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2020年11月に作成された記事

2020年11月30日 (月)

コーリンガ石(群馬県藤岡市八塩鉱山)

Coalingite Mg10Fe3+2(CO3)(OH)24・2H2O 炭酸塩鉱物等

 

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群馬県、三波川近くの八塩鉱山のコーリンガ石(赤褐色の部分)だと思います。

ブルース石を含む蛇紋岩の風化によって生成される鉱物で、1年間野外にそれを置いておくと、コーリンガ石ができるそうです(堀秀道『楽しい鉱物図鑑②』草思社、1997)。うちの庭のズリに置いておいて、実験してみますかね。

どちらの写真も上部に青緑の部分があり、これがブルース石ではないかと思います。八塩鉱山の石の多くは、半透明・青緑のきれいな部分がついてますが、全部ブルース石なのかな?

特に2枚目の写真は、青緑を含む上部(ピントがあってないところ)は採集した時割って出てきた面で、コーリンガ石がついているのは露出していた表面のみでした。ズリに転がっているうちに、コーリンガ石になってしまったんですね。黒い粒々は、クロム鉄鉱だと思います。

上記の本にも書いてありますが、たった1年で違う種類になってしまうとは、なんとまあいそがしい鉱物ですねw(マンガン系もそうですが)

コーリンガ石には、大気中の炭酸ガスを吸収する作用があります。二酸化炭素は現在ではなにやら大変な悪者的扱いになってしまっていますが、地球上に普通に存在する、絶対に必要なものでもあります。実際に炭酸ガスが増えているのか、それを原因とした影響がはっきり現れているのか、それが人間の活動によるものなのか、ということは別として、冷静に考えることが必要かなと思います(正直にいうと、政治的影響が大きすぎて、どの立場の話もそっくりそのまま信用していいのかどうか疑問を感じないでもないこともなくはないこともない←態度を明確にできないということを表現していますよw)。

 

カリフォルニア州のコーリンガ近くの蛇紋岩のアスベスト鉱床で最初に発見(報告)されたことから、この名前がつきました。ネットや本で調べると、コーリンガ石とコーリング石2種類の表記があったので、どっちがいいのだろうと調べていたら、以下のような事情があることが分かりました。

元々はコーリングという地名だったようですが、サザン・パシフィック鉄道(Southern Pacific Railroad)の駅Coaling Station Aという表記を省略してCoaling Aと書いていたのが定着して、コーリンガ(Coalinga)になってしまったようです。だからまあ、どっちでもいいのかなw(Coalingiteに「a」は入ってないですし)

 

2020年11月26日 (木)

河津鉱山の金属様鉱物(静岡県下田市稲生沢川流域)2

下田・稲生沢川で見つけた、河津鉱山由来と思われる金属光沢鉱物のまとめ、つづきです。

 

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結構立派な姿の金属鉱物です。繊維状の見かけから、輝蒼鉛鉱()のように見えますが、どうでしょうね。

最初真っ黒で金属系にはまったく見えなかったのですが、洗ってみたらきらきらしだしました。

何もめぼしいものがついていないように見えた石が、洗うにつれてさまざまな鉱物が現れてくるのはほんとに楽しいですね。でも最近はあまりごしごし洗わなくなりました。ピカピカなのも、風情がないですし、洗っていると楽しくてつい夢中になり、あとからなんか面白いものまで洗い落としてしまったんじゃないかと心配になったりするのでw

 

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こちらはちょっと茶色が入ったような箔がけば立った感じの金属様鉱物。針でつつくと、触れただけでぐにゃっとつぶれてしまうくらい、もろいものです。

すぐそばの高根山鉱山で、これと似たものを見たことがあります。前回、マンガン系鉱物はまったく見かけなかったなどと言った舌の根も乾かぬうちからなんですがw この少し赤味が入った色ともろさは、ランシー鉱()ではないでしょうか。

