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▽硫化鉱物

2021年8月12日 (木)

硫砒銅鉱(山梨県北杜市増富鉱山)

Enargite Cu3AsS4 硫化鉱物

 

Enargite_masutomim_01

Enargite_masutomim_02

Enargite_masutomim_03

 

角柱状、あるいは板状の硫砒銅鉱の結晶。ここの硫砒銅鉱は、真っ白い変質した珪岩に埋め込まれるようになっていることが多いみたいですが、これは石英の小さな晶洞の中にぎっしりとつまった状態です。場所によって若干色合いというか輝きが違いますね。同じ石には黄色い硫黄と思われる部分も見られるように、銅と砒素と硫黄の化学式をもちます。

日本ではそれほど多く産出しない鉱物ですが、南北米あたりでは銅の鉱石として採掘対象になるくらいに多いようです。

英語のEnargiteはギリシャ語のέναργής(enarge:明確)から。はっきりとした劈開が由来。

 

採集場所は、銅藍の産地として有名な山梨県の増富鉱山。増富ラジウム温泉の奥にあり、金峰山、瑞牆山の登山口で知られる瑞牆山荘の近く、クリスタルライン沿いにあります。川沿いに鉱山の施設あとと思われる石組などが点在した広場があって、あまり石は転がっていないんですが、時々石英の塊があって、それを割ってみたところ、現れました。

花崗岩中の低温型生成鉱脈ですが、ここの硫砒銅鉱にはゲルマニウムが特に多く、他にはタリウム、アンチモン、モリブデン、錫、タングステン等々が含まれているらしく、かなり特殊な鉱床のようです。

「おそらく、かなり高温の鉱液より、気相中に分離濃縮した諸成分が、花崗岩中の裂罅中に、低温に冷却後、鉱床として沈殿したものであろう」(「地質調査所報告 第208号 硫化金属鉱鉱床に伴なう地球化学的研究」地質調査所、昭和39年11月、p.23)

 

もともと増富鉱山が目的だったわけでなく、急にすぐそばを通ることになったため、そういえばこのあたりに銅藍が採れるところがあったなあと思って訪れました。だから事前にきちんと調べていたわけでなく、なんとなくこのあたりといううろ覚えの情報をたよって、川沿いのちょっと怪しげな(鉱山跡っぽい)ところでちょっとだけ探してみました。すぐそばには金山という地名もあり、例によって信玄がらみかーと思いつつ川に出てみると、まっ茶色に焼けた岩からあちこち水が湧いていて、もう絶対なんかあるだろ、といった風情。

結局銅藍はなかったのですが(帰ってから調べたら、ポイントはちょっと違う場所だった。。。)、いくつか怪しげな石を見つけることができました。硫砒銅鉱は全然意識になかったので、家に帰ってから見つけてびっくりです。現地では小雨で暗くて、ルーペではよく見えなかったし。

ということで、また来ないといけない場所ができてしまった。クリスタルラインと増富ラジウムラインの三叉路のあたりも、なんか非常に探しがいのありそうな雰囲気でしたし。

ラジウムラインの渓谷は、巨大な花崗岩がごろごろしていて(瑞牆山の岩と同じやつかな)、なかなか楽しいところですね。

 

2021年6月18日 (金)

黄鉄鉱(栃木県日光市足尾町足尾銅山)

Pyrite FeS2 硫化鉱物

 

Pyrite_ashiom_01

Pyrite_ashiom_02

Pyrite_ashiom_05

 

足尾銅山の黄鉄鉱です。

足尾銅山は、日光のほど近く、渡良瀬川の上流にある備前楯山の地下に広がっています。その坑道の総延長は1200km(東京・博多間と同じ!)とか。ちょっと想像を絶する規模ですね。まさに巨大地下迷宮。足尾の町の宿屋では、きっとみんな馬小屋に泊まって、時々灰になったりしてるに違いないのだw

備前楯山のあちらこちらに坑口、鉱山施設跡が残っていて、一部の坑道(通洞坑)は観光用に電動トロッコに乗って入ることもできますが、多くの施設跡は非公開、外見のみ道路から見えます、なんてのばかりで、観光地としてはちょっと中途半端かなぁ。まあ自分は山自体が目当てなのでいいんですけどね。。。富岡製糸場くらいに整備されればまた違うんでしょうけど。

