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2020年7月 9日 (木)

ラング石(栃木県日光市小来川鉱山)

Langite Cu4(SO4)(OH)6・2H2O 硫酸塩鉱物等

 

Langite_okorogawam_01

Langite_okorogawam_02

 

小来川鉱山のラング石。

以前の記事の石、ポスンジャク石(栃木県日光市小来川鉱山)とは、同質異像の関係にあります。ポスンジャク石は鱗片状でしたが、こちらはもっと透明で四角く、結晶っぽいですね。空色のきれいな銅の二次鉱物です。単斜晶系の形がよくわかります。

名前は、オーストリアの物理学者、ヴィクトル・フォン・ラング(Viktor von Lang, 1838-1921)にちなんだものです。結晶学の創始者のひとりだそうで、けっして悪名高き内務省のハイドリッヒ・ラングではありませんw

原産地はイギリスのコーンウォル。ヨーロッパで採れるところが多いようですが、これは古い鉱山が多いから二次鉱物も多く目につきやすい、ということでしょうか。

写真のラング石は、上記のポスンジャク石と同じ石についていました。確か、沢を遡ってレール跡が出てくる直前の露頭の付近で拾ったものです。割と稀産の部類に入るものだと思いますが、小来川ではそれほど苦労せず見つけた感じです。銅の二次苦物が好きな自分にとっては、沢に緑の石がごろごろしている小来川は、もう一度行ってもっと探索したいところですが、なかなか遠いんですよね。。。

ポスンジャク石の化学式とは、H2Oが2H2Oになっただけの違いしかありません。

同じ素材が、どうしてこんなに違う結晶になるのか、そのきっかけはなんなんでしょう。その場の温度やら湿気やら日の当たり具合とか、石墨とダイヤモンドのように、環境の違いもあるのだろうとは思いますが、あるいは偶然、確率的なものなんでしょうか。結晶そのものの生成に関しても、同じ疑問を感じます。なにかきっかけがあるのか。種のようなものを必要とするのか。

 

結晶というものがどうしてこんなに人を惹きつけるのか。

ふと、錬金術の賢者の石を思い出しました。化学的な現象に仮託した、生命(人間の精神)の秩序の象徴=結晶が、賢者の石といえるのではないか。ランダムな現象である世界における秩序の表象=結晶。確率の海に浮かぶ結晶、無限に続く乱数の中に偶然現れる、意味のある数列のイメージ。

結晶といえば、J.G.バラードの『結晶世界』も思い出します(個人的には『結晶世界』と『夢幻会社』がバラードの最高作だと思います)。すべてのもの(時間さえも、多分精神も)が結晶化していく世界を描いたこのSFは、破滅小説といわれるけれども、バラードの破滅ものはほとんどがそうですが、永遠なるものへの憧憬、強いベクトルを感じさせる作品です。この永遠とは、上記の賢者の石のイメージと重なるものであり、シュールレアリスムやユングの思想の目指す先とも同じものではないかと感じます。

こういうのをまとめて、結晶哲学といったらどうでしょう。

そういえば、生命の誕生、有機物質の組織化に、粘土鉱物の結晶が関与しているという説もありました。詳細は知りませんが、無機物と有機物を繋げる、とても魅力的な話です。

なんちゃらパワー的な怪しげな水晶などの話も、ネットではけっこう目につきますが、こういうのも結晶に対する人間の指向の表れだとすれば、笑い飛ばすだけではなく、そのもつ意味合いを考えてみるのもあながちムダとはいえないかもしれませんね(結晶社会学とでもいうべきか)。

 

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