翠銅鉱?(茨城県城里町錫高野)
Dioptase? CuSiO3・H2O 珪酸塩鉱物
錫高野の、稜線そばのズリで見つけました。囲われている崩れた坑口のそばのズリです。ここはよくトパズや、孔雀石なども見つかるところで、面白いんですよねぇ。
まるでペンキを塗ったかのような光沢をした鮮やかなシアンの鉱物で、ぱっと見、これは何だ!と目を奪われます。濃い緑の部分は、ブロシャン銅鉱のように見えます(写真には出ていないが、他にもちょっと違う色合いの水色の部分がある。)。
色的にも銅の二次鉱物だし、水亜鉛銅鉱か変わった形の珪孔雀石かなあ? と思って、希塩酸をかけてみてもまったく何の反応もしないし(多くの銅の二次鉱物は反応する。水亜鉛銅鉱や孔雀石なら泡立つ)、非常にきれいで目立つものであるにもかかわらず、一体なんなのか、全然分からなかったんですよね(濃い緑の部分は希塩酸で溶け、水色の部分は溶けずに色が抜けて白くなる)。一見もろそうなんですが(銅の二次鉱物はもろいものが多い)、いざ削ってみようとすると思ったより硬く、裁縫用の針でもほとんど削りとれません。
でも最近ネット上で、伊豆の河津鉱山で採集したという、翠銅鉱の写真を見つけました。不明鉱物として持ち込まれたものを分析したら翠銅鉱だったという話らしい。
翠銅鉱 (東京大学物性研究所 電子顕微鏡室/Electron Microscope Section マクロ写真館 日本の鉱物)
これ、まったく同じものに見えませんか? 外形も、色も、そっくりそのままに見える。
翠銅鉱ならば、希塩酸でなんの反応もなかったというのもわかります。組成としても、ここにあるものばかりで、妙な元素が必要というわけでもないので、まあおかしくはないといってもいいかな。。。モース硬度も5なので、結構硬めなのもうなずける。
ということで、(?)付きではあるけれども、「翠銅鉱」として、ここにも載せてしまいます。
普通の(海外産標本の)翠銅鉱とは、もう色も結晶形もまるで違いますね。普通翠銅鉱というと、エメラルドグリーンの透明感のある結晶で(実際昔はエメラルドと間違えられたらしい)、硬度こそ宝石とするには低いものの、非常にうつくしい鉱物です。もしこれが実際に翠銅鉱だとしても、目で見てわかるわけないですよね。。。Dioptaseで検索しても、このような見た目の翠銅鉱は、上記のサイトの写真1枚以外はまったく出てきません。
日本で産出するところはどうやらほとんど知られていないようです。調べられたのは、結局上記サイトの河津鉱山と、島根の銅ヶ丸鉱山だけでした。これは多分海外産との見かけの差異によるものではないでしょうか。売られているきれいな結晶と全然違うものを見つけても、分析しないと翠銅鉱だとは分からないですし、大学の研究室のようなところでない限り、分析なんてできませんから。。。実際には、結構あるのかもしれません。主に銅鉱床の酸化帯で生成されるということで、孔雀石や珪孔雀石があるところには、まれにあるのかも? どのような条件の違いで、同じ材料から違う鉱物が生成されるのか、詳しいことは自分にはよくわかりません。
先ほども書いたとおり、はじめはエメラルドと間違えられていましたが、エメラルドと違って劈開があります。1797年、フランスの鉱物学者アユイによって、劈開面の可視性を意味して、ギリシャ語の「~を通して」を意味する「dia」と、「見ること」を意味する「optasia」から命名されました。
劈開面のクラックが透けて光を反射し、きらきらきれいなのだそうですが、写真のものはそれを彷彿とさせるようなところはありません。日本のどこかに、海外産のようなきれいなDioptaseはないもんでしょうかね。。。
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