明治時代には日本の銅の40%がここで掘り出され、日本の近代化を支えましたが、そんな光の部分が大きい分、闇の部分はさらに大きいのが鉱山。公害、劣悪な労働環境、強制労働、採算・国益最重視などといった言葉がちらつきます(普通足尾銅山といったら学校で習った田中正造のことを思い出すのではないでしょうか)。文化遺産としてプッシュしにくいという面もあるのかもしれません。備前楯山の頂上から周囲の山を見渡すと、今でもところどころ茶色くハゲたところが目につきます。精錬所から排出される亜硫酸ガス、燃料としての山林の乱伐などで、当時は木一本ない荒野が広い範囲にわたっていたようですね。ボランティアなどによる植林活動で、今ではかなり森が復活してきているそうです。

 

この黄鉄鉱を採集したのは、備前楯山の西南部・文象沢。周辺には江戸時代から採掘されていた小瀧抗、選鉱場跡、火薬庫などがあり、当時は鉱山の中心地だったことがうかがわれます。今では道路を猿が我が物顔で歩く静かな山中ですが。。。沢の入口付近にも、鉱山時代の小瀧小学校、第三中学校跡、沈殿池跡などがあります。沢の右岸に林道が通っていますが、残っているのは部分のみ。上流に上るほど、鉱石が多くなっていきます(あまりツメませんでしたけど)。特に珍しいものは見つからなかったけれど(あったのは黄銅鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱、石英、自然銅など)、よく探せば他にも見つかるのかなぁ? でもさすが足尾なだけあって、けっこう立派な結晶が見られます。

鉱山図を見ると、大黒ヒ、上流部の光盛ヒなど、沢沿いに鉱脈が走っていて坑口もいくつかあったようなので、もうちょっとちゃんと探してみたいかな。鉱石が多く転がっている沢の様子を見るに、ズリもあちこちに残ってるみたいですし。

ちなみに自分が行った時には、備前楯山の反対側(北東)の本口沢は、橋のゲートが閉ざされていて、入れませんでした。行ってみたかったんだけどな。。。ただそちらは、鉱山町の廃墟がかなりいい雰囲気で、鉱山神社の参道の階段を、野うさぎが駆け上っていきましたよ。好きな人にはたまらないかもね。

 

Ashiom_01
文象沢。正面の石垣の上が林道。


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大黒ヒの坑口と思われる。入口を山の神さまで塞いでいる。

 

2021年5月23日 (日)

毛鉱(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Jamesonite Pb4FeSb6S14 硫化鉱物

 

Jamesonite_chichibum_03

Jamesonite_chichibum_01

Jamesonite_chichibum_02

 

秩父鉱山、大黒の川原で見つけた毛鉱です(すべて1つの石の部分)。あったのは、マンガン鉱などが見つかるところ。大黒でちょっと珍しいものを見つけるのは、ほとんどこのとても狭い範囲内で、ちょうどここに捨てられたズリが特別だったのだろうと思います。大黒川原の右岸斜面は全部ズリでできているようですし、まだまだいろいろなものが埋まっているんでしょうねぇ。川原上の広い駐車スペースも、ズリで平地を広げたような感じに見えます。

毛鉱とブーランジェ鉱は、なかなか肉眼では判別が難しいようですが、特に1枚目のものはサイズがかなり大きく毛というよりはまさに針で、ブーランジェ鉱とは見た感じが全然違うと感じました(詳しくはブーランジェ鉱(山梨県甲州市黄金沢鉱山)を参照のこと)。色も黄鉄鉱のようにちょっと黄色がかっていて、立派です。少なくとも1枚目の写真は、毛鉱と確定していいのではないかと。まあ正確なところはわかりませんけどね。。。

2枚目の写真では、ブーランジェ鉱との違いがよくわからないです。どうやら毛鉱らしいものと同じ石の欠片についていたので毛鉱だろう、といった程度の考え。でも、毛鉱とブーランジェ鉱は共生するので、ブーランジェ鉱の可能性もあります。

あと、3枚目のように、青く見える部分もいくつかあって、とてもきれいです。この青は何に由来するんでしょう。mindat.orgの毛鉱の写真を見ても、いくつか青く輝く写真があります。拡大すると、どうやら基本的に虹色の輝きをもったものが、反射の加減で特に青が強調されているような感じです。どうやら地色というわけではないみたいです。ちなみにブーランジェ鉱のmindat.orgの写真を見ると、やはり青によったものが多く見受けられますね。

