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2021年4月に作成された記事

2021年4月28日 (水)

軟マンガン鉱(静岡県下田市高根山鉱山)

Pyrolusite MnO2 酸化鉱物

 

Pyrolusite_takaneyamam_01

 

伊豆下田の高根山鉱山で見つけた、グラデーションがうつくしい微細な水晶(玉髄)。

表面に、なんか膜状のコケのようなものがついていました。こちらも色の変化がおもしろいです。

左上の黒っぽい部分を拡大してみると。。。

 

Pyrolusite_takaneyamam_03

 

金属的な光沢の、黒っぽい鉱物。多分軟マンガン鉱ではないかと思います。

表面がいろんな色に変化しているのはあんまり見たことがないけれど、酸化して被膜がついているんでしょうか。

 

Pyrolusite_takaneyamam_05

 

こんなのもありました。表面が金属光沢できらきらしている腎臓状集合の裏側が見えていて、炭のように黒くくすんだ光沢のない様子がわかります。

高根山鉱山では、やはりマンガン系の鉱物で、ありふれた軟マンガン鉱より珍しいバーネス鉱というのもでるらしいですが、この裏側のような、地味な感じみたいです。

 

Pyrolusite_takaneyamam_06

 

こんな結晶っぽいところもありました。細かい柱状結晶が集合しているように見えます。そういえばすぐ近くの寝姿山では、ラムスデル鉱の針状あるいは柱状結晶がありました(ラムスデル鉱(静岡県下田市寝姿山))。直線距離で1kmほどしか離れていません。

 

どうもマンガン鉱物というのは、人間がもっとも古くから使用してきた鉱物である可能性があるようです。

現生人類種との関係はまだ明確ではないけれど、ヨーロッパにいたネアンデルタール人は、マンガンを顔料とし、また粉末にして火をつけるための材料として使用していたようです。現生人種が欧州に到達するはるか昔、ネアンデルタール人が暮らしていたというフランスのペシュ・ド・ラゼ洞窟から、クレヨンのような二酸化マンガンの固まりが見つかっています(ナショナルジオグラフィックマガジン2008年10月号 ネアンデルタール人 その絶滅の謎)。

なるほど、軟マンガン鉱は触るだけで指が黒くなるから筆記用具になりますね。マンガン鉱床には大抵どこにでもあるありふれた鉱物で、手に入れるのも比較的容易ですし(といっても、何も情報がないところからいざ探すとなったらえらく大変ですけど)。あるいは、描ける便利な黒い石が採れるから、そこに住むようになったということもあるのか(ペシュ・ド・ラゼ洞窟で見つかったマンガンがどこで採取されたものかは知りませんが)。

ネアンデルタール人の系統が現生人類と分岐し分かれた時期はよくわかっていないようで、説によって何十万年もの差がありますが、先に故郷のアフリカから広い新世界に向けて出発した先輩であることは間違いないようです。約4万5000~3万年前にはヨーロッパあたりで両者の分布域が重なっていたので、もしかしたら何らかの接触があって、現生人類もマンガンを使っていたかもしれません。混血があったという説もあるみたいです。

その後、ネアンデルタール人は絶滅したとされます。その理由は分かっていません。

ネアンデルタール人というと現生人類より文化的に劣っていたと考えがちですが、どうしても身びいきになってしまうもので(自分が一番優れていて特別なんだと思いたいですよねw)、もしかしたら逆にこちらがいろいろ学んだ(あるいは奪った)のかもしれません。マンガンの探し方とか、使い方とか。。。その後、人間はマンガンのさまざまな使い道を発見します。大プリニウスの『博物誌』には、黒い(軟マンガン鉱の)粉末を使ってガラスを無色透明にすると記してありますし、さらに19世紀にはマンガンを使った電池が発明されました。

人間は、はるか過去から現代まで、マンガンのお世話になりっぱなしですね。

 

2021年4月20日 (火)

沸石(静岡県焼津市浜当目)

トムソン沸石 Thomsonite NaCa2Al5Si5O20・6H2O 珪酸塩鉱物

中沸石 Mesolite Na2Ca2(Si9Al6)O30・8H2O 珪酸塩鉱物

輝沸石 Heulandite (Na,Ca)2-3Al3(al,Si)2Si13O36・12H2O 珪酸塩鉱物

 

