マンガン斧石(埼玉県秩父市秩父鉱山)
マンガン斧石 Axinite-(Mn) Ca4Mn2+2Al4[B2Si8O30](OH)2 珪酸塩鉱物
チンゼン斧石 Tinzenite Ca2Mn2+4Al4[B2Si8O30](OH)2 珪酸塩鉱物
前回の鉄斧石から続き、今回はマンガン斧石。秩父鉱山、大黒下の川原産です。
鉄斧石の鉄FeのかわりにマンガンMnが入ったもので、若干肌色がかった感じ。マンガン鉱物に多い赤・ピンク系が若干混じっているってことか。結晶が少しずつズレながら重なって集合しているさまがわかります。結晶面が滑らかなので、きらめきがきれいです。
大黒の川原わきの斜面はどうやらズリでできているようで、さらにその一部の狭い範囲だけでマンガン系の石が多く見られます(ピンクの菱マンガン鉱が目立つ)。このマンガンがらみの石に、いろいろな珍しい鉱物が共存していることが多いようです。マンガン斧石も、その狭い範囲内で見つかります。
同じ石の別の箇所には、色の濃いものもついていました。
表面に赤さびがついているわけではなさそうです。これは、マンガン斧石よりマンガン成分を多く含む、チンゼン斧石ではないかと思うのですが、どうでしょうね。写真を見る限り、こんな色をしていることが多いみたいですが。
マンガン斧石に比べるとかなり珍しいようで、ぐっと産地は減ります。CaのかわりにMnがちょっと増えただけなんですが、こんなに色が変わっちゃうものなんですかね。まあ分析したわけではないので、記事のタイトルは「マンガン斧石」としておくことにします。鉱物の組成というのは連続的なグラデーションで、わずかな差の鉱物の場合、分析なしでは判断できません。色なんてちょっとした差で変わってしまいます。。。
名前は、スイスのチンゼン(Tinzen, Tinizong)という地名に由来します。チンゼンそばのAlpe Parsettensというところで産するらしいですが、この場所がどういうところなのかよく分かりません。Alpeというのは、アルプスの山の名前ではなく、アルプスの中腹の草原地帯のことなのだそうですが、そこに鉱山等があったのか、露頭なのか。。。google mapで検索しても出てきませんね。
荒川の上流、奥秩父もみじ湖で、奥秩父の三国山を源流とする支流の中津川が合流します。さらに少し上流、中津川の支流・神流川が合流しますが、その神流川沿いに大黒の鉱山跡があります。地形図にも(廃坑)として表記されている、まさに秩父鉱山の中心地といっていいところですね。中津川はずっと深い渓谷が続きますが、このあたりは川原が若干広がっていて、気持ちのいいところです。
川沿いの崖にいくつか掘ったあとが見られますが、特に大きな坑口が真っ黒い口をあけていて、なかなか不気味な感じです。多分中は深い坑道が延々と続いているんでしょう。自分は洞窟とか苦手なので、鉱山あとにいっても坑道に入ることはほとんどないんですが、そういうのが好きな人たちの記録や写真を見ているとちょっと面白そうだなとも感じますが、感じるだけで入りたくはないですねw ベルヌの『地底探検』みたいなもんですかねぇ。
左:神流川沿いの崖に大きな坑道が。右:大黒付近の沢の様子。
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