くさび石(チタン石)(山梨県道志村道志川流域)
Sphene(Titanite) CaTi(SiO4)O 珪酸塩鉱物
以前取り上げた道志の長石(長石類(山梨県道志村道志川流域))にくっついていた、小さいけれども美しい結晶。最初に見つけた時は、かなりインパクトがあるその姿に、思わず声が出ました。
よく探すと、あちこちに点在しています。きれいな形の結晶だけど一体なんだろうとちょっと悩みました。1枚目のきれいな形の結晶は、デジタル鉱物図鑑の神奈川山北産の写真とほぼ同じ形。この写真のおかげで、はっきりとくさび石であると確定することができました。色は緑よりの褐色。くさび型が短く寸づまったようなかわいらしい形で、普通のくさび石がとんがってツンツンしてるのと比べるとまろやかな感じで、ちょっと天然ドジっ娘風味を感じます(何を言っているのかわからない)。
輝きが強いし、一瞬、もしかして道志にトパズが? とか夢を見かけましたw 色もなんかそれっぽいですよねぇ。表面についている黒緑は、緑泥石だろうと思います。
2枚目の写真は、角がシャープな結晶が3つ並んでいて、水晶よりも輝きが強く、なかなか目を引く様子です。3枚目の右のものは、確かにくさびのような形ですね。左の結晶は水晶かな? 色合いから、こちらもくさび石のような気もしますが、よくわからない。
以前やはり道志(今回とは違うポイントの産)の長石の上に、石英や緑簾石ではない黄色っぽい透明な結晶がついているのを見て、これはなんだろうと思った記憶がありますが、それもどうやらくさび石だったようです。どうやら道志では割と見られるもよう。
くさび石(スフェーン:Sphene )は、ギリシャ語のσφήνα(sphina)が語源で、シンプルに楔(くさび)のような形からきた名称です。チタン石も、単純にチタンを含んでいるという程度の意味でしょう。モース硬度は5~5.5でそんなに硬いわけではないですが、屈折率が高く、透明度が高いものはダイヤモンドのような輝きがあるために、宝石としても扱われます。一瞬トパズかと思ったのも、この光沢のせいかな? 宝石としては、スフェーンと呼ばれることが多いようです。ただ、立派なものは別として、存在自体はそれほど珍しいものではなく、スカルンやペグマタイトでは割とありふれた鉱物です。
チタンは、地殻中の金属元素としてはアルミニウム、鉄、マグネシウムに次いで多いと考えられていますが、利用できる形で取り出すのが難しいため、人間がチタンを金属として使いだした歴史はそんなに長くありません。チタン鉱石として使われるのはチタン鉄鉱やルチルで、最初にチタン元素が報告されチタンと命名されたのも、この二つの鉱物からでした(1795年、プロイセンのマルティン・ハインリヒ・クラプロートによる)。ギリシャ神話のティーターン(神々により地底に封じ込められた)から命名されました。なかなかいい名前ですが、くさび石のほうがわかりやすいかな?
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