河津鉱山と高根山は、稲生沢川を挟んで、ほとんど向かい合わせといっていいくらい近いですが、それぞれ特徴のある鉱山です。周辺には他にも珍しいものが出る産地があちこちにあって、ほんとに南伊豆は面白いですねぇ。

この辺は、鉱物を売りにして、全面に出してもいいんじゃないかと思うくらいですが、そういう気はないんですかね。伊豆はジオパークを割と観光のメインにしているような気がしますが、その一環として、河津鉱山など、入場料をとって鉱物を採集できるようにするのもありだと思うんですけどね。世界的にもあれだけ稀少な鉱物が多く出る産地はそうそうないと思いますし。お金がちょっとかかろうとも、安心して採集できるならその方が気が楽だし、産地の管理という意味でもいいと思うのですが。。。

温泉などもそうですが、出るところでは、それがあるのが当たり前と思ってるんじゃなかろうか。ないところから見ると、とてももったいないと感じることがあります。温泉のかけ流しとか、お湯を手に入れるにはガスや電気代が必要なところに住む自分には、資源の無駄づかいにしか見えないのだ。河津鉱山の稀少鉱物も、興味がなければ単なる石ころにすぎないし、日本では(採集を中心とした)鉱物趣味ははやんないんだろうなあ。。。

 

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こちらは黄鉄鉱ですね。あまり大きな結晶はないのかな? とても小さいけれど、やはり黄鉄鉱の結晶はとても惹かれます。

ちょっと古いですが、『狼と香辛料』というアニメがあります。ラノベ原作ですが、テーマ(タイトルの「香辛料」部分の要素)が中世ヨーロッパ(を思わせる世界)の経済学という、どこかの大学の地味な論文か、と突っ込みたくなるような作品ですがw 2期前半で、黄鉄鉱が取り上げられています。商売上手な占い師と祭りの浮かれた空気がきっかけでお守りとして流行し、高騰した黄鉄鉱をめぐるお話。取引する商人たちはみんな黄鉄鉱にもともと価値などないことを分かっていながらも、ひと儲けしようとする、まさに「愚者の金」ですねw

まあメインのテーマは、タイトルの「狼」部分の要素、旅商人である主人公と一緒に旅するホロという少女のほうなのですが、架空の世界のファンタジーとはいえ、実際の中世ヨーロッパの歴史をもとに書かれていると思われるし、そもそも商業がメインのファンタジーなんて、他に見たことありません。なかなか面白いですので、おすすめ。

 

2020年11月22日 (日)

河津鉱山の金属様鉱物(静岡県下田市稲生沢川流域)1

下田・稲生沢川で見つけた、河津鉱山由来と思われる石についていた、金属光沢の鉱物をまとめました。

まとめたのは、特定できないものが多いからです。川原にあったというズリの石が残っていたのか、それとももっと最近に山から川に転げ落ちてきたものなのかも分かりません。鉱山のある川の奥に行ったことはないので、過去どういう状況であったか、現在どうなっているかも知りませんので。

当然、非常に範囲が広かったという河津鉱山のどこから出たものかも一切分かりません。ちなみに、拾った場所では、マンガン系の鉱物、銅の二次鉱物の類はまったくありませんでした。

川で拾ってきて、家でよく洗ってから細かく割って確認したものです(洗わないと病気になりそうだったのでw)。

 

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薄い膜状で石英にへばりついた、銀白色の金属様鉱物。いろいろと調べてみて、その産状から候補としては、河津鉱(Kawazulite Bi2Te2Se)、硫テルル蒼鉛鉱()、パラグアナファト鉱(Paraguanajuatite Bi2Se3)のどれかではないかと思うのですが。。。これ以上は無理。

