途中の住宅地の石垣に洗面所がついていて、常に温泉が流れているのはさすが伊豆。

Usami_01Usami_02

左:大崎海岸。遠くに見える山は矢筈山と遠笠山かな? 右:宇佐美から大崎海岸に向かう途中、道の脇に温泉が湧きだしている。さすが伊豆。触ると熱い。

 

宇佐美と網代の間は、山を越えて歩くこともできます。昔の街道が一応残っていて、古い遺構などもそのまま残ってたりします。大崎海岸の上のナコウ山には、江戸城のための石の切り出し場(石丁場)がありました。担当した大名の名前が刻まれた石が残っていて、ちょっとした公園みたいになっています。伊豆にはこういう場所は多いのですが、歩く人もそんなに多くないとみえて、大抵ちょっと荒れてて面白いんですよねw 南のほうだからジャングルみたいになってるかと思いきや、稜線上は割とヤブも薄くて歩きやすかったりするのだけれども、冬でもクモの巣がはってるのはやっぱりあったかいんですね。

山中、場所によってはシダやヤブムラサキが多いところもあって、もしかしたら金とか見つかるかも?

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ナコウ山頂上近くの石丁場あと。「羽柴越中守石場」と刻まれている。

 

2020年10月30日 (金)

バラ輝石(群馬県桐生市菱町茂倉沢鉱山)

Rhodonite Mn2+SiO3 珪酸塩鉱物

 

Rhodonite_mogurasawam_03

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茂倉沢のバラ輝石です。以前は輝石の仲間だと思われていたのですが、実際には輝石とは違い、準輝石という構造であることがわかっています。今ではバラ輝石族という集合が作られています。名前は見たとおり、バラの色をしているということで、古代ギリシャ語のバラを意味する「ῥόδον(rhodon)」からつけられました。ラテン語だと「rosa」で、どちらももともとは古代ペルシャあたりからきた言葉をもとにしているようです(バラそのものの起源はヒマラヤのあたりではないかといわれている)。

たいていのマンガン鉱床にはよく見られるもので、特に珍しいものではありませんが、磨いてちょっとした宝石として使われることもあります(マンガン鉱石としては価値は低い)。珪酸塩系なので、石英と一緒になっていることが多いです。

かたまりになっていることが多いのですが、ここのバラ輝石は拡大すると、結構透明できれいですね。3枚目の写真は色が濃く紫色ですが、どうも成分の違いによるもののようです。マグネシウムが含まれていると、紫系の色になることが多いようです。

空気や水、光に触れると徐々に黒くなっていきます。だから、沢に落ちているものは、大抵表面は真っ黒です。とても硬いのですが、苦労して割るとこの鮮やかなピンク~紫の面があらわれて、とても感動します。

「バラの下(sub rosa)」というと、ラテン語圏では「秘密」という意味。まさに真っ黒な表面に隠された美しい「秘密」ですね。

(「バラ」というのはさまざまな象徴、暗喩があって、意味ありげにする時に便利なのですw 『薔薇の名前』を書いたウンベルト・エーコもそんなことを言っていたような。。。)

 

2020年10月21日 (水)

ぶどう石(山梨県身延町杉山)

Prehnite Ca2Al(Si3Al)O10(OH)2 珪酸塩鉱物

 

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下部温泉のそば、栃代川の、有名な産地のぶどう石です。

普通は岩欠のぶどう石といわれますが、住所的には岩欠ではなく杉山となります。産地の直前に杉山橋を渡りますが、その橋の直前までが岩欠で、そのあとは毛無山までずっと杉山です。

ほんのりと緑(~青)に染まった板状結晶が放射状に集合して、まるでぶどうの実のような姿をとることが多いということで、日本ではぶどう石と呼ばれています。色のついていないものも多いですが、無色だちょっとつまらないので、やっぱりシャインマスカットみたいな色のものがいいですね。海外産の写真などを見ると、確かにぶどうのように見えるものがありますが、日本で産出するものはそれほどぶどうっぽい感じはしません。

ここのぶどう石も結晶粒が大きいので、それほど「ぶどうみ」はないのですが、ルーペや顕微鏡で見ると、四角の板状結晶が少しずつズレながら積み重なっているのがはっきりわかります。

ちなみに1枚目の写真は色味がちょっと他と違いますが、これは光源が太陽の光だからです。朝の日光にきらきらしてとてもきれいだったので、思わず写真にとってみたのですが(カメラ本体でのマクロ撮影)、ほんのりと赤味がさして、あたたかみのある感じですね。

 

洋名は、喜望峰のオランダ植民地に駐在していたプレン大佐(Hendrik Von Prehn、1733-1785)に由来するらしいですが、和名のほうが全然いい名前ですね。プレナイトの由来を聞かされても、正直それがどうしたという感じです。イメージを喚起する「ぶどう石」には言霊が宿りそうだけど、「Prehnite」では単なる記号で名が体を表しておらず、化学式を覚えた方がよほどましかもしれないw

 

採集した現地では、台風による大雨の翌日だったため、川が増水して石を探す範囲が狭まっていたようで、結構苦労しました。当然、気になる対岸にもとても渡渉できず、川沿いの崖のあちこちから滝のように水が流れ落ちていました。それでも、いくつかのぶどう石を含む石を見つけることができました。ネット上では絶産に近いという言葉もちらほら見られたのですが、やはり絶産などということは滅多にあることじゃありませんね。

Tojirogawa

 

あとここに行くときには、すぐそばの下部温泉にある金山博物館がおすすめです。この一帯の金山のことを知ることができます。栃代川の上流部にも、栃代金山というのがあったようです。あまり詳しく調べられてはいないようなのですが、ちょっと気になりますね。まあ金山周辺というのは、鉱物的にはそれほど面白くないことが多いのだけれど。。。

地形図には栃代から毛無山に行く道、雨ヶ岳と仏峠の間を越えて本栖湖に出る道が描かれていて、まあ十中八九廃道でしょうけど、一度探索してみたいところです。