焼津の北・浜当目(はまとうめ)から、海に落ち込む切り立った岸壁が、虚空蔵山、大崩海岸と3km以上にわたって続いています。ここの岸壁は1500万年前頃に噴出したアルカリ玄武岩の枕状溶岩(Pillow Rava)で出来ていて、その表面や隙間に沸石の層が見られます。

粘度の低い玄武岩質の溶岩が海などの水の中で噴出すると、チューブから出てきた接着剤のように丸くなって固まり、枕状溶岩を作ります。つまり、枕状溶岩のあるところは、昔は海の中だったということですね。この玄武岩層は、内陸の高草山まで続いています。

アルカリ玄武岩(ナトリウムやカリウムが多い)は、本来大陸内部で多く見られるもので、日本の太平洋沿岸ではかなり珍しいようですが、その玄武岩の隙間などに、白い沸石が脈を作っています。噴出時に圧力が減少して、マグマ中の水分などの発揮成分が抜けたあとが孔となり、その孔が沸石で満たされていたりします。

1枚目の写真はトムソン沸石かな?

 

Zeothomsonite_hamatoume_01

 

ネット等でよく見るような、まん丸い半透明のものもあったのですが、ちょっと汚れが目立ったので、一番表面がきれいだったものを。

ソーダ沸石に似た柱状結晶(断面は長方形)らしいのですが、微細なそれが放射状に集まって丸い姿を見せることが多いようです。丸い鉱物ってこのパターンが多いですね。

 

Zeomesolite_hamatoume_01

 

こちらは多分中沸石ではないかと思います。ソーダ沸石かも? まあ何となくですw こちらも柱状結晶の集まりで、繊維状になっていますね。成分的にはソーダ沸石とスコレス沸石の中間なので、中間という意味の古代ギリシャ語μέσος(mésos)が語源です。

 

Zeoheulandite_hamatoume_01

 

こちらは輝沸石ですかね。上の2つの石のあった露頭ではなく、そのそばの浜辺の石についていました。なので、ここの岩が出所元かどうかは分かりません。

 

Hamatome
浜当目の露頭。

 

焼津というとマグロが有名ですが、個人的には遠洋漁業の冷凍マグロはそれほど好きではないです(近海ものの冷凍してないマグロを食べてしまうと、冷凍ものは食べられなくなっちゃう。まったく別ものです)。それより駿河湾は深海魚ですかねw 深海魚専門の漁師すらいるというのがびっくり。見かけはかなりグロいですけど、考えてみると桜エビやタカアシガニ、キンメダイなどの駿河湾の名産は深海ものばかりですよね。。。

 

2021年4月11日 (日)

含クロム白雲母(長野県茅野市金鶏金山)

Fuchsite(Muscovite) K(Al,Cr)2AlSi3O10(OH,F)2 珪酸塩鉱物

 

Fuchsite_kinkeim_01

Fuchsite_kinkeim_02

Fuchsite_kinkeim_03

 

長野県金鶏金山の白雲母の変種です。クロムを含んでいるために緑を帯びていて、とてもきれいですね。金鶏金山はセリウムフローレンス石や水晶の日本式双晶、苦土電気石、滑石などさまざまな鉱物を産出しますが、この白雲母がここの代表といっていいのではないかと。現場に行きさえすれば、わざわざ探すまでもなくいっぱいあるので、あまり珍重されないかもしれませんが、結晶形もはっきりとしていて薄いものは透明度も高く、拡大するとほんとにきれい。

錆がついて茶や黄色く染まった部分と緑のグラデーションが、またポイントですね。薬品で錆をとってしまうと、この美しさがそこなわれてしまう、でも錆をとらないと稀産鉱物が探せない、というジレンマに直面することになります(珍しいセリウムフローレンス石はピンク色なので、錆がついてると紛れて探しにくい)。

写真は3種の形態を選びました。緑の鮮やかな1枚目、薄い錆で金色の花びらのように重なった集合と水晶の2枚目、透明度の高いうす緑の薄片の3枚目、どれも違っていいですねぇ(写真の出来には目をつむってください><)。地の無色部分は石英です。