表面が結構なめらかになっている部分があるのを見ても、ビスマスーテルル系っぽい。

河津鉱は非常に希少な鉱物ではあるけれど、天然のトポロジカル絶縁体として、物理学界隈では最先端のトピックとしてよく知られているようです。自分は詳しくないのでよく分かりませんが、トポロジカル絶縁体というのは、金属でも絶縁体でもない新しい種類の個体物質といえるもので、その内部は絶縁体になっていますが、表面では不純物の有無にかかわらず電子が高速で自由に動き回れるのだそうです。その電子の挙動の解析に、トポロジー(位相幾何学)が使われているため、トポロジカル絶縁体といわれています。

これまではそれほど利用価値の高くなかったテルルービスマスが、このような新たな概念によって注目を浴びるとは、面白いですね。電子の安定した挙動から、量子コンピュータでの利用などが期待されているそうですが、どうなることでしょう。

 

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どちらも1枚目の写真の近くについていたものですが、3枚とも同じものかどうか分かりません。1枚目のような膜状ではなく、とても細かい粒子の集合のように見えます。2枚目には結晶のような劈開部分も見えますし、六角形にくりぬかれたような部分もあって、面白いです。金属様部分の表面に水晶が生成したあとも若干育って水晶を取り囲み、石を割った時に衝撃で水晶がはずれてその跡だけが残ったのかな?

やはりビスマスーテルル鉱物のようにも思えるし、あるいはその結晶部分から自然テルルのような気もするのですが。。。なにしろ河津鉱山では似たような鉱物が何種類も産出していたので、なんともいえませんね。

この3枚とも、割った石英の表面、一面に散りばめられるようについています。縦に割れていれば薄い帯状だったのだろうと思いますが、金属様部分でうまく割れたのでしょうね。

分析しないことにはその正体は分からないでしょうが。。。あと10年くらいで、安価で手軽な分析器が出ないかなあw

2に続きます。

 

2020年11月19日 (木)

スコロド石(長野県茅野市向谷鉱山)

Scorodite Fe3+(AsO4)・2H2O 燐酸塩鉱物等

 

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細かい硫砒鉄鉱の間の隙間に、青白い半透明の球状の鉱物が見られました。拡大すると、非常に小さな粒々の集合のように見えます。これはスコロド石ではないかと思いますがどうでしょうか。淡い青色が魅力的です。

スコロド石は鉱山のズリなどで見られることの多い砒素の二次鉱物です。鉱山では硫砒鉄鉱は邪魔ものなので、ズリによく捨てられます。その集められた硫砒鉄鉱が風雨にさらされ酸化すると、砒素の部分が抜け、その砒素でスコロド石が生成されることが多いといいます。また、温泉水からもできます。

微小成分によって、青から緑を中心に、黄から褐色、紫などのさまざまな色になります。まれにきれいな柱状、両錘状の結晶になることもありますが、土状や塊、双晶して擬六面体・八面体などになったり、いろいろな形状をとります。こういうのはほんとに困りますね。上の写真のものは、とても小さな結晶が球状にまとまった姿だと思います。硫砒鉄鉱はいろいろなところで見られ、硫砒鉄鉱のあるところならスコロド石は大体あるそうですので、そんなに珍しいものではないのですが、いろいろな形、色、産状があるのでわかりづらく、そんなに意識することがないですね。大きくきれいな結晶なんてそうそうあるもんじゃないですし。

語源はギリシャ語のスコロドン(σκοροδον, skorodon)、ニンニクのことです。和名はそこから葱臭石(そうしゅうせき)。叩いたり、加熱すると、ニンニクやニラのような匂いがすることからつけられました。匂いが語源の石はスコロド石くらいじゃないでしょうか。まあ中には食べられる鉱物だってありますしね。。。(塩とか氷だって鉱物)

砒素を含む鉱石を叩き割るとこの匂いはよくするので、鉱物を探す人にはおなじみだと思います。実際、向谷鉱山で叩いている時、よくこの匂いがしました。山梨の黄金沢、鈴庫、本沢鉱山などでも、よくかぐ匂いです。こういう時は硫砒鉄鉱かスコロド石がついているのでしょうが、スコロド石は上に書いたように一定した姿、色ではないので、よく分からないんですよね。。。

