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2021年3月に作成された記事

2021年3月30日 (火)

燐灰石(山梨県道志村道志川流域)

Apatite (Ca,Ba,Pb,Sr,et9.)5(PO4,CO3)3(F,Cl,OH) 燐酸塩鉱物等

 

Apatite_doshi_01

 

道志川流域、丹沢側のペグマタイトで採集したものです(ちなみに今回の写真はすべて顕微鏡写真ではありません)。長石、石英(水晶)、緑泥石の中に、六角柱状の結晶が見えます。

最初見つけた時は、とてもシャープな結晶でおおっと思ったのですが、特に深く考えずまあ長石だろうと。。。今回採集したポイントは長石(斜長石?)が非常に豊富だったので。現地ではルーペしかないし、探すのに夢中で、そんなによく観察できないですよね。ね?

でも家に帰ってから見ていて、何となく表面の雰囲気も違うし(真っ白ではない)、ちょっと中身は緑が入ってるし、六角柱状だし、長石じゃないんじゃないの、なんだろうと思っていたのです。

試しにUV(長波:365nm)を当ててみたらびっくり、きれいな強いオレンジ色で光りました。

 

Apatite_doshi_02

 

ということで、いろいろ考えて、燐灰石ではないかと思ったのですがどうでしょうか。今まで燐灰石を拾ってきちんと見たことがないので不安ではありますが、多分当たっているのではないかと。(ところで薄紫に光っているところがあちこちにありますが、長石の蛍光でしょうか。あるいは通常光が混じっていてそれが照らしているだけ?)

燐灰石は、フッ素燐灰石、水酸燐灰石、塩素燐灰石の3種類ありますが、どれかは分かりません。一番ありふれたフッ素燐灰石が可能性としてはもっとも高いのかもしれません。ちなみに同じ丹沢の玄倉・水晶沢で産出することで有名だったのは、塩素燐灰石です。道志のポイントも水晶沢も、同じ丹沢中央部のトーナル岩地帯ですが、それだけでは決められませんね。水晶沢のある同角の頭付近は、銅を中心とした硫化鉱物も出るし、モリブデン鉱もあるらしい特殊なところですし。

でも、道志のペグマタイトで燐灰石が出るという話は聞いたことがなかったですね。燐灰石は「ほぼあらゆる産状で出る最もふつうのリン酸塩鉱物」(松原聰他『図説 鉱物の博物学』秀和システム、2016年)だそうですが。。。

 

ちょっと久々の丹沢でしたが、やっぱりここは家に帰ってきたみたいに、心が落ち着きます。東、西、北とちょっと雰囲気は違いますが、他の山域のような「よそ行き」という感じがなく、人の踏み込んだ気配のない沢とかでもなんとなく安心できるんですよね。

子どものころ、まれに山の中で周囲から強い視線を感じることがありましたが、それが山の神さまだったと知ったのは、大人になって佐藤芝明『丹沢・桂秋山域の山の神々』でそっくり同じ経験が書かれているのを読んでからです。自分を超えた存在を感じると、それはどうも「恐怖」という感情の形をとるしかないようで、非常に恐ろしい経験なのですが、それが敵意ではないことは分かる。

ヨーロッパでもそういうことはあるらしく、日本の山の神さまに対応するのは、「パン(牧神)」です。オーストリアの作曲家・マーラーの妻が書いた伝記に、森の中の作曲小屋から蒼い顔で逃げてきたマーラーが、「パンに見つめられた」と言ったという話が出てきたと記憶しますが、それも同じ経験だろうと思います。

自分は宗教は敬して遠ざけるタイプの人間で霊感などもゼロですが、実のところ、今でも丹沢で感じることはたまーにあるんですよね。何だかよくわからないけれど、見られてる感がある。自分は赤ん坊のころから丹沢に連れて行かれていたので、向こうもちょっとは気にしてるんじゃないか、と思ったりします(子どものころの話はマンガンパンペリー石の項でも書きましたが)。

こんなことを書くと変なやつだと思われるかもしれませんが、まあ別にいいやw こういうのは、経験した人と言葉でしか知らない人では、理解しあえることはないと思っているので。。。人が五感でしか外の世界を認識しえない以上、もしそれが錯覚や幻聴であったとしても、それはその人にとっては真の経験であることに違いはなく、旅行したり本を読んだり音楽を聴いたりするのと同じく、その人の世界を形作るものだと思います。