どの写真も、まわりはほぼ全部石英(水晶)です。

 

鉱物名は、スコットランドの博物・鉱物学者・ロバート・ジェイムソン(Robert Jameson, 1774-1854)にちなみます。エジンバラ大学出身ですが、ドイツのフライベルク鉱山学校(Bergakademie Freiberg)で、ヴェルナー(Abraham Gottlob Werner, 1749-1817)の下でも学んでいます。

ここでも何度も名前が出てきたヴェルナー。その下で学んだということは、ジェイムソンもやはり岩の水成論の立場に立っていました。この時代のヴェルナーの影響の大きさがわかりますね。

 

2021年3月23日 (火)

黄鉄鉱(静岡県河津町河津川流域S鉱山)

Pyrite FeS2 硫化鉱物

 

Pyrite_izusm_02

Pyrite_izusm_01

 

一番最初の記事、黄鉄鉱(静岡県河津町河津川流域)の上流の鉱山跡で採集したものです。先に拾った黄鉄鉱は、この鉱山跡から流れてきたんですね。

 

そのあたりに鉱山跡があったという話をネットでちらと見て、いろいろ調べ探しました。あまり名の知られた場所ではないので、とりあえずS鉱山ということにしておきます。まあ記事を見れば、知ってる人は「あああそこか」と見当つくと思いますが。。。

山の中で若干沢歩きあるいは廃道辿りしなければならず、伊豆にしては割と行きにくいこと、あるいはもしかしたら大したものが出ないとかの理由で、人があまり訪れた形跡が見られません。伊豆半島の鉱床を列記した櫻井欽一の「伊豆半島の鉱物」(『伊豆半島 IZU PENINSULA』東海大学出版会、1972年)を見ても、取り上げられていないですね。

あるらしい、という段階からうまく見つけ出せると、テンションあがります。あらかじめ地形図を見て、ここにあるはずだと予想した場所に実際にあると、なおさらです。『ロストワールド』のチャレンジャー教授になった気分が味わえます。まあ、伊豆にはまだ知られていない鉱山あとやポイントなんて、まだまだいくつもありそうな気もしますけれど。

S鉱山では、沢沿いに約250mにわたって坑道やズリが残っています。自分が見た限りでは、坑道跡は、上流域に3~4、中流域に2、下流域に1。中流域の坑道がもっとも大きく、立派でした(下の写真)。ズリは下流域と上流域に2か所ほどありました。沢沿いに一応経路あとも残っていますが、当然のことながら、崩れかけた場所多数。でも、そんな急峻な沢ではないので(2~4メートル程度の落差の棚がいくつかあります)、そんなに苦労はしませんでした。

 

Izusm_01Izusm_02

左:下のズリに打ち捨てられた軌道のレール。
右:一番大きな中流域の坑口。入口のところに登り階段がある。

 

Izusm_03

上流の坑道群。

 

上と下のズリでは、見られる石にかなり違いがありました。

下のズリでは、石英(小さな水晶)、方解石、黄鉄鉱などが中心。写真の五角十二面体の黄鉄鉱は、ここの産です。やっぱり下流で見つかるものより、ずっと大きいしきれいだなあ。母岩はグリーンタフでしょうか。

上のズリでは、多分銀黒を含んだ石英(他の伊豆の金銀鉱山でよく見かけるものです。水晶はほとんどついてない)、黄銅鉱、黄鉄鉱(こちらのは六面体です。一面が湾曲したようなものが多いみたい)、硫砒鉄鉱? 方鉛鉱? それに、ズリの表面が緑色で染まっているところがあります。孔雀石ですね。上のズリには銅が多く含まれているみたいです。孔雀石も結晶はミクロサイズばかりでしたが。

それほど珍しいものを見つけたわけではありませんが(というか、どんな鉱物があるか情報があまりないので、はっきりと確定しにくいです)、ズリによって違いがあるということは、他にもいろいろ出そうな気がします。ここにはテルル、ビスマス系はないのかな? なんとなく亜鉛系の鉱物も出そうな気がする。

機会があれば、もうちょっと枝沢とか斜面など、引き続き探してみたいことろです。

 

2021年2月 8日 (月)

ブーランジェ鉱(山梨県甲州市黄金沢鉱山)