その毒性から、硫砒鉄鉱と一緒に、殺鼠剤や殺虫剤の原料として使われていました。 砒素といえばカレー、もしかしたら砒素カレーはニンニク風味がついてたのかなどとつい考えてしまったのは、クラスのみんなには内緒だよっ☆

 

2020年11月14日 (土)

溶岩樹形(山梨県南都留郡鳴沢村)

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富士山北西麓、側火山地帯の溶岩樹形です。

火山が噴火して森の中に溶岩が流れ樹木を包み込むと、中の木はほぼ燃え尽きてしまいますが、溶岩が固まるまで消えずにがんばると、樹木の形が溶岩に残ります。それが溶岩樹形です。さらさらした川のように流れる溶岩でないとできないので、そのような粘度の低い溶岩のあまり多くない日本では結構珍しいのです。富士山や浅間山で見られますが、特に富士山周辺では多く残っています。

国の特別天然記念物にもなっている、観光などで見ることができる鳴沢の溶岩樹形は、貞観の噴火(864年)でできたものです。この噴火の際には、主に天神峠近くの氷穴火口列、長尾山(貞観の噴火でできた山)、大室山の北、本栖第2風穴のすぐそばにある石塚火口(地形図の1198峰)などから膨大な量の溶岩が流れました。いわゆる青木ヶ原樹海を作り出した溶岩流ですね。この時の溶岩樹形は、野尻草原周辺(下の地図の左上のまっ平らなところの一部が草原になっている)でも多く見ることができます。

上の写真の溶岩樹形は、貞観の噴火ではなくそれより以前、約1500年前頃に噴火したといわれる白大龍王・氷池溶岩流によるものです。

 

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氷池は、大室山よりさらに富士山に近いところにある、二つ並んだ噴火口です。山というより、富士山の斜面にあいた大きな穴といった感じで、巨大な岩がごろごろした底は夏でもひんやりとしています。写真の溶岩樹形はその氷池の南西斜面にあり、場所的に多分南の穴からの溶岩流でできたものかと思います。

特に1枚目の写真の穴は直径3mはある巨大なもので、自分が今まで見た溶岩樹形の中でもとびぬけて大きいです。噴火した時、かなりの大木だったんだろうなあ。見てみたかった。その時に全部燃え尽きてしまったのか、あるいは、しばらく裸の溶岩流あとにこの木だけ1本燃え残りが立っていたかもしれない。。。水気たっぷりのこれだけ大きな木だったら、そう簡単に全部燃えてなくならないんじゃないか。。。などと想像したり。

氷池の西側斜面は溶岩樹形が広い範囲で点在していて、歩くのが楽しいところです(植林されているところも多いが)。地形図には氷池の北にふらふらと道が描いてありますが、昨年(2019年)の台風のせいなのか、倒木が激しく、道がとても分かりづらくなっています。もともと氷池まではそんなに悩むようなところではなかったのに、台風のあとに行ったら、道筋をたどるのにかなり苦労しました。行く際はご注意を。まあこんなところに行く人だったら地形図とGPSをたよりにするでしょうから、「道に迷う」という状況はないでしょうけどねw

ちなみに自分は大室山の南で木に登っていたクマと会ったことがあります。食べ物を探すのに夢中だったのか、あわてて逃げていきました。西や南から大室山に登る人はあまりいないと思うけど、こっちがわは動物臭がとても強いので、気をつけたほうがいいかも。

 

上の地図にある山は、すべて側火山です。一度に噴火したものでなく、何百何千年かの休止期間をはさみ、何度も噴火を繰り返したという経過が記録された興味深い地形です。大抵割れ目に沿って数か所から噴火するので、火口が直線的に連なっていることが多いようです。その直線はほぼ、南東-北西のラインとなっています。