 

Doshi_01

道志のペグマタイトの沢。

 

2021年3月23日 (火)

黄鉄鉱(静岡県河津町河津川流域S鉱山)

Pyrite FeS2 硫化鉱物

 

Pyrite_izusm_02

Pyrite_izusm_01

 

一番最初の記事、黄鉄鉱(静岡県河津町河津川流域)の上流の鉱山跡で採集したものです。先に拾った黄鉄鉱は、この鉱山跡から流れてきたんですね。

 

そのあたりに鉱山跡があったという話をネットでちらと見て、いろいろ調べ探しました。あまり名の知られた場所ではないので、とりあえずS鉱山ということにしておきます。まあ記事を見れば、知ってる人は「あああそこか」と見当つくと思いますが。。。

山の中で若干沢歩きあるいは廃道辿りしなければならず、伊豆にしては割と行きにくいこと、あるいはもしかしたら大したものが出ないとかの理由で、人があまり訪れた形跡が見られません。伊豆半島の鉱床を列記した櫻井欽一の「伊豆半島の鉱物」(『伊豆半島 IZU PENINSULA』東海大学出版会、1972年)を見ても、取り上げられていないですね。

あるらしい、という段階からうまく見つけ出せると、テンションあがります。あらかじめ地形図を見て、ここにあるはずだと予想した場所に実際にあると、なおさらです。『ロストワールド』のチャレンジャー教授になった気分が味わえます。まあ、伊豆にはまだ知られていない鉱山あとやポイントなんて、まだまだいくつもありそうな気もしますけれど。

S鉱山では、沢沿いに約250mにわたって坑道やズリが残っています。自分が見た限りでは、坑道跡は、上流域に3~4、中流域に2、下流域に1。中流域の坑道がもっとも大きく、立派でした(下の写真)。ズリは下流域と上流域に2か所ほどありました。沢沿いに一応経路あとも残っていますが、当然のことながら、崩れかけた場所多数。でも、そんな急峻な沢ではないので(2~4メートル程度の落差の棚がいくつかあります)、そんなに苦労はしませんでした。

 

Izusm_01Izusm_02

左:下のズリに打ち捨てられた軌道のレール。
右:一番大きな中流域の坑口。入口のところに登り階段がある。

 

Izusm_03

上流の坑道群。

 

上と下のズリでは、見られる石にかなり違いがありました。

下のズリでは、石英(小さな水晶)、方解石、黄鉄鉱などが中心。写真の五角十二面体の黄鉄鉱は、ここの産です。やっぱり下流で見つかるものより、ずっと大きいしきれいだなあ。母岩はグリーンタフでしょうか。

上のズリでは、多分銀黒を含んだ石英(他の伊豆の金銀鉱山でよく見かけるものです。水晶はほとんどついてない)、黄銅鉱、黄鉄鉱(こちらのは六面体です。一面が湾曲したようなものが多いみたい)、硫砒鉄鉱? 方鉛鉱? それに、ズリの表面が緑色で染まっているところがあります。孔雀石ですね。上のズリには銅が多く含まれているみたいです。孔雀石も結晶はミクロサイズばかりでしたが。

それほど珍しいものを見つけたわけではありませんが(というか、どんな鉱物があるか情報があまりないので、はっきりと確定しにくいです)、ズリによって違いがあるということは、他にもいろいろ出そうな気がします。ここにはテルル、ビスマス系はないのかな? なんとなく亜鉛系の鉱物も出そうな気がする。

機会があれば、もうちょっと枝沢とか斜面など、引き続き探してみたいことろです。

 

2021年3月18日 (木)

マンガン斧石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

マンガン斧石 Axinite-(Mn) Ca4Mn2+2Al4[B2Si8O30](OH)2  珪酸塩鉱物

チンゼン斧石 Tinzenite Ca2Mn2+4Al4[B2Si8O30](OH)2  珪酸塩鉱物

 

Axinitemn_chichibum_01

 

前回の鉄斧石から続き、今回はマンガン斧石。秩父鉱山、大黒下の川原産です。

鉄斧石の鉄FeのかわりにマンガンMnが入ったもので、若干肌色がかった感じ。マンガン鉱物に多い赤・ピンク系が若干混じっているってことか。結晶が少しずつズレながら重なって集合しているさまがわかります。結晶面が滑らかなので、きらめきがきれいです。

