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2022年4月29日 (金)

方鉛鉱(山梨県甲州市黄金沢鉱山)

Galena PbS 硫化鉱物

 

Galena_koganesawam_03

Galena_koganesawam_01

Galena_koganesawam_02

 

鉱山跡に行くと割と目にする機会の多い方鉛鉱です。劈開が完全で、割れた面が滑らかできれいな平面になります。立方体を基本とした形に割れやすいので、角がシャープで、とても見栄えがします。鉛の鉱物で比重も大きく、持つとずっしりしており、感触もなにやら特別感がありますね。鏡下では時に大伽藍のような姿を見せます。

この方鉛鉱は黄金沢鉱山の下のズリで採集したもの。上のズリのように洋紅石、ミメット鉱などの珍しいものはないけれど、ずっと広くて鉱石も多く、結構楽しいのですよね。そこらへんに落ちてる石を無造作に取り上げて割ると、大抵きらきらしてきれいだし。方鉛鉱、硫砒鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、孔雀石などが多いようです。最初、上のズリのことを知らなくて、何度か下のズリでいろいろさがしていました。

方鉛鉱は、古代からよく利用されていたために、採掘もされていたようです。その主な利用法は、鉛の鉱石として、さらに、銀の鉱石として、金銀の精錬用の鉱石として、使われていました。

鉛を含む鉱物は他にも白鉛鉱、青鉛鉱、緑鉛鉱、紅鉛鉱、褐鉛鉱などがありますが(色シリーズを並べてみましたw)、産出量はそれほど多くなく、紅鉛鉱にいたっては日本でまだ見つかったことはないのでは。その点、方鉛鉱はいろんな場所で簡単に大量に見つかりますので、鉛の鉱石といえばメインは方鉛鉱です(白、緑、硫酸鉛鉱などは鉱石として採掘されているところもあるようです)。大抵、閃亜鉛鉱も一緒にとれるので、鉛・亜鉛鉱床と一緒くたにして扱われることが多いです。

また、方鉛鉱には銀がごく少量含まれています。特に含有量が多い場合は、銀鉱石として採掘されていました。対馬では、自然銀を採りつくした後は、方鉛鉱を銀鉱石として採掘していたそうです。

さらに、金銀鉱石から金や銀を取り出す灰吹法で使用する鉛の材料としても使われていました。

灰吹法は、非常に古くからある金銀の抽出法で、ウルク文化(BC4000~3100年頃)後期の都市、現シリアのハブーバ・カビーラ南遺跡ですでに行われていた痕跡が残っているらしい。この現在知られているなかで世界最古の都市のひとつとも言われる遺跡は、古代メソポタミアのウルクとほぼ同時期の都市で、同所を手本として作られたとか(ウルクからユーフラテス川の上流約900kmのあたり)。方鉛鉱から銀が抽出された跡が見つかっているようです(近くに銀を多く含んだ方鉛鉱の産地がある)。(詳しく知りたい方は、小泉龍人『都市の起源』(講談社新書メチエ、2016)をどうそ。自分は読んでいないので、とりあえず「らしい」と紹介するしかできません)

日本では大分遅れて石見銀山で灰吹法が行われたのが最初とも、飛鳥時代にはすでにその痕跡があるとも、いろいろ話があるようですが、自分には判断する知識がありません。

いずれにせよ、方鉛鉱と人間のつきあいも、ずいぶんと長いみたいですね。

それにしてもメソポタからとはびっくり。最初にこういう方法を見つけ出した人は、一体どうやったのだろうと、いつも不思議に思います。最初に偶然そうなってしまってから考えたのか。方鉛鉱の割ったばかりの時の輝きを考えれば、どうにかしたら銀が生まれそうと考えるのは、まあ納得できるんですが。というか、そもそも、金や銀に高い価値が生じるという点からして、よく考えれば、それほど自明でもない気がするんですよね(それが当然である世界にいれば、特に不思議にも思いませんが)。だって、宝石は硬いからこそ価値があるとされているのに、金銀は柔らかいですし。。。

知識の発展、技術の開発も大事だけれども、人間にとって一番影響が大きいのは、金銀には価値があるという「価値観」を生みだしたパラダイム創成であるのかもしれません。(「パラダイム」という言葉はあまり使いたくないのだけれど)

 

資料:
冶金の曙」http://homepage1.canvas.ne.jp/e_kamasai/Metallurgy/yakin/index.html
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構自然起源放射性物質データベース」https://www.nirs.qst.go.jp/db/anzendb/NORMDB/1_datasyousai.php

 

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