最近、富士山がもし噴火したら東京に火山灰が降って云々などとネットでよく見かけますが、これは前回の宝永噴火と同じ状況になったら、という仮定の上で予想された話。けれども、富士山では連続して同じ場所から同じような噴火が起こった例はほとんどないんじゃなかろうか。貞観の噴火は溶岩による被害がメインの噴火だったようだけれど、宝永の噴火では被害のほとんどは火山灰によるものだったし、場所も富士山の頂上をはさんで正反対です。一口に富士山の噴火といっても、まるっきり別物。富士山ほど火山学者を悩ませる存在はないかもしれませんね。。。

 

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氷穴の底に転がっていた溶岩のかけら。

 

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野尻草原から見た富士山。右手前の山は片蓋山(約3000年前、大室山と同時期の噴火)。頂上には立派な噴火口が残っている。

 

2020年11月12日 (木)

磁鉄鉱(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Magnetite Fe2+Fe3+2O4 酸化鉱物

 

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秩父鉱山は橋掛沢の、きれいな十二面体の磁鉄鉱です。

磁鉄鉱自体はもうどこにでもある鉱物ですが、黄鉄鉱と同じで、ありふれているからこそそのきれいな結晶が際立っていると思います。大抵はかたまり状か八面体の結晶ですが、肉眼で結晶という不思議を見ることができるのはやはり魅力的ですね。磁石を近づけると、すごい勢いで吸いつきます。

黄鉄鉱はあまり役にたちませんが、磁鉄鉱(の風化した砂鉄)は、たたら製鉄の原材料として、日本ではもっとも重要な鉱物のひとつでした。ちなみに「たたら」とは元々ふいごのことですが、次第に砂鉄と木炭を熱して鉄の原料を作る際の炉、さらには製鉄場のこともたたらといわれるようになりました。語源は、サンスクリット語の「熱」を意味するタータラ、ダッタン語の「猛火」を意味するタタトルからきているなどといろいろな説がありますが、いずれにせよインド・中央アジアあたりから伝わったもののようです。

磁鉄鉱といえば、自然の鉱物の中で最も磁気が強いものですが、それでも磁石といえるほどの強さはありません。さらに磁性が強くなって自ら砂鉄などを引き寄せるようになったものを天然磁石・ロードストーン(Lodestone、Loadstone)といいます。落雷の電流によって生成されるともいわれていますし、または磁鉄鉱が酸化・風化によって磁赤鉄鉱(Maghemite)となると、天然磁石になります。

ロードは道とか進路という意味で、リード(lead)と同じ語源を持ちます。人を導いてくれる羅針盤などからついた名前でしょう。

 

Magnetiteの語源ははっきりとはしていないのですが、ひとつは、古代ギリシャ・テッサリアのマグネシア(Μαγνησία)で磁鉄鉱がとれたので名前がついたという説があります(マグネテス人という人々が住んでいたらしい)。ただ、マグネシアには滑石の鉱山もあり、滑石からできた白い粉をマグネシアと呼んだ→マグネシウムの由来、という話もあり、実にややこしいことになっています。ここでは磁鉄鉱、滑石だけでなく、マンガンなども産出したようですね。さらに、ギリシャのマグネシアの人々が小アジアに移住し、現在のトルコにもマグネシアという地名が2か所あります。そして、そのうちの1か所からも磁鉄鉱は産出したようです。質が悪くあまりくっつかないという話が残っているので、多分ロードストーンではなくまさに磁鉄鉱だったんですね。

もうひとつ、プリニウスの「博物誌」には、ギリシャの詩人ニカンドロスによると、マグネスという羊飼いが放牧をしている時、偶然発見したので、その名前から命名されたという話が載っています。

。。。まあとにかくあのあたりが語源ってことですね(あやふや)。

羅針盤が作られたのは中国ですが(11世紀、宋の時代)、磁石は紀元前から「慈石」として知られていました。どうやら石が引き合うさまを、親子の慈しみになぞらえたようです。現在の中国河北省には磁県という地名がありますが、これは慈石が採れた慈石山という山があり、そこから慈州→磁州→磁県と変わってきたらしいです。

