▼はじめに

自分にとって、鉱物の魅力は、色、透明感、硬さなどいろいろありますが、やっぱり結晶の幾何学的な形状、そしてそれが分子配列を直接反映している、という点にあります。

石(鉱物)という手にとって見ることができる小さなものから、宇宙の均整と数学的な本質を感じることができるというところに、人はひかれるのかもしれません。簡単な数字の列で世界を表現している、方程式の美しさに通じるものがあると思います。

なかでも、黄鉄鉱は割とどこでもあり、しかも結晶の美しさが際立っています。自然にできたとは到底思えない正方形の輝く結晶から、鉱物の魅力にとりつかれたという人も多いのではないでしょうか。

自分も、いろいろ見てきましたが、やっぱり黄鉄鉱が一番好きです。

 

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ここでは、鉱物の、主に顕微鏡で撮った写真をアップしていきます(石ころや岩石も扱います)。

採集をはじめて、まだ2、3年といったところだし、買ったり売ったりはなし、山を掘るのもあまり好きではなく(ズリはのぞく)、基本的に沢やズリなどでの表面採取が中心ですので、大したものはありません。

ただそれでも、顕微鏡を使えば結構いろいろ見つかるものです。

特に南関東~山梨南部~伊豆周辺の山ならば、よほど険しいところでなければ割と歩きなれているので、地形図、地質図などを参考にしながら狙いをさだめ、ちょっと石を拾ってきては顕微鏡で観察をしています。

微細な鉱物ばかりですので、正直鉱物の同定に関しては、まったく自信はありません(硬さを調べることも薬品を使うこともなかなかできないので)。おかしなことを書いているかもしれないので、信用はしないようにw

何だか分からないものも、積極的に出していきます。まったく見当のつかないもの、こうではないかとアタリをつけた(けれども自信のない)もの、すべて写真として面白いものかどうかを優先しています。よって、間違いも多いと思います。ご承知ください。

本当はスケールも記すべきなんでしょうけど、あくまでも鑑賞用ということで、つけません。スケールをつけるの、大変なんですよねw なかなかうまい方法が見つかりません。基本的に、顕微鏡で20~40倍、さらに撮影した写真の端はトリミングします。ものによっては、ルーペでも確認するのが難しい大きさになります。

鉱物の分類表記に関しては、デジタル鉱物図鑑を参照しています。


▼分類別リスト

▼産地別リスト

 

2020年11月26日 (木)

河津鉱山の金属様鉱物(静岡県下田市稲生沢川流域)2

下田・稲生沢川で見つけた、河津鉱山由来と思われる金属光沢鉱物のまとめ、つづきです。

 

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結構立派な姿の金属鉱物です。繊維状の見かけから、輝蒼鉛鉱()のように見えますが、どうでしょうね。

最初真っ黒で金属系にはまったく見えなかったのですが、洗ってみたらきらきらしだしました。

何もめぼしいものがついていないように見えた石が、洗うにつれてさまざまな鉱物が現れてくるのはほんとに楽しいですね。でも最近はあまりごしごし洗わなくなりました。ピカピカなのも、風情がないですし、洗っていると楽しくてつい夢中になり、あとからなんか面白いものまで洗い落としてしまったんじゃないかと心配になったりするのでw

 

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こちらはちょっと茶色が入ったような箔がけば立った感じの金属様鉱物。針でつつくと、触れただけでぐにゃっとつぶれてしまうくらい、もろいものです。

すぐそばの高根山鉱山で、これと似たものを見たことがあります。前回、マンガン系鉱物はまったく見かけなかったなどと言った舌の根も乾かぬうちからなんですがw この少し赤味が入った色ともろさは、ランシー鉱()ではないでしょうか。

河津鉱山と高根山は、稲生沢川を挟んで、ほとんど向かい合わせといっていいくらい近いですが、それぞれ特徴のある鉱山です。周辺には他にも珍しいものが出る産地があちこちにあって、ほんとに南伊豆は面白いですねぇ。

この辺は、鉱物を売りにして、全面に出してもいいんじゃないかと思うくらいですが、そういう気はないんですかね。伊豆はジオパークを割と観光のメインにしているような気がしますが、その一環として、河津鉱山など、入場料をとって鉱物を採集できるようにするのもありだと思うんですけどね。世界的にもあれだけ稀少な鉱物が多く出る産地はそうそうないと思いますし。お金がちょっとかかろうとも、安心して採集できるならその方が気が楽だし、産地の管理という意味でもいいと思うのですが。。。

温泉などもそうですが、出るところでは、それがあるのが当たり前と思ってるんじゃなかろうか。ないところから見ると、とてももったいないと感じることがあります。温泉のかけ流しとか、お湯を手に入れるにはガスや電気代が必要なところに住む自分には、資源の無駄づかいにしか見えないのだ。河津鉱山の稀少鉱物も、興味がなければ単なる石ころにすぎないし、日本では(採集を中心とした)鉱物趣味ははやんないんだろうなあ。。。

 

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こちらは黄鉄鉱ですね。あまり大きな結晶はないのかな? とても小さいけれど、やはり黄鉄鉱の結晶はとても惹かれます。

ちょっと古いですが、『狼と香辛料』というアニメがあります。ラノベ原作ですが、テーマ(タイトルの「香辛料」部分の要素)が中世ヨーロッパ(を思わせる世界)の経済学という、どこかの大学の地味な論文か、と突っ込みたくなるような作品ですがw 2期前半で、黄鉄鉱が取り上げられています。商売上手な占い師と祭りの浮かれた空気がきっかけでお守りとして流行し、高騰した黄鉄鉱をめぐるお話。取引する商人たちはみんな黄鉄鉱にもともと価値などないことを分かっていながらも、ひと儲けしようとする、まさに「愚者の金」ですねw