Boulangerite Pb5Sb4S11 硫化鉱物

 

Boulangerite_koganezawam_01

Boulangerite_koganezawam_03

Boulangerite_koganezawam_02

 

細かい毛状の部分がブーランジェ鉱だと思います。一部、水晶の中にも取り込まれているように見えます。

黄金沢鉱山で産出する毛状の金属鉱物といえば、ブーランジェ鉱と毛鉱の二種類がありますが、ブーランジェ鉱と毛鉱はとても似た鉱物で、どちらも鉛(Pb)とアンチモン(Sb)と硫黄(S)を主要成分とした、硫化鉱物です(毛鉱はPb4FeSb6S14)。

これをブーランジェ鉱と判断したのは。。。

まず、TrekGEOの黄金沢鉱山の産出鉱物リスト(https://trekgeo.net/m/0ymn.htm)を見ると、ブーランジェ鉱は載っておらず、毛鉱だけが挙げられています(すぐそばの鈴庫鉱山には、逆に毛鉱が載っておらず、ブーランジェ鉱があげられている)。けれども、同じサイト内の、「日本のブーランジェ鉱の産地」リストの2012年には黄金沢鉱山がでていますので、両方とも産出が確認されていることがわかりました。

松原聰著『鉱物観察ガイド』(東海大学出版会、2008年)の鈴庫鉱山の項内(p.137)に、ちょうど「ブーランジェ鉱と毛鉱」というコラムがあります。それによると、両者は実はスケールがかなり違い、どちらかというとブーランジェ鉱のほうが毛のように細くて、毛鉱のほうがずっと大きく針状であるらしい。

さらに、方鉛鉱があるような鉛の多い環境ではブーランジェ鉱が多く、黄鉄鉱やアンチモン鉱物の多い環境では毛鉱が多いという傾向がみられるそうです。化学式を見ると、ブーランジェ鉱の成分は硫黄>鉛>アンチモン、毛鉱の成分は硫黄>アンチモン>鉛>鉄であることが分かりますね。

写真の右側の大きな光っている金属は方鉛鉱で、その周囲と中にも毛状の鉱物があるので、これはブーランジェ鉱だろう、と判断したわけです。もちろん、あくまでそういった傾向がみられるとのことなので、時には方鉛鉱のそばに毛鉱がついてることだってあるでしょうけど、見た目だけで判断するのは困難らしいので、まあとりあえずはブーランジェ鉱ということにしておいていいのではないでしょうか(適当)。

 

ブーランジェ鉱は、1837年、ノルウェーの化学者タウロウ(Moritz Christian Julius Thaulow: 1812-1850)によって、この鉱物の分析をしたフランスの鉱山技師シャルル・ブーランジェ(Charles Louis Boulanger: 1810–1849)にちなんで命名されました。

アンチモン系の鉱物は、輝安鉱にしてもベルチェ鉱にしても、金属のくせに針状・毛状になることが多いのはなんででしょうね。見た目が面白いので、見つけるとすごくわくわくします。まだ見つけたことのない毛鉱も探してみたいですね。

 

2021年1月17日 (日)

黒鉱?(神奈川県足柄下郡湯河原町新崎川流域)

kuroko(black ore) 硫化鉱物

 

湯河原の山の林道で見つけました。何度か訪れているところなのですが、今までなかった林道が新しく作られていて、その起点の広場で、このあたりで見たことのない石がたくさん転がっているのを見つけました。林道の工事に伴って、別の場所から持ってきたものかもしれません。その林道が続いていると思われる先に、林道を切り開いた際にできたと思われる見覚えのない露頭が見えたので、そこの石かも?(確認はしてません)

真っ黒で、手にとってみると非常に重く、金属のかたまりのように見えましたので、数個拾ってきました。

林道で拾ったものなので、出所もあやしいですし、普段だったら拾わないのですが(最初見た時は実際スルーした)、ちょっと面白い石だったので、ここで取り上げることにしました。

新崎川流域のいくつかの沢で石を探したことがありますが、どこでも硫化鉱物はまったく見たことがありません。面白そうな鉱物といえば、せいぜいかんらん石くらいで。。。(伊豆の海岸で見られるのとそっくりな、穴のあいた軽い火山の噴出物が多い。箱根や幕山の噴火に由来するものだと思いますが)。

 