 

硫黄と同様、世界の磁鉄鉱史もかなり面白そうですね。多分調べれば調べるだけいろいろと出てきそうですが、きりがないので、このへんにしときます。

 

2020年11月 8日 (日)

水苦土石(群馬県藤岡市八塩鉱山)

Hydromagnesite Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O 炭酸塩鉱物等

 

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水苦土石は、学名やそれを直訳した日本語名の通り、水とマグネシウムを主要な成分とする鉱物です(苦土はマグネシウムのこと)。

写真の通り、薄い板状で先の尖ったソードのような透明結晶が放射状または球顆状に集合することが多く、蛇紋岩中に産し、表面にいっぱいへばりついているのはなかなか見映えのするものです。

ここでは他に似たような鉱物として、アルチニー石やあられ石もありますが、先の尖った形ですぐに見分けがつくと思います(かなり小さいですけど)。あられ石もやっぱり放射状の白い結晶が石にへばりついていますが、水苦土石とはサイズが違い、数センチレベルの大きさがあります。自分が見た限りでは、大きいのは大体あられ石ですね。あと水苦土石は純白ですが、あられ石はちょっと濁っていて光沢がない感じ。

下2枚の写真の部分は先端の形をはっきり確認できないのですが、すべて板状の結晶の集合のように見えるので、水苦土石としています。アルチニー石は針状・繊維状になるとのこと、見たことないけど、モルデン沸石みたいな感じでしょうかね? もしかしたら下2枚はアルチニー石の可能性もなきにしもあらず?

 

クロムやあられ石を採掘していたという八塩鉱山跡は、群馬県と埼玉県の県境にあります。利根川の支流のひとつ、神流川沿いの八塩温泉、その上の御倉御子神社の背後の山の中にちょっと入ったところです(川向うは埼玉県)。下に弁天山・桜山ハイキングコースのための駐車場もあり(付近のコース地図も置いてあった)、ポイントは弁天山展望台のすぐそばなので、それほど遠くもなく、便利もよいです(神社の駐車場まではうちの車では入れなかったし、使わない方がいいと思う。歩いても大した距離じゃないです)。

すぐ南には、神流川の支流で地質学的には名の知れた三波川があります。日本最大の広域変成帯のひとつである三波川変成帯はこの周辺を東限として、中央構造線に沿って、西に向かって紀伊半島、四国、九州と日本列島を横断して続いています(このブログでも、オンファス輝石角閃石岩(愛媛県四国中央市関川流域)でとりあげています)。

実際、鉱山に行く途中の林道中、きらきら輝く膜のへばりついた石英の塊がよく落ちているのですが、それを見たとき、四国・別子鉱山の近くの渓谷で見た石とそっくりだなぁと思ったのです(もしかしたらこのあたりの沢とかで、藍晶石とか見つかりませんかね?)。ちなみに、下の駐車場にも大きな石英がころがっていたり、ポイントに行く途中、滑石の露頭があったりと、鉱山そのもの以外でも興味深いものが多く見られます(どちらも鉱山のズリにはまったくない)。神社の石段にも、石英の脈が走っていたり、さすが三波川(周辺には他にいくつも鉱山跡があります)。

鉱山直上には弁財天、山の神の祠と展望台がありますが、展望台にも青緑に縞模様の入った三波川の結晶片岩・三波石が置かれているので、ついでに見に行くといいかも?(天気が良ければ日光の山々、筑波山とちょこっと赤城山も見えてお休みどころですが、工場の音がうるさいかもしれない。。。)

 

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八塩鉱山の坑口。坑口前の広場にはトロッコのレールや石組が多く残っている。

 

2020年11月 5日 (木)

銅藍(静岡県下田市稲生沢川流域)

Covellite CuS 硫化鉱物

 

