マンガンパンペリー石(神奈川県秦野市水無川流域)
Pumpellyite-(Mn2+) Ca2Mn2+Al2(Si2O7)(SiO4)(OH)2・H2O 珪酸塩鉱物
湘南の海沿いの国道134号線で、渋滞で有名な花水川。水無川はその上流部にあたり、源流は丹沢の塔ノ岳になります。
『神奈川県産鉱物目録』によると、マンガンパンペリー石は、丹沢の高松鉱山においては「微細な柱状結晶の放射状集合からなる塊状物質をなしてカリオピライト・石英などと産する」、大日鉱山においては「微細な柱状結晶の集合からなる淡肉灰色塊状集合をなす。共存する紅簾石より色が淡い」(加藤昭・木島勇著『神奈川県産鉱物目録』神奈川自然誌資料(17)、1996)。
大日鉱山は、水無川の源流近くにあります。薄い肉色で、放射状になっているので、マンガンパンペリー石で間違いないと思いますが、どうでしょうね。色の濃いところは紅簾石のようです。黒いのはブラウン鉱か。
マンガンパンペリー石は、上記の著者加藤昭他によって1981年に発表された日本産の新鉱物で、山梨県の南アルプスの玄関口・芦安近くの落合鉱山で発見されました。なにげに日本では産地がかなり限られている鉱物です。
日本はマンガン鉱物がとても豊富で、欧米の鉱物好きには、輝安鉱などよりも珍しがられるそうです(欧米ではマンガンの産地があまりない)。でも、きれいな結晶になるものも少ないし、見た目地味なものが多いので、見わけもよくつかず、手をつけづらい鉱物種です。自分も、マンガン産地というのは、ほとんど訪れたことはありません。もうちょっと勉強しないとね。
水無川をさかのぼり、本谷沢まで行くと、濃い紫がかったマンガン系と思われる石がたくさん落ちていますが、あんまり意識して見たことはないです。本谷沢・セドノ沢沿いに大日鉱山の鉱山道を下地にした書策(かいさく)新道がありますが、新道といいつつもはや廃道で、道標もなければ、途中で何か所か崩壊してたりもするので、もの好きか沢登りの人しか行かないところです。セドノ沢の道をはずれてすぐのところに、今でも大日鉱山の試掘跡が口を開けているのを見ることができます。
大日鉱山については、詳しくは〇福氏の「丹沢の鉱山跡を探る 3」を参照してください。
自分にとっては、本谷沢は、子どものころよく遊びに行った故郷みたいなところです。出合のすぐそばの山小屋にいつも行っていて、小屋のねこやいぬと遊ぶのに飽きると、近くの本谷沢に行って石を拾ったりして遊んでいましたが。。。もしきれいな沸石でも見つけてたら、そのまま石が趣味になってたかもしれないw
その山小屋(仲小屋)はもともと大日鉱山の宿舎で、北村政次郎氏が譲り受けて、山小屋にしました(当時は名前など知らず、おじいと呼んでいた)。小屋そのものは、まだ結構しっかりと残っていますが、もう当時の記憶がある人も、ずいぶん少なくなってきたんじゃないでしょうか。
今では、政次郎氏が道をつけた、小屋の裏手からの尾根を政次郎尾根、表尾根に登りつめた小ピークを政次郎の頭と言うようになりました。地名になっちゃったねぇw 今思うに、もともと大日鉱山で働いていたのかもしれませんが、自分が子どものころに亡くなったので、確かめるすべはありません。
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