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2020年5月26日 (火)

氷長石(長野県川上村甲武信鉱山)

Adularia KAlSi3O8 珪酸塩鉱物

 

Adularia_kobushim_01

 

結晶の形から、透明な氷長石の結晶だと思います。

長石はいろいろな種類がありますが、氷長石は、カリウムを主成分とするカリ長石のグループに含まれる、正長石の仲間です。

ネット上や鉱物の本にある甲武信鉱山の氷長石の写真を見ると、大きな白濁した標本ばかりで透明なものはほとんど出ていませんが、顕微鏡サイズだとこんな透明なものもあるんですね(ちなみに、この石は氷長石の出るポイントではないところで拾ったものです。どこだったかなあ、その近くの緑水晶のポイントだったか)。

英名のアデュラリアは、イタリアに近いスイス南部のアデュラ山からきています。イタリアでアデュラ山というと、その山域の最高峰3402m峰のこと。ドイツ語だと同峰はラインヴァルトホルンといい、アデュラといえば、アデュラ・アルプスという広い山域のことを指すとか。ややこしい。

この石を最初に報告したのはイタリアの自然研究者、建築家のエルメネジルド・ピニ(1739-1825)ですが、スイスを旅行中に手に入れたとのこと。どちらの意味でアデュラと名付けたんでしょうね。現地の人にどこで拾ったか聞いたら「ああこれはアデュラのあたりの沢で拾ったんじゃよ」(UFO特番のインタビュー吹替風に)みたいな? ところで、ゲーテはこのピニとミラノで会ったそうですが、その時に氷長石を見せてもらったようです。ハルツ旅行中に輝く真っ白い方解石を見つけて「ピニのもっていた氷長石を思い出した」と日記に書いています(木村直司編訳『ゲーテ地質学論集・鉱物篇』筑摩書房、2016年)。鉱物の話題で盛り上がったんでしょうねぇ。

自然研究者、科学・数学分野の専門家であり文学者でもある人物といえば、日本の寺田寅彦、ペルシャのオマル・ハイヤームなどがいますが、やはりゲーテはちょっと他に比べるもののない一頭地を抜く存在です。さらに政治家でもあるというのは、ちょっと想像を越えています。

自分は学生のころ、ドイツ詩の授業(山口四郎先生)をとっていましたが、ゲーテの詩ほど完璧に詩形にのっとり、なおかつ想像喚起力に満ち溢れたものは他にはないなあと思ったのを覚えています。またいまでも覚えている数少ないドイツ語の授業で、物理学者のハイゼンベルクのゲーテについての講演を取り扱ったものがありました。ゲーテの原植物(Urpflanzen)について、DNAを思わせるなどと語っていたのがすごく印象的でした。考えてみれば、DNAは原植物であると同時に原動物でもあるわけで。。。(ゲーテにとっての原植物が観念論でなく現実に存在するはずだという考え方は、あくまでフィールドワークを中心としたゲーテらしいところで、好きだなあw)

岩石については、ゲーテはヴェルナーの影響で水成論をとっていたようですが、フンボルトの火成論以降はかなり揺れていたようです。ちょうどそういう時代だったということでしょうね。光の粒子論と波動論もそうですが(ゲーテの色彩論)、定説が確立していない時代に生きていたら面白かっただろうなあと思います。

 

まあ一言でいうと、楽しそうに採集旅行にいそしむゲーテは、鉱物好きにとっては偉大な大先輩なのですw

 

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