Kuroko_yugawara_01

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ネオジム磁石に弱くくっつきます。場所によっては、磁鉄鉱のように強くつきます。

1枚目の写真の石を見た時、閃亜鉛鉱かなとも思いましたが、自信なし。ともかく、なんらかの硫化鉱物であることは間違いないとは思いますが。。。ところどころ丸い穴が空いていて、3枚目の写真のように、穴の中には尖がった牙のような結晶(?)があります。葉片状になっている部分もあります。3枚目の写真の、薄青白く球状だったり薄い板状の部分はなんだろう、重晶石だろうか。

 

Kuroko_yugawara_05

 

この球状のかたまり(とその下)は、黄銅鉱に見えますね。こういうさまざまな硫化鉱物(黄銅鉱、黄鉄鉱、赤鉄鉱、閃亜鉛鉱など?)が混ざり合って集合しているような感じ。緻密な黒っぽい金属のかたまりです。

 

Kuroko_yugawara_02

Kuroko_yugawara_03

 

こんな針状・板状の結晶もありました。こちらは金属でなく、透明感があります。

1枚目の針状結晶の先端には、金属の小さな球がくっついていて、かわいい(写真ではちょっと分かりづらいですが)。1枚目にも2枚目にも、先端を斜めに切り落としたような板状の結晶が見えます。これは、石膏じゃないだろうか。

以前書いた、石膏?(山梨県都留市宝鉱山)の石を思い出しました。この真っ黒で重たい鉱石は、もしかしたら黒鉱といわれるものではないだろうか。粒状の黄鉄鉱とか、何となく雰囲気も似てる。

黒鉱とは、海底の熱水噴出孔周辺に沈殿した硫化物からできた鉱石のことで、主に日本海側に多いようです。熱水噴出孔付近にはその熱や噴出物中の化学物質に依存した生物が多く生息しており、特に不思議な生態・形態をしたチューブワームで有名ですね。閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱、四面銅鉱、重晶石や石膏、それに金や銀なども含み、20世紀に入って混ざり合った成分を抽出する技術が確立されてからは、日本では重要な銅・鉛・亜鉛の資源として多く採掘されていた鉱石です(現在ではもう採掘している鉱山はない)。英語でも、「kuroko」といいます。

太平洋側では、伊豆・小笠原の火山フロントの熱水噴出孔により沈殿したものが、海底の黒鉱鉱床として知られていますし、伊豆にもあります。箱根も、伊豆や丹沢と同様、フィリピン海プレートの北進で本州に付加したのだから、黒鉱があってもおかしくはないですよね。

もし林道のために他の場所から持ってきたものであっても、そんな遠くから運んでくるとは思えないし、鉱山近くの林道で、ズリ石を使用している例もあります(錫高野の林道とかそうですよね)。だから、この近くに黒鉱鉱床があるんじゃないかと想像しているのですが、どうなんでしょうか。気になって、夜も7時間くらいしか眠れません。。。今度ここに来たら、見えていた露頭まで行ってみたいと思ってるんですが、いつになるか。。。

正直、こんなところで見つかるとは思いもしなかったもので、情報もなく、経験も知識も足りない自分には同定などできないのですが、とりあえず面白いものであるのは間違いないと思いますので、取り上げてみました。

 

ところで、新崎川は箱根外輪山の白銀山から流れ出ています。特に見栄えもよくない山で、もちろん雪で白く輝くこともめったにない低い山ですが。。。もしかしたらこの名前、そこで採れた石からきてる可能性もあったり?

 

2020年12月29日 (火)

硫砒鉄鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

Arsenopyrite FeAsS 硫化鉱物

 

Arsenopyrite_mukaidanim_01

Arsenopyrite_mukaidanim_02

Arsenopyrite_mukaidanim_03

 

そんなに珍しいものではないですが、こんなにはっきりとしたさまざまな形状の結晶を見られるのは、なかなかないんじゃないでしょうか。

向谷鉱山の石は、叩くと大抵ニンニクか、ニラのような匂いがして、この硫砒鉄鉱がきらめいています。毒なんですけどね。。。農薬や殺虫剤などの原料である亜砒酸は、硫砒鉄鋼と燃料を燃やしてその煙から生産していたのですが、その煤煙が周辺を汚染したり、労働者が被害を受けたりしました。実際、こういった鉱物を触ったあとは、手を洗うようにしています。こういった鉱物の産地から流れている沢の水とかは飲まないほうがいいかもしれません。自分は、鉱山の下の水は飲むことはないです。たとえ特に毒性のある鉱物がでなくても、なんとなく気分良くないので。昔の鉱山の砒素生産地は、すべて撤去処理されていて、現在では採掘生産されていません。