まあメインのテーマは、タイトルの「狼」部分の要素、旅商人である主人公と一緒に旅するホロという少女のほうなのですが、架空の世界のファンタジーとはいえ、実際の中世ヨーロッパの歴史をもとに書かれていると思われるし、そもそも商業がメインのファンタジーなんて、他に見たことありません。なかなか面白いですので、おすすめ。

 

2020年11月22日 (日)

河津鉱山の金属様鉱物(静岡県下田市稲生沢川流域)1

下田・稲生沢川で見つけた、河津鉱山由来と思われる石についていた、金属光沢の鉱物をまとめました。

まとめたのは、特定できないものが多いからです。川原にあったというズリの石が残っていたのか、それとももっと最近に山から川に転げ落ちてきたものなのかも分かりません。鉱山のある川の奥に行ったことはないので、過去どういう状況であったか、現在どうなっているかも知りませんので。

当然、非常に範囲が広かったという河津鉱山のどこから出たものかも一切分かりません。ちなみに、拾った場所では、マンガン系の鉱物、銅の二次鉱物の類はまったくありませんでした。

川で拾ってきて、家でよく洗ってから細かく割って確認したものです(洗わないと病気になりそうだったのでw)。

 

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薄い膜状で石英にへばりついた、銀白色の金属様鉱物。いろいろと調べてみて、その産状から候補としては、河津鉱(Kawazulite Bi2Te2Se)、硫テルル蒼鉛鉱()、パラグアナファト鉱(Paraguanajuatite Bi2Se3)のどれかではないかと思うのですが。。。これ以上は無理。

表面が結構なめらかになっている部分があるのを見ても、ビスマスーテルル系っぽい。

河津鉱は非常に希少な鉱物ではあるけれど、天然のトポロジカル絶縁体として、物理学界隈では最先端のトピックとしてよく知られているようです。自分は詳しくないのでよく分かりませんが、トポロジカル絶縁体というのは、金属でも絶縁体でもない新しい種類の個体物質といえるもので、その内部は絶縁体になっていますが、表面では不純物の有無にかかわらず電子が高速で自由に動き回れるのだそうです。その電子の挙動の解析に、トポロジー(位相幾何学)が使われているため、トポロジカル絶縁体といわれています。

これまではそれほど利用価値の高くなかったテルルービスマスが、このような新たな概念によって注目を浴びるとは、面白いですね。電子の安定した挙動から、量子コンピュータでの利用などが期待されているそうですが、どうなることでしょう。

 

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どちらも1枚目の写真の近くについていたものですが、3枚とも同じものかどうか分かりません。1枚目のような膜状ではなく、とても細かい粒子の集合のように見えます。2枚目には結晶のような劈開部分も見えますし、六角形にくりぬかれたような部分もあって、面白いです。金属様部分の表面に水晶が生成したあとも若干育って水晶を取り囲み、石を割った時に衝撃で水晶がはずれてその跡だけが残ったのかな?

やはりビスマスーテルル鉱物のようにも思えるし、あるいはその結晶部分から自然テルルのような気もするのですが。。。なにしろ河津鉱山では似たような鉱物が何種類も産出していたので、なんともいえませんね。

この3枚とも、割った石英の表面、一面に散りばめられるようについています。縦に割れていれば薄い帯状だったのだろうと思いますが、金属様部分でうまく割れたのでしょうね。

分析しないことにはその正体は分からないでしょうが。。。あと10年くらいで、安価で手軽な分析器が出ないかなあw

2に続きます。

 

2020年11月19日 (木)

スコロド石(長野県茅野市向谷鉱山)

Scorodite Fe3+(AsO4)・2H2O 燐酸塩鉱物等

 

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細かい硫砒鉄鉱の間の隙間に、青白い半透明の球状の鉱物が見られました。拡大すると、非常に小さな粒々の集合のように見えます。これはスコロド石ではないかと思いますがどうでしょうか。淡い青色が魅力的です。

スコロド石は鉱山のズリなどで見られることの多い砒素の二次鉱物です。鉱山では硫砒鉄鉱は邪魔ものなので、ズリによく捨てられます。その集められた硫砒鉄鉱が風雨にさらされ酸化すると、砒素の部分が抜け、その砒素でスコロド石が生成されることが多いといいます。また、温泉水からもできます。

微小成分によって、青から緑を中心に、黄から褐色、紫などのさまざまな色になります。まれにきれいな柱状、両錘状の結晶になることもありますが、土状や塊、双晶して擬六面体・八面体などになったり、いろいろな形状をとります。こういうのはほんとに困りますね。上の写真のものは、とても小さな結晶が球状にまとまった姿だと思います。硫砒鉄鉱はいろいろなところで見られ、硫砒鉄鉱のあるところならスコロド石は大体あるそうですので、そんなに珍しいものではないのですが、いろいろな形、色、産状があるのでわかりづらく、そんなに意識することがないですね。大きくきれいな結晶なんてそうそうあるもんじゃないですし。

語源はギリシャ語のスコロドン(σκοροδον, skorodon)、ニンニクのことです。和名はそこから葱臭石(そうしゅうせき)。叩いたり、加熱すると、ニンニクやニラのような匂いがすることからつけられました。匂いが語源の石はスコロド石くらいじゃないでしょうか。まあ中には食べられる鉱物だってありますしね。。。(塩とか氷だって鉱物)