大黒の川原わきの斜面はどうやらズリでできているようで、さらにその一部の狭い範囲だけでマンガン系の石が多く見られます(ピンクの菱マンガン鉱が目立つ)。このマンガンがらみの石に、いろいろな珍しい鉱物が共存していることが多いようです。マンガン斧石も、その狭い範囲内で見つかります。

同じ石の別の箇所には、色の濃いものもついていました。

 

Axinitemn_chichibum_02

 

表面に赤さびがついているわけではなさそうです。これは、マンガン斧石よりマンガン成分を多く含む、チンゼン斧石ではないかと思うのですが、どうでしょうね。写真を見る限り、こんな色をしていることが多いみたいですが。

マンガン斧石に比べるとかなり珍しいようで、ぐっと産地は減ります。CaのかわりにMnがちょっと増えただけなんですが、こんなに色が変わっちゃうものなんですかね。まあ分析したわけではないので、記事のタイトルは「マンガン斧石」としておくことにします。鉱物の組成というのは連続的なグラデーションで、わずかな差の鉱物の場合、分析なしでは判断できません。色なんてちょっとした差で変わってしまいます。。。

名前は、スイスのチンゼン(Tinzen, Tinizong)という地名に由来します。チンゼンそばのAlpe Parsettensというところで産するらしいですが、この場所がどういうところなのかよく分かりません。Alpeというのは、アルプスの山の名前ではなく、アルプスの中腹の草原地帯のことなのだそうですが、そこに鉱山等があったのか、露頭なのか。。。google mapで検索しても出てきませんね。

 

荒川の上流、奥秩父もみじ湖で、奥秩父の三国山を源流とする支流の中津川が合流します。さらに少し上流、中津川の支流・神流川が合流しますが、その神流川沿いに大黒の鉱山跡があります。地形図にも(廃坑)として表記されている、まさに秩父鉱山の中心地といっていいところですね。中津川はずっと深い渓谷が続きますが、このあたりは川原が若干広がっていて、気持ちのいいところです。

川沿いの崖にいくつか掘ったあとが見られますが、特に大きな坑口が真っ黒い口をあけていて、なかなか不気味な感じです。多分中は深い坑道が延々と続いているんでしょう。自分は洞窟とか苦手なので、鉱山あとにいっても坑道に入ることはほとんどないんですが、そういうのが好きな人たちの記録や写真を見ているとちょっと面白そうだなとも感じますが、感じるだけで入りたくはないですねw ベルヌの『地底探検』みたいなもんですかねぇ。

 

Chichibum_daikoku_01Chichibum_daikoku_02
左:神流川沿いの崖に大きな坑道が。右:大黒付近の沢の様子。

 

2021年3月11日 (木)

鉄斧石(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Axinite-(Fe) Ca4Fe2+2Al4[B2Si8O30](OH)2 珪酸塩鉱物

 

Axinitefe_chichibum_01

Axinitefe_chichibum_02

 

秩父鉱山・六助沢で採集した、鉄斧石です。斧の形が明確にわかる結晶ではありませんが、うす紫がとてもきれいな結晶。周囲の緑の小さな結晶は、緑簾石です。

名前は見てわかる通り、まさに結晶の形が斧のようだということで、1797年、フランスの鉱物(結晶)学者・ルネ=ジュスト・アユイ(René Just Haüy:1743~1822年)によって、ギリシャ語のαξίνα(axina:斧)を語源として命名されました。時代的にちょうどフランス革命の真っただ中で生きた人ですね。聖職者でもあった彼は実際、聖職者民事基本法に反発して投獄されたりしています。

それまでは鉄電気石の一種と考えられており、さまざまな人によって、いろいろな名前をつけられていたようです。その名前を連ねてみると。。。Espéce de Schorl、Schorl violet、Schorl transparent lenticulaire、Thumerstein、Thumite、Yanolite、Glasschörl、axinit、ferroaxinite。。。一番シンプルで短いaxinitになってよかったな、と(ちなみに「Schorl」は鉄電気石のことです)。

現在ではその成分の違いによって、鉄斧石(Fe)、苦土斧石(Mg)、マンガン斧石(Mn)、チンゼン斧石(Mnが多い)の4種類に分けられ、斧石グループを作っています(2007年より)。鉄斧石がもっとも産出が多いらしいですが、自分にとってはこれが初めて見つけた鉄斧石です。スカルンなどでは割と出やすいようです。

