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2021年6月に作成された記事

2021年6月29日 (火)

蛍石(茨城県城里町錫高野)

Fluorite CaF2 ハロゲン化鉱物

 

Fluorite_suzukoya_01

Fluorite_suzukoya_02

Fluorite_suzukoya_03

Fluorite_suzukoya_04

 

よく知られた錫高野の蛍石です。

高取山東の沢の上流、左岸に露頭があります。有名どころなので、もうきれいに整った結晶は滅多に見つからないのではないかと思いますが(大きいものであれば、劈開が強いので立方体あるいは八面体にきれいに割れるはず。。。でもチャレンジしたくないw)、淡い緑や紫がきれいです。青く光っている2、4枚目の写真は、それぞれ1、3枚目に長波(365nm)の紫外線をあてたもの。加熱しても光るそうですが、試したことはありません(破片が飛び散るらしい)。

よくきれいな結晶が売られているのを目にしますが、分離結晶の場合はほとんど加工されたものではないかと思います。日本では加工するのに十分なほどの大きな固まりは産しないです。最大の産出国は中国です。ちなみに漢方でも(紫色の)蛍石が使われるのですが、なぜか紫石英という名称になっています(昔はアメジストだったらしいが)。蛍石のほうが手に入りやすかったからですかね? 中国の南部では、紫色の方解石を、「紫石英」として使っているところもあるようです。つまり、〈紫色の透明な石〉という「概念」が必要だったということでしょうか。成分ではなく、視覚的な形象による分類を基本にしているということで、西洋文明とはまったく異質なものを感じますね。おもしろい。

蛍石は古くから鉄鉱石の融剤として使われてきたため、「流れる」という意味のラテン語「fluere」から名付けられました。さらにこの蛍石を由来として、蛍光現象(fluorescence)、フッ素(fluorine)などが名付けられました(なお、エネルギーを受けた物体の発光現象のことをルミネセンス〈luminescence〉とも言いますが、その違いはちょっとあやふやなところもあって面倒なので、ここではスルーします。興味ある方は自分で調べてね)。

 

先日全14話完結した「Vivy -Fluorite Eye’s Song-」というアニメがありました。AI(アンドロイド)の人類への反逆にいたる過程、そしてそれを阻止しようとする未来から来たAIと、史上初の自律人型AI歌姫の100年にわたる物語でしたが、最近珍しい、純粋なSFオリジナルのアニメでした。このサブタイトル「Fluorite Eye’s Song」の「Fluorite」というのはもちろん、蛍石のことです。

蛍石は色収差が非常に小さいので、高級な光学製品にレンズとして使われています(現在ではほとんど人工蛍石ですが)。蛍石のモース硬度は4なので、ガラスよりも加工もしやすいのかな?(ガラスは5~6)

アニメでは頻繁にAIの目の精密なアップ画像が使われていて、そこだけ作画が変わるので非常に印象的でしたが、つまりこの目は蛍石のレンズだったんですね(というか、Fluorite Eyeという言葉で、人間ではない、AIを象徴してたってことですけど)。人間の目は「水晶体」。水晶とフローライトというふたつの鉱物で表現しているのは、その類似性なのか差異だったのか、なかなかうまい表現だと思います。よい作品だったので、興味あったらぜひ。

 

2021年6月18日 (金)

黄鉄鉱(栃木県日光市足尾町足尾銅山)

Pyrite FeS2 硫化鉱物

 

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足尾銅山の黄鉄鉱です。

足尾銅山は、日光のほど近く、渡良瀬川の上流にある備前楯山の地下に広がっています。その坑道の総延長は1200km(東京・博多間と同じ!)とか。ちょっと想像を絶する規模ですね。まさに巨大地下迷宮。足尾の町の宿屋では、きっとみんな馬小屋に泊まって、時々灰になったりしてるに違いないのだw

備前楯山のあちらこちらに坑口、鉱山施設跡が残っていて、一部の坑道(通洞坑)は観光用に電動トロッコに乗って入ることもできますが、多くの施設跡は非公開、外見のみ道路から見えます、なんてのばかりで、観光地としてはちょっと中途半端かなぁ。まあ自分は山自体が目当てなのでいいんですけどね。。。富岡製糸場くらいに整備されればまた違うんでしょうけど。