砒素を含む鉱石を叩き割るとこの匂いはよくするので、鉱物を探す人にはおなじみだと思います。実際、向谷鉱山で叩いている時、よくこの匂いがしました。山梨の黄金沢、鈴庫、本沢鉱山などでも、よくかぐ匂いです。こういう時は硫砒鉄鉱かスコロド石がついているのでしょうが、スコロド石は上に書いたように一定した姿、色ではないので、よく分からないんですよね。。。

その毒性から、硫砒鉄鉱と一緒に、殺鼠剤や殺虫剤の原料として使われていました。 砒素といえばカレー、もしかしたら砒素カレーはニンニク風味がついてたのかなどとつい考えてしまったのは、クラスのみんなには内緒だよっ☆

 

2020年11月14日 (土)

溶岩樹形(山梨県南都留郡鳴沢村)

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富士山北西麓、側火山地帯の溶岩樹形です。

火山が噴火して森の中に溶岩が流れ樹木を包み込むと、中の木はほぼ燃え尽きてしまいますが、溶岩が固まるまで消えずにがんばると、樹木の形が溶岩に残ります。それが溶岩樹形です。さらさらした川のように流れる溶岩でないとできないので、そのような粘度の低い溶岩のあまり多くない日本では結構珍しいのです。富士山や浅間山で見られますが、特に富士山周辺では多く残っています。

国の特別天然記念物にもなっている、観光などで見ることができる鳴沢の溶岩樹形は、貞観の噴火(864年)でできたものです。この噴火の際には、主に天神峠近くの氷穴火口列、長尾山(貞観の噴火でできた山)、大室山の北、本栖第2風穴のすぐそばにある石塚火口(地形図の1198峰)などから膨大な量の溶岩が流れました。いわゆる青木ヶ原樹海を作り出した溶岩流ですね。この時の溶岩樹形は、野尻草原周辺(下の地図の左上のまっ平らなところの一部が草原になっている)でも多く見ることができます。

上の写真の溶岩樹形は、貞観の噴火ではなくそれより以前、約1500年前頃に噴火したといわれる白大龍王・氷池溶岩流によるものです。

 

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氷池は、大室山よりさらに富士山に近いところにある、二つ並んだ噴火口です。山というより、富士山の斜面にあいた大きな穴といった感じで、巨大な岩がごろごろした底は夏でもひんやりとしています。写真の溶岩樹形はその氷池の南西斜面にあり、場所的に多分南の穴からの溶岩流でできたものかと思います。

特に1枚目の写真の穴は直径3mはある巨大なもので、自分が今まで見た溶岩樹形の中でもとびぬけて大きいです。噴火した時、かなりの大木だったんだろうなあ。見てみたかった。その時に全部燃え尽きてしまったのか、あるいは、しばらく裸の溶岩流あとにこの木だけ1本燃え残りが立っていたかもしれない。。。水気たっぷりのこれだけ大きな木だったら、そう簡単に全部燃えてなくならないんじゃないか。。。などと想像したり。

氷池の西側斜面は溶岩樹形が広い範囲で点在していて、歩くのが楽しいところです(植林されているところも多いが)。地形図には氷池の北にふらふらと道が描いてありますが、昨年(2019年)の台風のせいなのか、倒木が激しく、道がとても分かりづらくなっています。もともと氷池まではそんなに悩むようなところではなかったのに、台風のあとに行ったら、道筋をたどるのにかなり苦労しました。行く際はご注意を。まあこんなところに行く人だったら地形図とGPSをたよりにするでしょうから、「道に迷う」という状況はないでしょうけどねw

ちなみに自分は大室山の南で木に登っていたクマと会ったことがあります。食べ物を探すのに夢中だったのか、あわてて逃げていきました。西や南から大室山に登る人はあまりいないと思うけど、こっちがわは動物臭がとても強いので、気をつけたほうがいいかも。

 

上の地図にある山は、すべて側火山です。一度に噴火したものでなく、何百何千年かの休止期間をはさみ、何度も噴火を繰り返したという経過が記録された興味深い地形です。大抵割れ目に沿って数か所から噴火するので、火口が直線的に連なっていることが多いようです。その直線はほぼ、南東-北西のラインとなっています。

最近、富士山がもし噴火したら東京に火山灰が降って云々などとネットでよく見かけますが、これは前回の宝永噴火と同じ状況になったら、という仮定の上で予想された話。けれども、富士山では連続して同じ場所から同じような噴火が起こった例はほとんどないんじゃなかろうか。貞観の噴火は溶岩による被害がメインの噴火だったようだけれど、宝永の噴火では被害のほとんどは火山灰によるものだったし、場所も富士山の頂上をはさんで正反対です。一口に富士山の噴火といっても、まるっきり別物。富士山ほど火山学者を悩ませる存在はないかもしれませんね。。。

 

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氷穴の底に転がっていた溶岩のかけら。

 

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野尻草原から見た富士山。右手前の山は片蓋山(約3000年前、大室山と同時期の噴火)。頂上には立派な噴火口が残っている。

 

2020年11月12日 (木)

磁鉄鉱(埼玉県秩父市秩父鉱山)

Magnetite Fe2+Fe3+2O4 酸化鉱物

 