Arsenopyriteは、砒素黄鉄鉱(arsenical pyrites)を短縮した言葉で、1847年、ドイツの鉱物学者グロッカー(Ernst Friedrich Glocker: 1793-1858)によって命名されました。ギリシャ語のarsenikon(雄黄:As2S3)が由来で、古代では、雄黄は顔料、強壮剤、毒薬などとして使用されていたようです。昔から、錬金術ではかなり重要でよく知られていたようで、単体の砒素の発見者は、ドイツの錬金術師マグヌス(Albertus Magnus: 1193-1280)とされています。中国や日本では、毒砂といわれていました。西欧でも中国でも、昔から暗殺などによく使われていたようです。

考えてみると、山に行くと簡単に人が死ぬレベルの毒がありふれていることに気づきました。

この硫砒鉄鉱も割とどこでもありますし、秋であれば、丹沢・道志あたりに行けば必ず見るドクツルタケは、1本食べれば大人でも死ぬレベルだそうです。ドクツルタケは人に採られないで残っているし、真っ白で目立つのです。また、トリカブトも多いです。昔トリカブト殺人事件とかありましたね。花が咲けば簡単に判別できますが、葉っぱだけだと山菜として食べるニリンソウと似ているので、注意が必要です。以前、うちの庭にも、自然に生えていましたw

海であれば、ヒジキにも若干含まれているとか。イギリスでは食べるなと勧告されているそうです。思うに、もともとあのあたりの国の人は、海草を食べる習慣がないんじゃなかろうか。あのあたりの海は海草が豊かそうな気がするし、海に囲まれているくせに、なんか食べ物の偏向がひどくないですか?w というか、アイルランドあたり、じゃがいもに依存しすぎではなかろうか。じゃがいもを使ってない料理ってあるのかなw

お米にも砒素は含まれており、スウェーデンでは、子どもに食べさせるな、大人も毎日食べるなとされているそうです。日本人からすると、シュールストレミングやサルミアッキのほうがよほど「危険」な気がしますがw

まあ食べ物はそれぞれの地方でいろいろな習慣がありますので、こういう冗談のもとにしやすいですね。とはいっても、ちょっとシビレるのがいいとか言いつつフグを食べる日本人は、やっぱりちょっと気狂いじみてる気もしますが。。。

ちなみに自分は、何度かあたってるカキはちょっと苦手><

 

2020年11月 5日 (木)

銅藍(静岡県下田市稲生沢川流域)

Covellite CuS 硫化鉱物

 

Covelliterendaiji_01

 

河津鉱山由来と思われる、銅藍です。

黄銅鉱、黄鉄鉱などのついた石を割ったところ、黒っぽい藍青色が姿を現しました。最初は黄銅鉱の酸化被膜かとも思ったのですが、よく見ると小さいながらも板状になっているようですので、銅藍であろうと考えました。被膜状や時に六角形の美しい姿をとる銅藍は、あこがれの標本のひとつだったので、汚い川から拾った思いもしなかったこの標本にはびっくりしました。

火山などでも産出することがあるようですが、多くの場合、硫化鉱の二次鉱物として生成されます。銅と硫黄だけの化学式がシンプルでいいですね(鉄などが混じる場合もある)。

鉱物の魅力の大きな要因がその色ですが、青から緑になることが多い銅の二次鉱物は、もっとも好きなもののひとつです。藍銅鉱をメタリックにしたような、時に虹色の光彩をはなつ銅藍は、中でも美しさが際立っていると思います。

人(標本)によってイメージは全然違うと思うけれど、自分的には、白から緑に変化する孔雀石は白い花崗閃緑岩とコケの色。青緑のブロシャン銅鉱は、ちょっと深いサンゴ礁の海の色、あるいはユーシンブルー。藍銅鉱は、高山で仰ぎ見る深い吸い込まれそうな紺碧の空。水亜鉛銅鉱は春のぼんやりと霞んだ淡い水色の空。銅藍はもっと人工的、都会的な金属の色ですね。音でいえば、プリペアード・ピアノって感じかな(現代音楽のジョン・ケージが「発明」した、ピアノの弦にいろんなものをはさんで変な音にする奏法or楽器です。ケージ以外あまり使っている人はいないw ポップス系では、デヴィッド・シルヴィアンと、うみぬこPくらいしか知らないw)。

