灰鉄柘榴石(群馬県利根郡川場村川場鉱山)
Andradite Ca3Fe3+2(SiO4)3 珪酸塩鉱物
灰鉄柘榴石の産地として知られる、群馬県川場村の鉱石山で採集したものです。群馬の名山、武尊山の南の端に位置します。
ここは母岩そのものが灰鉄柘榴石であることが多いので、晶洞を見つければ大体透明感のある結晶が見つかります(1枚目の写真みたいなもの)。大きい結晶は透明感がないものが多いですが(2枚目の写真)、すぐ見つかるし、時には数センチのきれいな形状のものがあります。これだけ大きな結晶を割と簡単に見つけることができるのは、今ではここくらいでは?
深緑色の結晶もありました(3枚目)。小さいですが、密集していて、きらめきが強くとてもきれいです。鉱石山というだけありますねぇ! 川場鉱山はスカルン鉱床で、石灰岩とマグマの接触による変成域です。だからカルシウム(石灰)と鉄を主体とした柘榴石。もしかしたら色の違うものは種類が違うのかもしれませんが、まあわかりませんので、ここでもっとも多いらしい「灰鉄柘榴石」としてまとめています。
麓の駐車場(川場スキー場の駐車場)から稜線近くの産地まで、そんなに距離や標高差があるわけではないし、半分以上は林道ですが、片側がずっと伐採地でまっすぐ登る道がずーっと見渡せるので、暑い日差しの日とかだとやたらときついですね。目的地の下の小沢に入ると、登山道っぽくなってきますが、沢はシダ類の天国で、ちょっと壮観ですらあります。
シダといえば、他の植物が生きていけないような重金属を多く含んだ土壌でも生育できるヘビノネゴザ(Asplenium yokoscense Fr. et Sav. 、蛇の寝御座)は、金山草などとも呼ばれ、鉱山などではよく目にできるといいます(別に重金属が生育に必要なわけではない)。金属鉱床の探索には便利で、昔から指標にされていたようなので、見分けができるようになりたいのですが、なかなか難しいらしい。ちょっと写真を検索してみたけれども、他のシダ類とくらべてさっぱり違いがわかりません。普通の人より鉱山跡などに行っているわけで、多分何度も見ているのだろうとは思いますが。。。
ちなみに学名のyokoscenseは横須賀からつけられたものです。明治初期、医師として横須賀製鉄所にいたフランスの植物学者、ポール・アメデ・リュドヴィク・サヴァティエ(Paul Amédée Ludovic Savatier, 1830–91)が横須賀で見つけ、新種として発表しました。東アジアが原産のシダです。
そのシダいっぱいの登山道が水平道になり、鉱山の軌道のレールが出てくるあたりから、道の稜線側の草むらの中に鉱石が散らばっています。もともと大正時代から研磨材の原材料として柘榴石を露天で採掘していたようです(閉山は昭和42年)。レール跡は100m程度のごく短いもので、ズリを運んだらしいのですが、詳しくはわかりません。
でも、今でも鉱石は豊富に残っていて、時にかなり立派な水晶が見つかったりする、とても楽しい場所ですね。
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