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秩父鉱山は橋掛沢の、きれいな十二面体の磁鉄鉱です。

磁鉄鉱自体はもうどこにでもある鉱物ですが、黄鉄鉱と同じで、ありふれているからこそそのきれいな結晶が際立っていると思います。大抵はかたまり状か八面体の結晶ですが、肉眼で結晶という不思議を見ることができるのはやはり魅力的ですね。磁石を近づけると、すごい勢いで吸いつきます。

黄鉄鉱はあまり役にたちませんが、磁鉄鉱(の風化した砂鉄)は、たたら製鉄の原材料として、日本ではもっとも重要な鉱物のひとつでした。ちなみに「たたら」とは元々ふいごのことですが、次第に砂鉄と木炭を熱して鉄の原料を作る際の炉、さらには製鉄場のこともたたらといわれるようになりました。語源は、サンスクリット語の「熱」を意味するタータラ、ダッタン語の「猛火」を意味するタタトルからきているなどといろいろな説がありますが、いずれにせよインド・中央アジアあたりから伝わったもののようです。

磁鉄鉱といえば、自然の鉱物の中で最も磁気が強いものですが、それでも磁石といえるほどの強さはありません。さらに磁性が強くなって自ら砂鉄などを引き寄せるようになったものを天然磁石・ロードストーン(Lodestone、Loadstone)といいます。落雷の電流によって生成されるともいわれていますし、または磁鉄鉱が酸化・風化によって磁赤鉄鉱(Maghemite)となると、天然磁石になります。

ロードは道とか進路という意味で、リード(lead)と同じ語源を持ちます。人を導いてくれる羅針盤などからついた名前でしょう。

 

Magnetiteの語源ははっきりとはしていないのですが、ひとつは、古代ギリシャ・テッサリアのマグネシア(Μαγνησία)で磁鉄鉱がとれたので名前がついたという説があります(マグネテス人という人々が住んでいたらしい)。ただ、マグネシアには滑石の鉱山もあり、滑石からできた白い粉をマグネシアと呼んだ→マグネシウムの由来、という話もあり、実にややこしいことになっています。ここでは磁鉄鉱、滑石だけでなく、マンガンなども産出したようですね。さらに、ギリシャのマグネシアの人々が小アジアに移住し、現在のトルコにもマグネシアという地名が2か所あります。そして、そのうちの1か所からも磁鉄鉱は産出したようです。質が悪くあまりくっつかないという話が残っているので、多分ロードストーンではなくまさに磁鉄鉱だったんですね。

もうひとつ、プリニウスの「博物誌」には、ギリシャの詩人ニカンドロスによると、マグネスという羊飼いが放牧をしている時、偶然発見したので、その名前から命名されたという話が載っています。

。。。まあとにかくあのあたりが語源ってことですね(あやふや)。

羅針盤が作られたのは中国ですが(11世紀、宋の時代)、磁石は紀元前から「慈石」として知られていました。どうやら石が引き合うさまを、親子の慈しみになぞらえたようです。現在の中国河北省には磁県という地名がありますが、これは慈石が採れた慈石山という山があり、そこから慈州→磁州→磁県と変わってきたらしいです。

 

硫黄と同様、世界の磁鉄鉱史もかなり面白そうですね。多分調べれば調べるだけいろいろと出てきそうですが、きりがないので、このへんにしときます。

 

2020年11月 8日 (日)

水苦土石(群馬県藤岡市八塩鉱山)

Hydromagnesite Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O 炭酸塩鉱物等

 

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水苦土石は、学名やそれを直訳した日本語名の通り、水とマグネシウムを主要な成分とする鉱物です(苦土はマグネシウムのこと)。

写真の通り、薄い板状で先の尖ったソードのような透明結晶が放射状または球顆状に集合することが多く、蛇紋岩中に産し、表面にいっぱいへばりついているのはなかなか見映えのするものです。

ここでは他に似たような鉱物として、アルチニー石やあられ石もありますが、先の尖った形ですぐに見分けがつくと思います(かなり小さいですけど)。あられ石もやっぱり放射状の白い結晶が石にへばりついていますが、水苦土石とはサイズが違い、数センチレベルの大きさがあります。自分が見た限りでは、大きいのは大体あられ石ですね。あと水苦土石は純白ですが、あられ石はちょっと濁っていて光沢がない感じ。

下2枚の写真の部分は先端の形をはっきり確認できないのですが、すべて板状の結晶の集合のように見えるので、水苦土石としています。アルチニー石は針状・繊維状になるとのこと、見たことないけど、モルデン沸石みたいな感じでしょうかね? もしかしたら下2枚はアルチニー石の可能性もなきにしもあらず?

 

クロムやあられ石を採掘していたという八塩鉱山跡は、群馬県と埼玉県の県境にあります。利根川の支流のひとつ、神流川沿いの八塩温泉、その上の御倉御子神社の背後の山の中にちょっと入ったところです(川向うは埼玉県)。下に弁天山・桜山ハイキングコースのための駐車場もあり(付近のコース地図も置いてあった)、ポイントは弁天山展望台のすぐそばなので、それほど遠くもなく、便利もよいです(神社の駐車場まではうちの車では入れなかったし、使わない方がいいと思う。歩いても大した距離じゃないです)。

すぐ南には、神流川の支流で地質学的には名の知れた三波川があります。日本最大の広域変成帯のひとつである三波川変成帯はこの周辺を東限として、中央構造線に沿って、西に向かって紀伊半島、四国、九州と日本列島を横断して続いています(このブログでも、オンファス輝石角閃石岩(愛媛県四国中央市関川流域)でとりあげています)。