 

それにしても色というのはなんなのでしょうね。鉱物を構成する元素によって明らかに色は変わってきますが、いろんな色の光を当てれば、表面の色もそれに合わせて変わってきます。また錯視のように、色のないところに色を感じることもあります。

色というのは、物体の表面の性質や光の波長などの物理的な性質ではなく、人間の脳による「感覚」であるという考えが最近あるようです。つまり、もともとこの世界には「色」というものは存在せず、人間の脳が作り出す「概念」であるということでしょうか。。。人間がいなければ今あるこの「世界」は存在しないというとおおげさですが、でもこれは実際その通りなので、人間の可視光とはまったく違う波長しか見えない生物しかいなければ、世界の姿はずいぶん違うわけです。あるいは、光(音、匂い、触覚でも)を認識しない生物しかいない世界であれば、世界の姿はまったく異なるし、光で認識する世界はそこでは存在しないということになる(誰も認識できなければ、存在するとはいえない)。

いやそんなことはない、誰も知らなくても存在しているのだ、という人がいるかもしれない。でもそれは、自分たちがそれが「存在」している、と知ってるからそう思うだけではないか。たとえばAという鉱物があって、ある時点でそのAとそっくりなBという鉱物が見つかったとします。Bという鉱物は、発見され「B」という名前がつけられる前から存在したのか? 存在はしていないと考えられます。それ以前にあったのはAだけで、Bという鉱物は「B」という名前がつけられた時点からしか存在しえない。その違いを認識しない段階では、その違いは存在しないのです。違うことを認識できないのではなく、違いそのものが存在していないのです。

ただ逆にいえば、色というものが「概念」であり物体の色はその物体の物理的性質ではない、としても、色で世界を認識する意識が存在する、ということだけで、色は本質である、ということもいえやしないか。。。認識することそのものが世界を決定するのならば、色で鉱物の種類を視認する意識があることによって、色は本質であると「設定」されるのではないか。。。宇宙とは、常にそのように再設定され続けている、定数など存在していない流動的なものなんじゃなかろうか。。。

 

まあ哲学ごっこも飽きてきたのでもうやめますがw 鉱物の色はなんとも不思議で美しいものであることであることよなあ(古文の授業風に)、と思うわけです。。。

 

2020年10月15日 (木)

(硫)テルル蒼鉛鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

テルル蒼鉛鉱 Tellurobismuthite Bi2Te3 硫化鉱物

硫テルル蒼鉛鉱 Tetradymite Bi2Te2S 硫化鉱物

(都茂鉱 Tsumoite BiTe 硫化鉱物)

 

Tetradymite_mukaidanim_01

Tetradymite_mukaidanim_02

 

向谷鉱山の銀白色金属光沢鉱物です。テルル+蒼鉛系の鉱物だと思います。石英に埋もれた感じで、周りに散りばめられている黄色いのは蒼鉛土でしょうか。

候補としては、テルル蒼鉛鉱、硫テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つですが、とりわけ稀産の都茂鉱以外のどちらかではないかということで、タイトルはそのようにしました。

 

向谷鉱山で産出する銀白色金属光沢の鉱物は、ほとんどは硫砒鉄鉱だろうと思います。いろいろなサイトや本を見て、自分なりにその判別方法をまとめてみました(向谷鉱山での場合です。他で通用するかどうかは分からない。蓮台寺川流域では、ちょっと通用しないみたい)。

硫砒鉄鉱もビスマス‐テルル系鉱物も、色はきらきら輝く光沢の強い銀色~鋼色。

硫砒鉄鉱は、表面がでこぼこ、がさがさしていて、荒い感じ。きれいな結晶の表面は割となめらかだが、この場合の銀色は艶消しの銀色になる。ビスマス‐テルル系鉱物は、表面がとてもなめらかな部分を含み、その部分は鏡面のように平ら。

結晶が細かい場合、ひし形の反射光が見えたら、硫砒鉄鉱。

都茂鉱も結晶粒が細かく、脈状に密集することが多い。

蒼鉛土がすぐそばにある場合は、ビスマスを含む鉱物と思われる。

 

