緑鉛鉱(群馬県沼田市戸神山)
Pyromorphite Pb5(PO4)3Cl 燐酸塩鉱物等
あまり色がついていないけれど、緑鉛鉱で知られている産地なので、まあ緑鉛鉱だろうと。鉛系の六角柱の結晶はテンションあがりますね、まさに結晶って感じでw(理想的な結晶形はビア樽形) 石英などとは違うちょっと脂っぽい感じの樹脂光沢も、なかなか魅力があります。
語源は、ギリシャ語の「火」を意味するpyrと、「形」を意味するmorphです。熱を加えて溶かして冷やすと、再結晶するところからきています(1813年、Johann Friedrich Ludwig Hausmannによる)。
群馬県の沼田の街の北、鋭角にそびえるきれいな三角の戸神山では、16世紀ごろから金が採掘されていたようです。今でも坑口あとやズリが残り、とりわけ紫水晶で有名です。やっぱり水晶は人気がありますからね。。。探す人の多いきれいな水晶はそうそう見つからないと思いますが、ちょっとした紫石英ならば、そんなに苦労せずとも見つかります。登山道途中の祠の前にも、多分水晶を探しに来た人が置いていったと思われる紫石英がお供えしてありましたw
山の南の神社(駐車場あり)から鉱山跡コースという登山道があって、急な岩場(難しくない)を直登して頂上に登れます。そんなに高い山ではないけれど、場所がよいので、利根川の流れる沼田の市街を見下ろし、上越の武尊山、迦葉山方面から、皇海山、赤城山、子持山、榛名山、浅間山と、非常に景色がよい頂上です。あと、やたらと人に慣れた小鳥がいますねw 人の手に飛び乗ってくる野鳥なんてはじめて見た。
鉱物が探せるポイントは山中いくつもあるみたいですが、自分はよく知らないので、本に載っていた登山道の途中からちょっとズレていける広いズリで、写真の緑鉛鉱は拾いました。
戸神山は信仰の山で、地元では石尊山ともいわれているようです。頂上には石尊山大山阿夫利神社の石塔があります。相州大山の子どもみたいなもので、なんとなく親しみがわきますね。
石尊信仰は相州大山からはじまりました。山岳信仰、修験道などの流れをくむものです。ある意味、はるか古代から続いてきたものが(神道や仏教にその都度取り込まれつつ)ずーっと形を変えてきた姿といえるかもしれません。大山詣りはかなり布教活動が盛んだったようで、大山講というシステムが作られ、そこから全国に広がり、各地に石尊山も作られていきました。戸神山もそのひとつでしょう。
大山詣りは信仰というだけでなく、江戸時代の観光という意味合いも大きかったようで、それも広まりの一因だったのでしょう。江の島、金沢、鎌倉という海沿いの風光明媚な観光地巡りもセットにされることが多かったみたいです(現在の金沢からは想像つきませんね。わずかに八景島だけが形を変えた観光地として残っているだけで)。当時の紀行文などを読むと、信仰というにはずいぶんはっちゃけた感じの人々の姿も垣間見られますw むしろレジャーという側面の方が強かったのかもしれません。
昔の行動や遺物などについて、「信仰」とか「宗教的」とか説明されるものって多いですが(なんだかよく分からないものはとりあえず「宗教的な」という形容詞をつけるみたいな?)、実はそれらの多くは、今のレジャーとか趣味とか気晴らしとか、そういったものだったのかも(昔はそういうものがあまりなかったみたいな固定観念がありませんか?) そういうふうに見方を変えてみると、なんとなく昔の事物や人々に共感がしやすく、理解が深まるような感じがしますね。
(参考:川島敏郎『相州大山信仰の底流―通史・縁起・霊験譚・旅日記などを介して』山川出版社、2016年)
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