実際、鉱山に行く途中の林道中、きらきら輝く膜のへばりついた石英の塊がよく落ちているのですが、それを見たとき、四国・別子鉱山の近くの渓谷で見た石とそっくりだなぁと思ったのです(もしかしたらこのあたりの沢とかで、藍晶石とか見つかりませんかね?)。ちなみに、下の駐車場にも大きな石英がころがっていたり、ポイントに行く途中、滑石の露頭があったりと、鉱山そのもの以外でも興味深いものが多く見られます(どちらも鉱山のズリにはまったくない)。神社の石段にも、石英の脈が走っていたり、さすが三波川(周辺には他にいくつも鉱山跡があります)。

鉱山直上には弁財天、山の神の祠と展望台がありますが、展望台にも青緑に縞模様の入った三波川の結晶片岩・三波石が置かれているので、ついでに見に行くといいかも?(天気が良ければ日光の山々、筑波山とちょこっと赤城山も見えてお休みどころですが、工場の音がうるさいかもしれない。。。)

 

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八塩鉱山の坑口。坑口前の広場にはトロッコのレールや石組が多く残っている。

 

2020年11月 5日 (木)

銅藍(静岡県下田市稲生沢川流域)

Covellite CuS 硫化鉱物

 

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河津鉱山由来と思われる、銅藍です。

黄銅鉱、黄鉄鉱などのついた石を割ったところ、黒っぽい藍青色が姿を現しました。最初は黄銅鉱の酸化被膜かとも思ったのですが、よく見ると小さいながらも板状になっているようですので、銅藍であろうと考えました。被膜状や時に六角形の美しい姿をとる銅藍は、あこがれの標本のひとつだったので、汚い川から拾った思いもしなかったこの標本にはびっくりしました。

火山などでも産出することがあるようですが、多くの場合、硫化鉱の二次鉱物として生成されます。銅と硫黄だけの化学式がシンプルでいいですね(鉄などが混じる場合もある)。

鉱物の魅力の大きな要因がその色ですが、青から緑になることが多い銅の二次鉱物は、もっとも好きなもののひとつです。藍銅鉱をメタリックにしたような、時に虹色の光彩をはなつ銅藍は、中でも美しさが際立っていると思います。

人(標本)によってイメージは全然違うと思うけれど、自分的には、白から緑に変化する孔雀石は白い花崗閃緑岩とコケの色。青緑のブロシャン銅鉱は、ちょっと深いサンゴ礁の海の色、あるいはユーシンブルー。藍銅鉱は、高山で仰ぎ見る深い吸い込まれそうな紺碧の空。水亜鉛銅鉱は春のぼんやりと霞んだ淡い水色の空。銅藍はもっと人工的、都会的な金属の色ですね。音でいえば、プリペアード・ピアノって感じかな(現代音楽のジョン・ケージが「発明」した、ピアノの弦にいろんなものをはさんで変な音にする奏法or楽器です。ケージ以外あまり使っている人はいないw ポップス系では、デヴィッド・シルヴィアンと、うみぬこPくらいしか知らないw)。

 

それにしても色というのはなんなのでしょうね。鉱物を構成する元素によって明らかに色は変わってきますが、いろんな色の光を当てれば、表面の色もそれに合わせて変わってきます。また錯視のように、色のないところに色を感じることもあります。

色というのは、物体の表面の性質や光の波長などの物理的な性質ではなく、人間の脳による「感覚」であるという考えが最近あるようです。つまり、もともとこの世界には「色」というものは存在せず、人間の脳が作り出す「概念」であるということでしょうか。。。人間がいなければ今あるこの「世界」は存在しないというとおおげさですが、でもこれは実際その通りなので、人間の可視光とはまったく違う波長しか見えない生物しかいなければ、世界の姿はずいぶん違うわけです。あるいは、光(音、匂い、触覚でも)を認識しない生物しかいない世界であれば、世界の姿はまったく異なるし、光で認識する世界はそこでは存在しないということになる(誰も認識できなければ、存在するとはいえない)。

いやそんなことはない、誰も知らなくても存在しているのだ、という人がいるかもしれない。でもそれは、自分たちがそれが「存在」している、と知ってるからそう思うだけではないか。たとえばAという鉱物があって、ある時点でそのAとそっくりなBという鉱物が見つかったとします。Bという鉱物は、発見され「B」という名前がつけられる前から存在したのか? 存在はしていないと考えられます。それ以前にあったのはAだけで、Bという鉱物は「B」という名前がつけられた時点からしか存在しえない。その違いを認識しない段階では、その違いは存在しないのです。違うことを認識できないのではなく、違いそのものが存在していないのです。

ただ逆にいえば、色というものが「概念」であり物体の色はその物体の物理的性質ではない、としても、色で世界を認識する意識が存在する、ということだけで、色は本質である、ということもいえやしないか。。。認識することそのものが世界を決定するのならば、色で鉱物の種類を視認する意識があることによって、色は本質であると「設定」されるのではないか。。。宇宙とは、常にそのように再設定され続けている、定数など存在していない流動的なものなんじゃなかろうか。。。

 

まあ哲学ごっこも飽きてきたのでもうやめますがw 鉱物の色はなんとも不思議で美しいものであることであることよなあ(古文の授業風に)、と思うわけです。。。

 

2020年10月30日 (金)

バラ輝石(群馬県桐生市菱町茂倉沢鉱山)

Rhodonite Mn2+SiO3 珪酸塩鉱物

 

