普通輝石(静岡県賀茂郡南伊豆町伊浜)
Augite (Ca,Mg,Fe)2Si2O6 珪酸塩鉱物
普通輝石かなぁ? 多分。
西伊豆の南端、妻良と雲見の間の小さな港町・伊浜近くの山の中で採集しました。場所的には蛇石火山の範囲内になると思います。
蛇石火山は140~130万年前に噴火したとされる第四紀の火山です。侵食によってかなりなだらかな地形となっていて、蛇石峠西にある大峠そばの520m峰が山地の最高峰。名前は青野川上流の蛇石という地名からきていますが、ここにある蛇のように見える蛇石がジオパークのポイントになっています。この蛇石は伝説では蛇石集落の北2kmちょっとのところにある蛇石大池(現在低層湿原となっている)まで続いているということですが、この大池もどうやら火口跡地のようです。
妻良から雲見までの道路(マーガレットライン)は海から離れてずっとなだらかな山の上を通りますが、妻良側の約半分くらいは蛇石火山の噴出物の領域です。鉱物的には妻良の付近にマンガン鉱山があったようですが、行ったことはありません。妻良から二十六夜山を周る道を経由して、南の岬の先にある浜を目指して歩いたことがあります。植生が日本っぽくなく、南洋的なヤブがかなりきつく、岩場もあって結局行き着けませんでした。でも、林道の途中で立派な柱状節理が立ち並んでいるのを見つけたのは思わぬ発見でした(こちらはジオポイントにはなっていない。まあ伊豆は柱状節理多いですもんね)。
普通輝石は火成岩(と一部の変成岩)に含まれることの多い造岩鉱物で、ごく普通に見られるものです。
語源はギリシャ語のαυγή(アヴギ)。現代ギリシャ語では「暁」という意味で、古代ギリシャ語だとαὐγήは「太陽の光」「光線」「光沢」というような意味です。劈開のさまからつけられたようです。前回の重晶石の回にも名前が出てきたドイツのヴェルナー(Abraham Gottlob Werner, 1749-1817)によって、1792年に命名されました。
なんといっても名前がね、「普通」ですからね、名前につける言葉じゃないですよねぇw
その名前のとおり非常に地味でありふれた存在ですけど、きちんと結晶形が出ているのをそう頻繁に見るわけではありません。ミクロな結晶から、マクロな地質、火山地形まで思いをはせることができるのが、地学の面白さですね。
妻良南の岬付近から、北側方面を見る。海をへだてて向こうに見えるのは左から、波勝崎、高通山、さらになだらかな蛇石火山。
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