軟マンガン鉱(静岡県下田市高根山鉱山)
Pyrolusite MnO2 酸化鉱物
伊豆下田の高根山鉱山で見つけた、グラデーションがうつくしい微細な水晶(玉髄)。
表面に、なんか膜状のコケのようなものがついていました。こちらも色の変化がおもしろいです。
左上の黒っぽい部分を拡大してみると。。。
金属的な光沢の、黒っぽい鉱物。多分軟マンガン鉱ではないかと思います。
表面がいろんな色に変化しているのはあんまり見たことがないけれど、酸化して被膜がついているんでしょうか。
こんなのもありました。表面が金属光沢できらきらしている腎臓状集合の裏側が見えていて、炭のように黒くくすんだ光沢のない様子がわかります。
高根山鉱山では、やはりマンガン系の鉱物で、ありふれた軟マンガン鉱より珍しいバーネス鉱というのもでるらしいですが、この裏側のような、地味な感じみたいです。
こんな結晶っぽいところもありました。細かい柱状結晶が集合しているように見えます。そういえばすぐ近くの寝姿山では、ラムスデル鉱の針状あるいは柱状結晶がありました(ラムスデル鉱(静岡県下田市寝姿山))。直線距離で1kmほどしか離れていません。
どうもマンガン鉱物というのは、人間がもっとも古くから使用してきた鉱物である可能性があるようです。
現生人類種との関係はまだ明確ではないけれど、ヨーロッパにいたネアンデルタール人は、マンガンを顔料とし、また粉末にして火をつけるための材料として使用していたようです。現生人種が欧州に到達するはるか昔、ネアンデルタール人が暮らしていたというフランスのペシュ・ド・ラゼ洞窟から、クレヨンのような二酸化マンガンの固まりが見つかっています(ナショナルジオグラフィックマガジン2008年10月号 ネアンデルタール人 その絶滅の謎)。
なるほど、軟マンガン鉱は触るだけで指が黒くなるから筆記用具になりますね。マンガン鉱床には大抵どこにでもあるありふれた鉱物で、手に入れるのも比較的容易ですし(といっても、何も情報がないところからいざ探すとなったらえらく大変ですけど)。あるいは、描ける便利な黒い石が採れるから、そこに住むようになったということもあるのか(ペシュ・ド・ラゼ洞窟で見つかったマンガンがどこで採取されたものかは知りませんが)。
ネアンデルタール人の系統が現生人類と分岐し分かれた時期はよくわかっていないようで、説によって何十万年もの差がありますが、先に故郷のアフリカから広い新世界に向けて出発した先輩であることは間違いないようです。約4万5000~3万年前にはヨーロッパあたりで両者の分布域が重なっていたので、もしかしたら何らかの接触があって、現生人類もマンガンを使っていたかもしれません。混血があったという説もあるみたいです。
その後、ネアンデルタール人は絶滅したとされます。その理由は分かっていません。
ネアンデルタール人というと現生人類より文化的に劣っていたと考えがちですが、どうしても身びいきになってしまうもので(自分が一番優れていて特別なんだと思いたいですよねw)、もしかしたら逆にこちらがいろいろ学んだ(あるいは奪った)のかもしれません。マンガンの探し方とか、使い方とか。。。その後、人間はマンガンのさまざまな使い道を発見します。大プリニウスの『博物誌』には、黒い(軟マンガン鉱の)粉末を使ってガラスを無色透明にすると記してありますし、さらに19世紀にはマンガンを使った電池が発明されました。
人間は、はるか過去から現代まで、マンガンのお世話になりっぱなしですね。
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