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茂倉沢のバラ輝石です。以前は輝石の仲間だと思われていたのですが、実際には輝石とは違い、準輝石という構造であることがわかっています。今ではバラ輝石族という集合が作られています。名前は見たとおり、バラの色をしているということで、古代ギリシャ語のバラを意味する「ῥόδον(rhodon)」からつけられました。ラテン語だと「rosa」で、どちらももともとは古代ペルシャあたりからきた言葉をもとにしているようです(バラそのものの起源はヒマラヤのあたりではないかといわれている)。

たいていのマンガン鉱床にはよく見られるもので、特に珍しいものではありませんが、磨いてちょっとした宝石として使われることもあります(マンガン鉱石としては価値は低い)。珪酸塩系なので、石英と一緒になっていることが多いです。

かたまりになっていることが多いのですが、ここのバラ輝石は拡大すると、結構透明できれいですね。3枚目の写真は色が濃く紫色ですが、どうも成分の違いによるもののようです。マグネシウムが含まれていると、紫系の色になることが多いようです。

空気や水、光に触れると徐々に黒くなっていきます。だから、沢に落ちているものは、大抵表面は真っ黒です。とても硬いのですが、苦労して割るとこの鮮やかなピンク~紫の面があらわれて、とても感動します。

「バラの下(sub rosa)」というと、ラテン語圏では「秘密」という意味。まさに真っ黒な表面に隠された美しい「秘密」ですね。

(「バラ」というのはさまざまな象徴、暗喩があって、意味ありげにする時に便利なのですw 『薔薇の名前』を書いたウンベルト・エーコもそんなことを言っていたような。。。)

 

2020年10月25日 (日)

ヒンスダル石?(山梨県甲州市黄金沢鉱山)

Hinsdalite PbAl3(SO4)(PO4)(OH)6 燐酸塩鉱物等

 

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最初は藻の類かと思いました。次に、ここではよく見られるビューダン石が変な形で集まったのかと思っていたのですが、ビューダン石で検索していて、黄色い管状のHinsdaliteの写真を見つけました(ヒンスダル石はビューダン石の仲間)。はじめて聞く名前だったので、Hinsdaliteで検索していくと、今度は円形の黄色い中心核が白で縁どられた写真も出てきました。どちらの写真も、これと似ています。こちらの写真は解像度が低いので、詳細はよく見えませんが。。。他に類似の鉱物はまったく見つけられませんでしたので、ヒンスダル石?として掲載することにしました。

日本では、北海道の小別沢鉱山、秋田の亀山盛鉱山、それに島根の銅ヶ丸鉱山くらいでしか出ていないようなのですが、どうなんでしょう。黄金沢鉱山で出ても、まあおかしくないような気もしますが。。。(銅ヶ丸鉱山は江の川にあります。昔広島から河口の江津までカヤックでツーリングしたことがあって、懐かしく思い出しました)

珍しいのは、ポロニウム(Po)を含んでいるからでしょうか。天然のポロニウムは、非常に微量しか存在していないといいます。ウラン系の鉱物にもPoが含まれていて、放射性元素です。緑鉛鉱にも含まれていますね。

ネット上でもそれほど情報がないのですが、「鉱物たちの庭」尾去沢石の項目に、次のような記述がありました。

「…(尾去沢石は)産出は珍しくないが、一般に粉末状。秋田県亀山盛鉱山のものは、緑鉛鉱→ヒンスダル石→尾去沢石+ビーバー石の順で風化生成したとみられ、ビーバー石と累帯構造をなし、顕微鏡的に菱面体結晶を示すものがあるという。尾去沢石は…「日本の新鉱物」には、稀に管状の形態を示すとある。」(カッコ内引用者)

尾去沢石が稀に示すという管状の形態、もしかしたら、今回のヒンスダル石のような形態のことでしょうか。

また、松原聰・松山文彦「岐阜県遠ケ根鉱山産セグニット石」にも、以下のような記述がありました。

「二次鉱物の緑鉛鉱からヒンスダル石が生成され,ビーバー石―尾去沢石固溶体の形成に至るプロセス,また鉛ゴム石からヒンスダル石へのプロセスを確認している(松原ら,1997年岩鉱学会講演準備中)(以下略)」(松原・松山「岐阜県遠ケ根鉱山産セグニット石」鉱物学雑誌、第26巻第4号、1997年)

鉛ゴム石、また知らない名前が出てきた。。。検索してみると、青い緑鉛鉱といったような形態をしている鉱物です。結晶が長く伸び、六角形が丸みを帯びたような写真もあって、ちょっとヒンスダル石に似た感じのものもありました。

黄金沢鉱山で緑鉛鉱は出るという話は聞きませんが、緑鉛鉱のPo4がAsO4になるとミメット鉱になります(Asは砒素)。

。。。でもまあこういう難しい話は詳しくないのだから、あまり首を突っ込まない方がよいですねw 専門の人に任せておきましょう。

ただ、こういった二次鉱物、三次鉱物が出る可能性もあると覚えておけば、訳の分からないものを見つけたときに、それが何なのか、アタリをつける助けになると考えて、ちょっと頭の隅に置いておけばいいかと思います。

この石のおかげで、また新しい鉱物の名前と見かけを覚えることができたわけだし。このあたりの鉱物は、よくある鉱物図鑑のような本にはほぼ載っていないものばかりですからね。

 

2020年10月21日 (水)

ぶどう石(山梨県身延町杉山)

Prehnite Ca2Al(Si3Al)O10(OH)2 珪酸塩鉱物

 

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Prehnite_iwakake_02

Prehnite_iwakake_03

 