明治時代には日本の銅の40%がここで掘り出され、日本の近代化を支えましたが、そんな光の部分が大きい分、闇の部分はさらに大きいのが鉱山。公害、劣悪な労働環境、強制労働、採算・国益最重視などといった言葉がちらつきます(普通足尾銅山といったら学校で習った田中正造のことを思い出すのではないでしょうか)。文化遺産としてプッシュしにくいという面もあるのかもしれません。備前楯山の頂上から周囲の山を見渡すと、今でもところどころ茶色くハゲたところが目につきます。精錬所から排出される亜硫酸ガス、燃料としての山林の乱伐などで、当時は木一本ない荒野が広い範囲にわたっていたようですね。ボランティアなどによる植林活動で、今ではかなり森が復活してきているそうです。

 

この黄鉄鉱を採集したのは、備前楯山の西南部・文象沢。周辺には江戸時代から採掘されていた小瀧抗、選鉱場跡、火薬庫などがあり、当時は鉱山の中心地だったことがうかがわれます。今では道路を猿が我が物顔で歩く静かな山中ですが。。。沢の入口付近にも、鉱山時代の小瀧小学校、第三中学校跡、沈殿池跡などがあります。沢の右岸に林道が通っていますが、残っているのは部分のみ。上流に上るほど、鉱石が多くなっていきます(あまりツメませんでしたけど)。特に珍しいものは見つからなかったけれど(あったのは黄銅鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱、石英、自然銅など)、よく探せば他にも見つかるのかなぁ? でもさすが足尾なだけあって、けっこう立派な結晶が見られます。

鉱山図を見ると、大黒ヒ、上流部の光盛ヒなど、沢沿いに鉱脈が走っていて坑口もいくつかあったようなので、もうちょっとちゃんと探してみたいかな。鉱石が多く転がっている沢の様子を見るに、ズリもあちこちに残ってるみたいですし。

ちなみに自分が行った時には、備前楯山の反対側(北東)の本口沢は、橋のゲートが閉ざされていて、入れませんでした。行ってみたかったんだけどな。。。ただそちらは、鉱山町の廃墟がかなりいい雰囲気で、鉱山神社の参道の階段を、野うさぎが駆け上っていきましたよ。好きな人にはたまらないかもね。

 

Ashiom_01
文象沢。正面の石垣の上が林道。


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大黒ヒの坑口と思われる。入口を山の神さまで塞いでいる。

 

2021年6月10日 (木)

石墨(茨城県北茨城市華川町花園)

Graphite C 元素鉱物

 

Graphite_hanazono_01

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前回の北茨城花園の含ストロンチウム方解石の中に、黒いほこり粒のようなものがぽつぽつとついているのを見つけました。下の写真のように、白い方解石中にうす青い脈が走っていて、特にそこに集中して見られました。ルーペでのぞいてみると、金属光沢の黒い六角形の薄板状結晶。非常に小さいですが、石墨の自形結晶です。

TrekGEOの花園鍾乳洞のページに、産出鉱物として石墨が載っていました。ネット上では、TrekGEO以外ではここの石墨のことは全然見つけられなかったので、どんなふうに出るのかわかりませんでしたが、こういう産状なんですね。石灰岩の接触変成域の晶質石灰岩ということは、有機物由来でしょうか。

 

Graphite_hanazono_03

 

元素記号は炭素C。ダイヤモンドと同じですが、原子の結合の仕方が全然違います。雲母のように層状の構造をもち、層と層の間の結合が弱いため、薄くはがれるような劈開があります。ダイヤモンドは3次元的に原子が結合しているので硬いのですが(モース硬度10)、石墨はモース硬度1~2と、もっとも柔らかい鉱物のひとつです。極端すぎw

鉛筆の芯は基本石墨が原料(のひとつ)ですが、人工的に合成されたもの、精製して純度を高めたもの(つまり工業用に使用される場合などということか)は「黒鉛」と呼ばれ、天然のものは「石墨」と呼ばれています。ただし名前を使い分けているのは日本だけで、英語ではどちらもGraphite。