 

狭い範囲にいくつものスポットがある秩父鉱山ですが、各ポイントで微妙に出るものが違っていて、大変楽しいです。しかもそれぞれの結晶が立派で種類も多く、何度行ってもあきないで時間を忘れてしまいます。六助沢は、普通の鉱石のほか、マンガン、輝安鉱などのアンチモン鉱物なども産出するところで、もうちょっといろいろ探してみたいですね。まだそれほど上まで行ったことがないので。

もともと六助鉱山では金・銀・鉛などを採っていたようですが、日窒鉱業開発(現・ニッチツ)に買収されてからは、肥料の重要な原料の硫酸を目的に、閃亜鉛鉱が採掘されていたようです。その経緯については「樵路巡遊」というサイトの「六助道【廃径】が詳しいですので、興味ある方はぜひ。

石目当ての人もよく見かけるところですが、釣り人も割と見かけます。こんな鉱山の川で魚とれるのか分かりませんが、どうなんでしょう、釣れたとしても、あんまり食べたくはないような気もしますけど。。。以前も釣りの人と会ったら、「割れた石がたくさんあるけどこれはなんだろう?」という反応でした。ですよねー、お互い自分の興味あることはよく知ってるけれど、そうでなければ全然知らないものですよね。

自分も川や海によく行っていたにも関わらず、これまで釣りだけはなぜか全然やらないできてしまいました(唯一冬の赤城山でワカサギ釣りだけはしたことがあるが、一匹も釣れずw)。今となっては石釣りに忙しくて、とても手が回りません。

 

2021年3月 5日 (金)

珪孔雀石(石英)(栃木県日光市小来川鉱山)

Chrysocolla (Cu2-xAlx)H2-xSi2O5(OH)4・nH2O 珪酸塩鉱物

 

Chrysocolla_okorogawam_02

Chrysocolla_okorogawam_01

 

珪孔雀石だと思うのですが、それにしては透明感があるし、普通塊状や膜状でしか見られないのになんとなく結晶形があるように見えて、なんだろうと思っていました。色が濃いところから、淡く水色がついた透明なところまで、場所によってかなり幅があって、拡大するとなかなかきれいです。

多分、これは宝石の世界でジェムシリカとか、クリソコラ・カルセドニーとか言われるものではないかと。。。ネットで説明を見ると、珪孔雀石に石英がしみ込んで硬くなったものと書いてあります。石英が珪孔雀石にしみ込む? SiO2を含んだ熱水が浸透し、中に取り込んだ状態で石英に成長したということかな? つまり珪孔雀石を含有した石英ってことですかね? それならなんとなくイメージがわきますが。見かけ上は、珪孔雀石を含んで水色がついた石英といわれると、なるほどと納得できる感じではあります。一応宝石の部類なのだそうです。確かに、珪孔雀石そのものよりもずいぶん硬度は増しているし、透明度が上がって美しさも増していますね。

普通は珪孔雀石というと、ガラス質というよりは樹脂と陶器状のあいだという感じで、透明感は全然ないイメージ(そういうのしか見たことない)。鉱物の種類としては、石英とするべきかもしれませんが、石英は水晶として何度か取り上げているので、珪孔雀石として載せることにしました。多分普通の珪孔雀石はこの先取り上げないと思うし(どこにでもあるし、そんな面白いものじゃないですしねw)。

 

クリソコラという名前の歴史はとても古く、古代ギリシャの哲学者・博物学者のテオプラストス(Θεόφραστος, Theophrastos: BC371~287年。特に植物学で有名。「石について」〈Περὶ λίθων 〉という著作がある)によって最初に使用されたそうです。さらにその名前を、フランスの鉱物学者アンドレ・ジャン・フランソワ・マリー・ブロシャン・ド・ヴィリエ(André-Jean-François-Marie Brochant de Villiers:1772~1840年)が、1808年に復活させました。ブロシャン銅鉱のブロシャンさんですね。

金を意味するχρυσός(クリューソス)と、にかわ、のりを意味するκόλλα(コラ)が語源です。古代の処方として、銅の二次鉱物を粉末にして金と混ぜることによって、溶けやすくするという方法がどうやらあったらしい。珪孔雀石はどこでも手に入りやすいですし。あるいは、この鉱物そのものの名前というより、金を扱いやすくするための銅系の薬剤の名前だったのかもしれませんね。

 

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