緑の雲母のことを、Maripositeということもあります。MaripositeもFuchsiteも正式な鉱物名ではなく、白雲母(Muscovite)の一種。クロムではなくバナジウムが含まれると、ロスコー雲母となります。

フクサイトの名称は、ドイツ・バイエルン王国の化学者・鉱物学者であるヨハン・ネポムク・フォン・フックス(Johann Nepomuk von Fuchs、1774-1856年)に由来します。

1842年、やはりドイツの地質・鉱業・冶金・音楽学者のシャフホイトル(Karl F. Emil von Schafhäutl、1803-1890年)によって命名されました。この人、ちょっと面白い人物みたい。もともと印刷関連の職人であり、詩や演劇・物語などの文学作品も残していて、かなり多彩な方面で活躍しています。地質学関連では、アルプス地方の地質などの研究。音楽では、グレゴリオ聖歌などの研究のほか、楽器の音響についての研究もあり、ベーム式フルート(要するに現代のフルートのことです。それまでは主に木製で簡単なキーのついたようなトラヴェルソが使われていました)の開発にも関わっていたようです。文学ではキリスト教の色彩が濃い作品が多い。

 

グレゴリオ聖歌はヨーロッパではかなり異質なモノフォニックな音楽です。西アジアの影響を強く受けているものと思われます。なので、コードではなくモード(旋法)を基本としています。ヨーロッパでは唯一といっていいモノフォニーな伝統音楽ですね。

誤解している人も多いと思いますが、モノフォニーが進歩してポリフォニーになったりするような関係にあるものではありません。まったく別の、独立したものです。社会のあり方と音楽を簡単に関連づけることはできないと思いますが、狩猟を基本とする社会にはポリフォニーが、農耕を基本とする社会にはモノフォニーが多いような気がします(日本も基本モノフォニーな国でしたが、何分文化の掃きだめ的な位置にあるのでw)。

現在ポリフォニー(と平均律)が世界的に全盛なのは、ヨーロッパの帝国主義の賜物だと言ってしまっていいかも? 世界にはいろんな音楽があって、聞きなれていないものは理解できません。聞き方は、演奏の仕方と同じく、技能です。現在の日本人の大部分は、日本の伝統音楽は理解できません。聞きなれていないから。学校で1回だけちょこっと雅楽や長唄を無理やり聞かされても、退屈こそすれ、理解できるわけもないです。音楽の先生もほとんどの人は分からないけど聞かせているだけでしょう(学校の先生の多くはヨーロッパの数百年の範囲内の古典音楽という非常に狭い範囲しかまじめに勉強していないでしょうから)。

アラビアのウード奏者の人の話で、音楽の幅を広げたいとヨーロッパに音楽留学に行ったそうです(それまでヨーロッパの音楽はほとんど聞いたことがなかった)。初めてオーケストラの演奏会に行ったのですが、いつまでたってもずっと音合わせをしていて、全然始まらないなあと思っていたら、拍手が起こって終わっちゃったとかいう。。。「音楽」として認識できなかったわけですね。西アジアの多くの国の人からしたら、オーケストラは音が合っていないのが気になって仕方ないんじゃなかろうか。調律に非常に厳密ですし、オーケストラは管楽器と弦楽器、さらに鍵盤もあって(それぞれ音程のとり方の仕組みが違う)音合わせが難儀な音楽形態ですからね。。。

音楽は世界の共通語だなんてよく言われますが、それはまったく無知からきた誤解です。音楽は言語と同じ、母国音楽以外のものをきちんと聞ける(演奏できる)ようになるには、勉強や慣れ、多くの時間が必要だと思います。それでも、はたして本当にそれが母国音楽の人と同じように聞けているのかどうか。。。結局のところ、頭の中で翻訳をするという余分な作業をしているのではないか。。。大元のところで理解の方法は異なっているのではないか。そういう疑問はけっしてなくなることはないと思いますね。