下部温泉のそば、栃代川の、有名な産地のぶどう石です。

普通は岩欠のぶどう石といわれますが、住所的には岩欠ではなく杉山となります。産地の直前に杉山橋を渡りますが、その橋の直前までが岩欠で、そのあとは毛無山までずっと杉山です。

ほんのりと緑(~青)に染まった板状結晶が放射状に集合して、まるでぶどうの実のような姿をとることが多いということで、日本ではぶどう石と呼ばれています。色のついていないものも多いですが、無色だちょっとつまらないので、やっぱりシャインマスカットみたいな色のものがいいですね。海外産の写真などを見ると、確かにぶどうのように見えるものがありますが、日本で産出するものはそれほどぶどうっぽい感じはしません。

ここのぶどう石も結晶粒が大きいので、それほど「ぶどうみ」はないのですが、ルーペや顕微鏡で見ると、四角の板状結晶が少しずつズレながら積み重なっているのがはっきりわかります。

ちなみに1枚目の写真は色味がちょっと他と違いますが、これは光源が太陽の光だからです。朝の日光にきらきらしてとてもきれいだったので、思わず写真にとってみたのですが(カメラ本体でのマクロ撮影)、ほんのりと赤味がさして、あたたかみのある感じですね。

 

洋名は、喜望峰のオランダ植民地に駐在していたプレン大佐(Hendrik Von Prehn、1733-1785)に由来するらしいですが、和名のほうが全然いい名前ですね。プレナイトの由来を聞かされても、正直それがどうしたという感じです。イメージを喚起する「ぶどう石」には言霊が宿りそうだけど、「Prehnite」では単なる記号で名が体を表しておらず、化学式を覚えた方がよほどましかもしれないw

 

採集した現地では、台風による大雨の翌日だったため、川が増水して石を探す範囲が狭まっていたようで、結構苦労しました。当然、気になる対岸にもとても渡渉できず、川沿いの崖のあちこちから滝のように水が流れ落ちていました。それでも、いくつかのぶどう石を含む石を見つけることができました。ネット上では絶産に近いという言葉もちらほら見られたのですが、やはり絶産などということは滅多にあることじゃありませんね。

Tojirogawa

 

あとここに行くときには、すぐそばの下部温泉にある金山博物館がおすすめです。この一帯の金山のことを知ることができます。栃代川の上流部にも、栃代金山というのがあったようです。あまり詳しく調べられてはいないようなのですが、ちょっと気になりますね。まあ金山周辺というのは、鉱物的にはそれほど面白くないことが多いのだけれど。。。

地形図には栃代から毛無山に行く道、雨ヶ岳と仏峠の間を越えて本栖湖に出る道が描かれていて、まあ十中八九廃道でしょうけど、一度探索してみたいところです。

 

2020年10月17日 (土)

緑泥石(山梨県道志村道志川流域)

Chlorite (Mg,Al,Fe,Li,Mn,Ni)4-6(Si,Al,B,Fe)4O10(OH,O)8 珪酸塩鉱物

 

Chlorite_doshi_01

Chlorite_doshi_02

 

緑泥石はグループ名です。様々な成因の鉱床中、ほとんどどこでもあるものだと思いますが、だからこそ岩・土壌の構成物としては、最も重要なもののひとつと言えます。

シャモス石(Chamosite)、クリノクロア(Clinochlore)、クーク石(Cookeite)、ペナント石(Pennantite)、須藤石(Sudoite)などの種類を含むグループです。

写真は、道志のペグマタイト中の緑泥石。ここではこの暗緑色の粒子の固まりのような緑泥石が多く、長石や石英、緑簾石の結晶がその中に埋もれているのを見ることができます(一番上の写真の白いのは微斜長石)。柔らかいので、爪楊枝でも掘ることができます。

わざわざこれを目的に採集するようなものではないといえばそうなのですが、鏡下では、ごく小さなきらめく雲母のようで、とてもきれいです。これはクリノクロアだと思うのですが、ちゃんと判別できないので、緑泥石として記事にしました。

下の写真は、同じ場所で見つけた、水晶に内包された緑泥石です。

 

Chlorite_doshi_02_doshi_03

 

緑のきらめく粒が散りばめられていて、きれいです。

ここの石では、今まで他の鉱物を緑泥石が覆っているものしか見たことがなかったので、長石や石英などが結晶したあと、緑泥石が最後にできたんだろうと思っていましたが、一概にそうだとはいえないみたいですね。

緑泥石は約600度以上の高温では他の鉱物に分解してしまうので、それ以下の低温で生成されるもののようです。写真の水晶の条線が妙にはっきりとしているので、低温でじっくり段階的に成長していって、その過程で内部に取り込んだものなんでしょうか。

 

道志では、あちこちの林道を歩いていると、たまにペグマタイトの欠片を見かけることがあります。尾根を切り、普通だと入りにくい沢を経由する林道は、普通に歩いているとつまらないものですが、岩や石を見ていくと結構あっという間に数キロ進んでしまいます。石を追って沢を遡り出所の露頭を探したりしますが、基本大したものはないので無駄足ばかり(あたしって、ほんとバカ)w 行きやすい場所なんてはるか過去から現在にいたるまで、ほぼ調べ尽くされているのでしょう(こんなの絶対おかしいよ)。

