チタン鉄鉱(山梨県甲州市柳沢峠)―B2
Ilmenite Fe2+Ti4+O3 酸化鉱物
前回・閃亜鉛鉱?(山梨県甲州市柳沢峠)からの続きです。
六角形を基本とした形状で、磁鉄鉱ほどではないとしても、結構強い磁性を持っています。
ということはやっぱりどこか上流にペグマタイトが露出しているところがあるってことですね。
このあたりの地質を大きく見ると、甲府花崗岩体の徳和バソリスに属します(広範囲に地下深部でできた花崗岩などが地表に露出しているものをバソリスという)。徳和バソリスは、御坂峠周辺(藤野木・愛川構造線)を南限として、そこから北上し、雁ヶ腹摺山・黒岳、大菩薩峠、柳沢峠、雁坂峠、甲武信岳、大弛峠、さらに南下して琴川ダムあたりまで含む、広い範囲です。御坂峠から大弛峠まで延々と稜線を繋いだイメージですね。
徳和というと、乾徳山や黒金山の登山口として知られていますが、乾徳山や黒金山自体は徳和バソリスではありません。
ところで黒金山という山名も、鉱物好きにとっては、ちょっと気になります。場所的には鉱山等あってもまったく不思議のないところですが、そういう話を聞きません(黒金山から稜線ぞいに国師岳方面に向かうと、デュモルチ石で知られる京の沢があります。一度行ってみたいんですが、距離もあってビバーク必須か。。。)。
『和名類聚抄』の宝貨部に、「銕[𨮘鉄附]説文云銕[他結反和名久路加禰此間一訓禰利]黒金也唐韻云𨮘[音賓]𨮘銕為刀甚利」とあるので、 黒金とは銕=鉄のことです。鉄鉱石として使われた、赤鉄鉱、磁鉄鉱、針鉄鉱、鱗鉄鉱、菱鉄鉱などの鉱山があったのかもしれません。
徳和バソリスの花崗岩は磁鉄鉱が多いそうですが、大菩薩の周辺は泥質岩に接しているためチタン鉄鉱が多いとのこと(TreckGEO大菩薩峠)、柳沢峠も同じということかな。
ネットで調べていて、柳沢峠の古い水晶坑のことが出ている文献がありました。「…柳沢峠付近のペグマタイト中(古い水晶坑)でソウ長石の 内部に点在する緑レン石に黒色のカツレン石がはめこまれて産する…」(木村幹「東洋産含希元素鉱物の化学的研究(第56報)山梨県大菩薩峠産カツレン(褐簾)石」『日本化学雑誌』第81巻第8号、1960年)。これだけです。こちらにはチタン鉄鉱についての記述はありません。
『日本希元素鉱物』は実際に実物を見たわけでないので、引用しづらかったのですが、Amazonで見てみたら中古も何点かあるのだけれど、すべて10万円前後でした。うん、買えませんねw
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