「黒鉛」という名前ですが、もちろん鉛はまったく含まれていません。昔、元素を分析できなかったころは鉛を含むと考えられ、ラテン語で「鉛」を意味する「plumbum」と呼ばれていました。そこからつけられた和名が「黒鉛」で、それが今でもそのまま使われ続けているため、こんなややこしいことになってしまいました。

ちなみにGraphiteはギリシャ語で「書く」を意味するgrapheinからきています。文法のグラマーや、グラフ(表)と同系統の言葉ですね。

鉛筆の芯は、粉末にした石墨(黒鉛)と粘土を混ぜて作りますが、その比率で硬さを調節します。粘土が多いほど硬くなります。層状の原子構造=滑りやすさ、が、鉛筆の書き心地の秘密のようですね。ちなみに色鉛筆は粘土ではなく、染料と滑石、蝋(これでさらになめらかさを出す)などをまぜるそうです。

 

石墨を筆記用具とする方法が広まったのは、16世紀、良質な石墨鉱床が発見されたイギリスから(カンバーランドのボローデール鉱山)。当時は石墨を細長く切って、糸を巻いたり板ではさんだりして持ち手を作り、そのまま使っていました。ところが、これまでになかったこのお手軽な筆記用具が広まると、良質な石墨が貴重品となり、値段もどんどんあがっていくことに。。。

さらにそんな中、イギリスとの戦争(ナポレオン戦争)が起こり石墨が手に入らなくなったフランスで、画家で化学者でもあったジャック・ニコラス・コンテが、石墨の粉末と粘土をまぜて焼き固める、現在でも使われている工法による鉛筆を開発しました(1795年)。石墨の小さな欠片を無駄なく有効利用できるだけでなく、硬さも自由に調整できる画期的な発明です。まさに必要は発明の母(ちなみにこの言葉、出典は『ガリバー旅行記』なんだって!)。もちろん絵を描くときに使うコンテは、このコンテの作った鉛筆からきています。

ごく小さな六角形の粒から、どんどんと歴史が広がって大事になっていくのが楽しいですねぇ。

 

2021年6月 8日 (火)

含ストロンチウム方解石(茨城県北茨城市華川町花園)

Strontium-rich Calcite (Ca,Sr)CO3 炭酸塩鉱物等

 

Calsite_hanazono_02

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ストロンチウムを含んだ晶質石灰岩(大理石)、方解石です。ストロンチウムによって、うす青い色がついているといいます。ストロンチウムを含む鉱物といえば、天青石、糸魚川石なども、やはりこんなうす青い色合いですね(糸魚川石なんて実際に見たことはないですけど)。そんなにはっきりした色ではないのですが、だからこそ、とても美しいです。

天青石や方解石では青い色のもとになっていますが、炎色反応では深紅で、花火の赤にも使われるそうです。

ストロンチウムというと、原発の事故などで放出された放射性同位体・ストロンチウム90が有名かもしれません。ウランの核分裂で生成される代表的な放射性物質がストロンチウム90で、カルシウムと化学的な性質が似ているので、体内に取り込まれると骨などに集まって留まる傾向があり、危険であるとされています(方解石に含まれやすいとか関係があるかどうかは知らない)。現在でも、大気圏内核実験や原発事故などの影響で、わずかな量が大気圏内に残留しています。

当然のことながら、鉱物に含まれるストロンチウムや花火などのそれは、放射性ではありません。ペグマタイトの放射線のほうがはるかに高いでしょう。花園のペグマタイトには、燐灰ウラン鉱、モナズ石、ジルコンなどの放射性鉱物が含まれているので。いちいち心配していても仕方ありません。放射線もウイルスも自然界に普通に存在するものですからね。杞憂というものです。

(ところで、「杞憂」という言葉は中国の『列子』に出てくる話ですが、杞の国のとっても心配性の人が空が落ちてこないか心配しているのをみて、ある人がそんなあり得ないことを心配してもしょうがないと説いて聞かせたことからきています。でも実際にはこの先には続きがあって、その話をきいたまた別の人が、あり得ないということはない、もしかしたら空が落ちてくるかもしれないぞ、といったとか。。。で、さらに最後に列子が、落ちようが落ちまいがまあどうでもいいんじゃないの、としめくくりますw だから、実際には「杞憂」という言葉では、その話題を締めくくることはできないのだw)