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河津鉱山由来と思われる、銅藍です。

黄銅鉱、黄鉄鉱などのついた石を割ったところ、黒っぽい藍青色が姿を現しました。最初は黄銅鉱の酸化被膜かとも思ったのですが、よく見ると小さいながらも板状になっているようですので、銅藍であろうと考えました。被膜状や時に六角形の美しい姿をとる銅藍は、あこがれの標本のひとつだったので、汚い川から拾った思いもしなかったこの標本にはびっくりしました。

火山などでも産出することがあるようですが、多くの場合、硫化鉱の二次鉱物として生成されます。銅と硫黄だけの化学式がシンプルでいいですね(鉄などが混じる場合もある)。

鉱物の魅力の大きな要因がその色ですが、青から緑になることが多い銅の二次鉱物は、もっとも好きなもののひとつです。藍銅鉱をメタリックにしたような、時に虹色の光彩をはなつ銅藍は、中でも美しさが際立っていると思います。

人(標本)によってイメージは全然違うと思うけれど、自分的には、白から緑に変化する孔雀石は白い花崗閃緑岩とコケの色。青緑のブロシャン銅鉱は、ちょっと深いサンゴ礁の海の色、あるいはユーシンブルー。藍銅鉱は、高山で仰ぎ見る深い吸い込まれそうな紺碧の空。水亜鉛銅鉱は春のぼんやりと霞んだ淡い水色の空。銅藍はもっと人工的、都会的な金属の色ですね。音でいえば、プリペアード・ピアノって感じかな(現代音楽のジョン・ケージが「発明」した、ピアノの弦にいろんなものをはさんで変な音にする奏法or楽器です。ケージ以外あまり使っている人はいないw ポップス系では、デヴィッド・シルヴィアンと、うみぬこPくらいしか知らないw)。

 

それにしても色というのはなんなのでしょうね。鉱物を構成する元素によって明らかに色は変わってきますが、いろんな色の光を当てれば、表面の色もそれに合わせて変わってきます。また錯視のように、色のないところに色を感じることもあります。

色というのは、物体の表面の性質や光の波長などの物理的な性質ではなく、人間の脳による「感覚」であるという考えが最近あるようです。つまり、もともとこの世界には「色」というものは存在せず、人間の脳が作り出す「概念」であるということでしょうか。。。人間がいなければ今あるこの「世界」は存在しないというとおおげさですが、でもこれは実際その通りなので、人間の可視光とはまったく違う波長しか見えない生物しかいなければ、世界の姿はずいぶん違うわけです。あるいは、光(音、匂い、触覚でも)を認識しない生物しかいない世界であれば、世界の姿はまったく異なるし、光で認識する世界はそこでは存在しないということになる(誰も認識できなければ、存在するとはいえない)。

いやそんなことはない、誰も知らなくても存在しているのだ、という人がいるかもしれない。でもそれは、自分たちがそれが「存在」している、と知ってるからそう思うだけではないか。たとえばAという鉱物があって、ある時点でそのAとそっくりなBという鉱物が見つかったとします。Bという鉱物は、発見され「B」という名前がつけられる前から存在したのか? 存在はしていないと考えられます。それ以前にあったのはAだけで、Bという鉱物は「B」という名前がつけられた時点からしか存在しえない。その違いを認識しない段階では、その違いは存在しないのです。違うことを認識できないのではなく、違いそのものが存在していないのです。

ただ逆にいえば、色というものが「概念」であり物体の色はその物体の物理的性質ではない、としても、色で世界を認識する意識が存在する、ということだけで、色は本質である、ということもいえやしないか。。。認識することそのものが世界を決定するのならば、色で鉱物の種類を視認する意識があることによって、色は本質であると「設定」されるのではないか。。。宇宙とは、常にそのように再設定され続けている、定数など存在していない流動的なものなんじゃなかろうか。。。

 

まあ哲学ごっこも飽きてきたのでもうやめますがw 鉱物の色はなんとも不思議で美しいものであることであることよなあ(古文の授業風に)、と思うわけです。。。

 

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