少なくとも、硫砒鉄鉱とビスマス‐テルル系鉱物の違いは何となく分かるような気がしますが、それ以上の違いは、なかなか判別できないですね。。。これにヘッス鉱(銀とテルルの鉱物)やアルタイ鉱(鉛とテルルの鉱物)なども加わると、もう無理という感じです。

今回の写真の場合、蒼鉛土らしきものもそばにありますし、表面がとても滑らかなので、ビスマス‐テルル系鉱物、しかも多分都茂鉱ではない、と考えました。ただいくつかの種類のビスマス‐テルル系鉱物がすぐ隣合わせになっていることも多いようですし、特に2枚目の写真は都茂鉱の可能性もあるのではないかとも思うのですが、どうでしょうね。。。見ただけでは分かりませんので、まあここまでが精一杯かな。

 

ところでデジタル鉱物図鑑だと、硫テルル蒼鉛鉱、テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つはどれも硫化鉱物の分類になっているのですが、後二者は硫黄(S)が含まれていないけれども硫化鉱物でいいの? ふと疑問に思って調べてみたら、硫黄のかわりに、砒素、セレン、テルルなどが金属元素と結合した鉱物は、性質が硫化鉱物と似ているのでひとまとめにすることもある、とのこと。

なんとなく分かったような分からないような。。。そんなに種類も多くないので、無駄に分類を増やすよりはまとめちゃったほうが取り扱いやすい、とかそういう感じなんでしょうか。

まあまたひとつ新しいことを覚えたので、良しとしましょう。

 

2020年9月23日 (水)

ヘドレイ鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

Hedleyite Bi7Te3 硫化鉱物

 

Hedleyite_mukaidanim_01

Hedleyite_mukaidanim_02

 

金鶏金山のすぐそばにある向谷鉱山の、ヘドレイ鉱だと思います。

ここでは金属光沢の、特にビスマスとテルルの銀白色の鉱物も多いのですが、ヘドレイ鉱だけは黒くなることが多いようです。「黒色板状の結晶が積み重なった姿となり、へき開もまた板に平行に発達する」「石英に埋没するように産出する」(電子顕微鏡室/Electron Microscope Section、東京大学物性研究所)の説明のままの姿と思われます。

他にもビスマス・テルル鉱物は多く見られましたが、自然金はありませんでした。でも、金よりもビスマス・テルル鉱物のほうが稀産ですし、見つけるとうれしいですねw 判別するのは難しいですが。。。

これを採集した場所ですが、ネットや本で見る向谷鉱山の場所とは違う、ちょっと離れたところだったみたいです。

というのは、普通は稜線の林道から廃林道に入って鉱山跡まで行くらしいのですが、このあたりの林道、うちの車では多分走れないのですよね。林道に非常に弱い車で、目的地目前にしてあきらめるということも時にあったりするので、この時も下の青柳駅に車を置いて、歩いて登りました。地図を見て、目的地までの最短最適のルートを探していくのが好きなので(というか鉱物を集めることよりも、そちらのほうがメインといっていいかも)、まあそれはそれでいいのですが、向谷鉱山までのルートも、結構大変でした。

行ってみるまではどうなっているか分からない廃林道、あるかどうか分からない地形図上の道を探しながら、基本的には地形を読みながら尾根上や沢を歩いたりします。この周辺の地図上には描いてある道も、ほとんどすでに見つけられませんでした。ただ、地形が割となだらかなのと、踏み跡(獣道)やら多分植林の作業道も多く、ヤブも深くないのは助かった。

で、直接下から鉱山跡があると思われる地点まで登りつめ、古い石垣と小さなズリを見つけてそこで採集したのですが、どうやらそこは、メインのズリからちょっと離れた地点だったみたいです。大きめの石を叩いたら、例のニンニクのような匂いがして、割とあっけなく様々な鉱物を見つけることができました。あまり人が来ないところだったのかな。

帰りは芝平峠(オオダオ)に出て、金鶏金山にも寄り下山しましたが、林道の展望が開けたところから、編笠山から蓼科山までの八ヶ岳の大展望もありましたし、登山としても結構面白かったです。

ちなみに、金鶏金山まで普通に登る林道の途中にも八ヶ岳展望台という場所があって、展望図が置いてあったりしますが、木が成長してしまったのか、そこからは何ひとつ見えませんw

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