 

福島との県境にほど近い北茨城の花園山(798m)は阿武隈高地に属し、基本なだらかな山体ですが、花園川の浸食によって渓谷が造られ、滝場も多く見られます(だから沢は思いのほか険しく、気軽に遡行はできない感じ)。周辺はペグマタイトがとても豊富な地域ですが、花園鍾乳洞はその中心部から若干離れたところにあります。ペグマタイトの露頭があちこちにあり、気になってなかなか先に進めない楽しい道中ですが、最後、道はヤブの中に消えます。昔は行きやすかったみたいですが、現在ではトゲトゲの草がいっぱいで、半そでだと傷だらけになりますよ。。。夏には行きたくないかなw

 

Hanazonos_01
ヤブに埋もれた花園鍾乳洞。入口はとても狭い。

Hanazonos_02
鍾乳洞の前には、大きな晶質石灰岩がごろごろ落ちている。

 

多分、次に続きます。

 

2021年6月 1日 (火)

くさび石(チタン石)(山梨県道志村道志川流域)

Sphene(Titanite) CaTi(SiO4)O 珪酸塩鉱物

 

Titanite_doshi_01

Titanite_doshi_02

Titanite_doshi_03

 

以前取り上げた道志の長石(長石類(山梨県道志村道志川流域))にくっついていた、小さいけれども美しい結晶。最初に見つけた時は、かなりインパクトがあるその姿に、思わず声が出ました。

よく探すと、あちこちに点在しています。きれいな形の結晶だけど一体なんだろうとちょっと悩みました。1枚目のきれいな形の結晶は、デジタル鉱物図鑑の神奈川山北産の写真とほぼ同じ形。この写真のおかげで、はっきりとくさび石であると確定することができました。色は緑よりの褐色。くさび型が短く寸づまったようなかわいらしい形で、普通のくさび石がとんがってツンツンしてるのと比べるとまろやかな感じで、ちょっと天然ドジっ娘風味を感じます(何を言っているのかわからない)。

輝きが強いし、一瞬、もしかして道志にトパズが? とか夢を見かけましたw 色もなんかそれっぽいですよねぇ。表面についている黒緑は、緑泥石だろうと思います。

2枚目の写真は、角がシャープな結晶が3つ並んでいて、水晶よりも輝きが強く、なかなか目を引く様子です。3枚目の右のものは、確かにくさびのような形ですね。左の結晶は水晶かな? 色合いから、こちらもくさび石のような気もしますが、よくわからない。

以前やはり道志(今回とは違うポイントの産)の長石の上に、石英や緑簾石ではない黄色っぽい透明な結晶がついているのを見て、これはなんだろうと思った記憶がありますが、それもどうやらくさび石だったようです。どうやら道志では割と見られるもよう。

くさび石(スフェーン:Sphene )は、ギリシャ語のσφήνα(sphina)が語源で、シンプルに楔(くさび)のような形からきた名称です。チタン石も、単純にチタンを含んでいるという程度の意味でしょう。モース硬度は5~5.5でそんなに硬いわけではないですが、屈折率が高く、透明度が高いものはダイヤモンドのような輝きがあるために、宝石としても扱われます。一瞬トパズかと思ったのも、この光沢のせいかな? 宝石としては、スフェーンと呼ばれることが多いようです。ただ、立派なものは別として、存在自体はそれほど珍しいものではなく、スカルンやペグマタイトでは割とありふれた鉱物です。

チタンは、地殻中の金属元素としてはアルミニウム、鉄、マグネシウムに次いで多いと考えられていますが、利用できる形で取り出すのが難しいため、人間がチタンを金属として使いだした歴史はそんなに長くありません。チタン鉱石として使われるのはチタン鉄鉱やルチルで、最初にチタン元素が報告されチタンと命名されたのも、この二つの鉱物からでした(1795年、プロイセンのマルティン・ハインリヒ・クラプロートによる)。ギリシャ神話のティーターン(神々により地底に封じ込められた)から命名されました。なかなかいい名前ですが、くさび石のほうがわかりやすいかな?

 

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