黄鉄鉱(栃木県日光市足尾町足尾銅山)
Pyrite FeS2 硫化鉱物
足尾銅山の黄鉄鉱です。
足尾銅山は、日光のほど近く、渡良瀬川の上流にある備前楯山の地下に広がっています。その坑道の総延長は1200km(東京・博多間と同じ!)とか。ちょっと想像を絶する規模ですね。まさに巨大地下迷宮。足尾の町の宿屋では、きっとみんな馬小屋に泊まって、時々灰になったりしてるに違いないのだw
備前楯山のあちらこちらに坑口、鉱山施設跡が残っていて、一部の坑道(通洞坑)は観光用に電動トロッコに乗って入ることもできますが、多くの施設跡は非公開、外見のみ道路から見えます、なんてのばかりで、観光地としてはちょっと中途半端かなぁ。まあ自分は山自体が目当てなのでいいんですけどね。。。富岡製糸場くらいに整備されればまた違うんでしょうけど。
明治時代には日本の銅の40%がここで掘り出され、日本の近代化を支えましたが、そんな光の部分が大きい分、闇の部分はさらに大きいのが鉱山。公害、劣悪な労働環境、強制労働、採算・国益最重視などといった言葉がちらつきます(普通足尾銅山といったら学校で習った田中正造のことを思い出すのではないでしょうか)。文化遺産としてプッシュしにくいという面もあるのかもしれません。備前楯山の頂上から周囲の山を見渡すと、今でもところどころ茶色くハゲたところが目につきます。精錬所から排出される亜硫酸ガス、燃料としての山林の乱伐などで、当時は木一本ない荒野が広い範囲にわたっていたようですね。ボランティアなどによる植林活動で、今ではかなり森が復活してきているそうです。
この黄鉄鉱を採集したのは、備前楯山の西南部・文象沢。周辺には江戸時代から採掘されていた小瀧抗、選鉱場跡、火薬庫などがあり、当時は鉱山の中心地だったことがうかがわれます。今では道路を猿が我が物顔で歩く静かな山中ですが。。。沢の入口付近にも、鉱山時代の小瀧小学校、第三中学校跡、沈殿池跡などがあります。沢の右岸に林道が通っていますが、残っているのは部分のみ。上流に上るほど、鉱石が多くなっていきます(あまりツメませんでしたけど)。特に珍しいものは見つからなかったけれど(あったのは黄銅鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱、石英、自然銅など)、よく探せば他にも見つかるのかなぁ? でもさすが足尾なだけあって、けっこう立派な結晶が見られます。
鉱山図を見ると、大黒ヒ、上流部の光盛ヒなど、沢沿いに鉱脈が走っていて坑口もいくつかあったようなので、もうちょっとちゃんと探してみたいかな。鉱石が多く転がっている沢の様子を見るに、ズリもあちこちに残ってるみたいですし。
ちなみに自分が行った時には、備前楯山の反対側(北東)の本口沢は、橋のゲートが閉ざされていて、入れませんでした。行ってみたかったんだけどな。。。ただそちらは、鉱山町の廃墟がかなりいい雰囲気で、鉱山神社の参道の階段を、野うさぎが駆け上っていきましたよ。好きな人にはたまらないかもね。
文象沢。正面の石垣の上が林道。
大黒ヒの坑口と思われる。入口を山の神さまで塞いでいる。
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