三浦半島三崎層(神奈川県三浦市盗人狩)
三浦半島南端は、荒々しい海岸線が続く、神奈川随一の風光明媚な土地です。特に三崎層の露頭が多い城ヶ島や観音崎付近は、地質学の巡検なども多いようで、観察ポイントもあちこちにありますし、観光地としても有名ですね。
でも純粋に自然の景観として見た場合、宮川湾近くの盗人狩(ぬすっとがり)付近が、圧倒的にすばらしいと思います。行きにくさ(道がちょっと分かりにくい)、海岸沿いの遊歩道があまり整備されていない、食べたりする場所が定食屋1軒しかない、などなどあって、観光客もとても少ないので気持ちいいし(人は釣りが9割)、ねこもいるし。。。大好きな場所なんですよねぇ。もちろん、地学的な見どころもたくさんあるので、ここで簡単に紹介することにします。
宮川湾あるいは毘沙門湾から歩いて行くことになります。宮川湾には有料駐車場あり。1000円ちょっとかかります。まあ城ヶ島の広い駐車場も全部有料になってしまったし、これは仕方ないですかねぇ。。。そういえば、城ヶ島の橋はいつの間にか無料になっていました。最近かな?
三崎の海岸では、白い層と黒い層が相互になっているさまをどこでも見かけます。大抵、白い層は柔らかいので波に削られてへこみ、黒い層がとんがっていますね。白いのは、陸上起源のシルト岩・砂岩。黒いのは、火山由来の凝灰岩・スコリアです。延々と繰り返しが続いているように見えるので、はるか長い時間、堆積し続けたもののようにも見えますが、実は同じ地層が何度も繰り返されて露出しています(デュプレックス構造)。
ざっと1200万~400万年前、当時のトラフの海側斜面に堆積し、プレート沈み込みの際に陸地に付加したものとされています。フィリピン海プレートでは最も新しい付加体のひとつです。
この辺でちょくちょく目にする、シルト岩中の茶色い団塊状のノジュール。鉄分が集まったものだそうです。断面には、成長の年輪のようなものも見えます。やはり核となる何か(化石とか鉱物とか、あるいは火山豆石のようなもの?)があって、そこから成長していくのでしょうかね?
シルト岩上に残された、生痕化石。多分ウニの這った痕ではないかと思いますが、化石は全然わからないので。。。
三浦の海も潜ると面白いのですが、東京湾側はおすすめしません。水がはっきり汚いです。盗人狩あたりも、東京湾からの水が若干混じっているのか、ちょっと透明度が落ちます。三浦半島の相模湾側(城ヶ島から西側、荒崎あたり)が一番水がきれいですね。うにはもちろん、色鮮やかなウミウシ、何だかよくわからないものもいっぱいいますw
だだっぴろい海蝕台上のポットホール。なぜかこのあたりだけたくさんありました。しかも3列くらいに直線状に並んで連なっています。他の場所と違いがあるように見えませんが、どうやってできたんでしょうか。
三浦では、プレート由来の大地震が起きるたびに、1~2m程度隆起しています(最近では関東大地震、元禄地震など)。ただ、氷期・間氷期の海面上昇・下降などの影響もあるので(最近では縄文海進などが有名ですね)、海蝕台がどのように形成されていったかは、単純ではないと思いますが、昔はここも海の水で洗われていたことは確かです。
海岸沿いの海蝕洞群。
ところで盗人狩という地名ですが、昔泥棒がここの崖の上に追い詰められ、その断崖と打ちつける波の凄まじさに足がすくんであっけなく捕まってしまったことからつけられたそうです。まあ気持ちはわかる。
写真のコンクリートは歩道(関東ふれあいの道)ですが、海岸沿い、特に道になっていないところも多いです。一部、満潮で波が高いと崖の中腹をへつるしか進めなくなるようなところもあって、なかなかワイルドな歩道ですよ。
この黒いところは、火山の噴出物です。どうやら昔はかなり近くで噴火があったようなのですが、その場所はわかっていません。
この写真の右側が、この地層が積もった時の地面の下側です。噴出物が海の中で積もる際(または土砂崩れなどで海中に巻き上げられたあと)に、より重い粗粒子が先に海底に沈み、時間が経つにしたがって、軽い細粒のものが積もっていったため、このようにきれいに分布分けされました(級化層理)。
ぐちゃぐちゃに波打った層。スランプ構造といいます。堆積してまだしっかりと固まっていない海底が、地すべりなどで崩れてそのまま固まった痕で、いうなれば海底地すべりの化石ですね。三浦の海岸ではあちこちでスランプ構造が見られます。それだけ堆積物が多く、傾斜が激しかった、地滑りの原因となる地震が多かったということが分かります。
考えてみれば、いまでもトラフの斜面ではこういう現象が現在進行形で起こっているということになりますね。
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