音楽は言語と同じと書きましたが、音楽そのもののあり方としては、言葉というよりむしろ数学に近いものです。現代では音楽は基本的に感情的なものと思われ、求められていて、「作者の思いを伝える」とかそういった面が強調されることが多いですが、世界には、感情はむしろ邪魔であるという音楽も多くあります。たとえば南インドの伝統音楽では、音楽は宇宙とか世界とか、そういうものを表現するものであって、人間的な側面はできるだけ排除すべき要素であるとされます。日本の雅楽も儀典や占いのための音楽ですし、現代でも感情的な要素を排除した純粋な音の気持ちよさを追及する分野もありますね(特にエレクトロな分野の一部)。そのような数学的な側面が重視される音楽なら、共通語になりえるのかな、と考えたりもします。

そういう数学的な世界の表象として、自分は鉱物の世界が好きなのかもしれない。

 

って、途中から鉱物全然関係なくなってしまい、最後に無理やり鉱物を持ち出してまとめようとしてみましたw

 

2021年4月 5日 (月)

鉄重石(茨城県城里町錫高野)

Ferberite Fe2+(WO4) 酸化鉱物

 

Ferberite_suzukoya_01

 

錫高野(高取鉱山)の代表的な鉱物のひとつ、鉄重石です。

上の写真はカメラ本体のみでのマクロ写真。重石というだけあって、ずっしりと重いです。

下は細長いノリのような小さな鉄重石を顕微鏡で拡大したもの。どちらも母岩は石英。

 

Ferberite_suzukoya_02

 

錫高野は天正年間末(1590年)ごろ砂錫が発見され(豊臣秀吉が関白の位についたのが1591年、天正19年のこと)、以降、江戸時代には錫が採掘されてきた古い鉱山です。

明治41年には鉄マンガン重石が発見され、錫高野から高取山をはさんで西側の高取鉱山でタングステン、銅、錫が採掘されてきました。昭和60年以降現在まで、休山しています。

成分的には、鉄を多く含む部分とマンガンを多く含む部分が混じっているようで、以前は鉄マンガン重石といわれていましたが、現在では鉄成分のほうが主なので鉄重石といわれています(マンガン成分のほうが多ければマンガン重石となる。固溶体の50%ルールといったりします)。

普通、鉱山あとでは採掘していた鉱物はズリにほとんど残っていないものですが(それが目当てで採掘していたんだから当たり前、ズリはいらない石の捨て場)、錫高野では鉄重石も錫も結構よく見かけます。高取鉱山の中心地(塩子川)は錫高野(桂川)と高取山を挟んで若干離れていて、明治以降は錫高野側ではあまり採掘されていなかったんでしょうか。一応坑道跡は残っているんですが(錫高野と高取鉱山の坑道は繋がっているらしい)。

タングステンは、硬度の高さ、比重の大きさ、熱膨張率の低さなどから、超硬度の合金として切削用工具などに使われ、また武器の装甲、弾芯(装甲を貫く徹甲弾など)としても使用されることが多いようです。第二次世界大戦時の艦砲用の徹甲弾にも使われたのでしょうか。一般的には電球のフィラメントのイメージですが、最近はLEDが普及してきたので、かなり減ってきているようですね(ただし、高取鉱山のタングステンは不純物の除去が難しく、フィラメントとしては使えなかったという話も。。。)。

タングステンは現在ではほとんど中国からの輸入に頼っているそうですが、天然資源としては日本にもまだ存在しているということですね。

ただ、鉱山というのは基本大変な重労働で、環境問題にも大きく関わってくるので、まったく採算に合わないということなのでしょう。汚いやばいところは他の国にやってもらって、金持ち国はお金を出して、環境問題を大きく叫ぶってわけですねw 二酸化炭素排出量なんかと同じく。

 

Ferberiteの名前は、ドイツ・チューリンゲンはゲラ出身のテキスタイル商人で、アマチュア鉱物学者のモリッツ・ルドルフ・フェルバー(Moritz Rudolph Ferber: 1805-1875)にちなんでつけられました。1872年、彼は膨大な鉱物コレクションを有するイエナの「Großherzoglichen Societät für die gesamte Mineralogie」(〈ワイマール〉大公国全鉱物学協会とでも訳すか?)の会長に選任され、イエナ大学から博士号を授与されています。ゲーテも会長だったことがある組織です。

 

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