でも沢は、人間が掘るよりもすごい勢いで深く山を削り掘ってくれる。1年後に行ったらまるで様子が変わってたなんて、よくあること。世附あたりの林道なんて、2、3年ごとに必ず崩れてますしw 山から海まで岩や土を細かくしながら運ぶのが、川というものですからね(今ではその前に堰堤やダムで一時止められますが、こんなのはせいぜい数十~数百年単位の出来事で、千年、万年単位で見れば何も変わりません。そして万年単位だって山から見たら一瞬という。。。わけがわからないよ)。

以前は誰も知らなかった鉱脈が露出することもあるでしょう。この数百年の間に限っても、誰にも知られず現われ、誰にも気づかれないまますべて流されていった鉱脈もあったはず。気づかれれば鉱山になります。特に道志のペグマタイトは、今現れているものだけ見ても、ごく小さなスポットがあちこちに点在するという感じなので、新しいポイントを見つけることも奇跡や夢ではないかも。。(奇跡も、魔法も、あるんだよ)。

そういう偶然に出会えたら、それはとっても嬉しいなって。

 

2020年10月15日 (木)

(硫)テルル蒼鉛鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

テルル蒼鉛鉱 Tellurobismuthite Bi2Te3 硫化鉱物

硫テルル蒼鉛鉱 Tetradymite Bi2Te2S 硫化鉱物

(都茂鉱 Tsumoite BiTe 硫化鉱物)

 

Tetradymite_mukaidanim_01

Tetradymite_mukaidanim_02

 

向谷鉱山の銀白色金属光沢鉱物です。テルル+蒼鉛系の鉱物だと思います。石英に埋もれた感じで、周りに散りばめられている黄色いのは蒼鉛土でしょうか。

候補としては、テルル蒼鉛鉱、硫テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つですが、とりわけ稀産の都茂鉱以外のどちらかではないかということで、タイトルはそのようにしました。

 

向谷鉱山で産出する銀白色金属光沢の鉱物は、ほとんどは硫砒鉄鉱だろうと思います。いろいろなサイトや本を見て、自分なりにその判別方法をまとめてみました(向谷鉱山での場合です。他で通用するかどうかは分からない。蓮台寺川流域では、ちょっと通用しないみたい)。

硫砒鉄鉱もビスマス‐テルル系鉱物も、色はきらきら輝く光沢の強い銀色~鋼色。

硫砒鉄鉱は、表面がでこぼこ、がさがさしていて、荒い感じ。きれいな結晶の表面は割となめらかだが、この場合の銀色は艶消しの銀色になる。ビスマス‐テルル系鉱物は、表面がとてもなめらかな部分を含み、その部分は鏡面のように平ら。

結晶が細かい場合、ひし形の反射光が見えたら、硫砒鉄鉱。

都茂鉱も結晶粒が細かく、脈状に密集することが多い。

蒼鉛土がすぐそばにある場合は、ビスマスを含む鉱物と思われる。

 

少なくとも、硫砒鉄鉱とビスマス‐テルル系鉱物の違いは何となく分かるような気がしますが、それ以上の違いは、なかなか判別できないですね。。。これにヘッス鉱(銀とテルルの鉱物)やアルタイ鉱(鉛とテルルの鉱物)なども加わると、もう無理という感じです。

今回の写真の場合、蒼鉛土らしきものもそばにありますし、表面がとても滑らかなので、ビスマス‐テルル系鉱物、しかも多分都茂鉱ではない、と考えました。ただいくつかの種類のビスマス‐テルル系鉱物がすぐ隣合わせになっていることも多いようですし、特に2枚目の写真は都茂鉱の可能性もあるのではないかとも思うのですが、どうでしょうね。。。見ただけでは分かりませんので、まあここまでが精一杯かな。

 

ところでデジタル鉱物図鑑だと、硫テルル蒼鉛鉱、テルル蒼鉛鉱、都茂鉱の3つはどれも硫化鉱物の分類になっているのですが、後二者は硫黄(S)が含まれていないけれども硫化鉱物でいいの? ふと疑問に思って調べてみたら、硫黄のかわりに、砒素、セレン、テルルなどが金属元素と結合した鉱物は、性質が硫化鉱物と似ているのでひとまとめにすることもある、とのこと。

なんとなく分かったような分からないような。。。そんなに種類も多くないので、無駄に分類を増やすよりはまとめちゃったほうが取り扱いやすい、とかそういう感じなんでしょうか。

まあまたひとつ新しいことを覚えたので、良しとしましょう。

 

2020年10月12日 (月)

テルル石?(静岡県下田市稲生沢川流域)

Tellurite? TeO2 酸化鉱物

 

Tellurite_rendaiji_01

Tellurite_rendaiji_02

 

伊豆下田、河津鉱山のズリ跡からと思われる石です。

石英の小さな晶洞中にあった無色透明の板状の結晶。周囲の小さな水晶はオレンジ色に染まっています。普通に錆びがついているのか、それともテルルの色なのか、わかりません。その中で、この結晶だけは無色透明を保っていて、とても目立ちます。なんだろう?

自分としては、とりあえずこれはテルル石ではないかとしておきたい(まあ願望ですねw)。

ネット上で見られるテルル石の写真は、濃度の違いこそあれ、すべて黄色~オレンジ色をしているけれども、いろいろな本の説明では無色・白色~黄~橙となっています。

河津鉱山の産出鉱物の一覧(TrekGEO)の中で、こういう結晶になりうるものは他にあるのかどうか。正直、初めて見る名前がいくつも出ているのですが、この中だと、重晶石か、石膏か、輝沸石とか? あるいは2枚目の写真だったら、双晶で板状になっちゃった水晶とか? どれもイヤだなあw せっかく何とか探して手にした河津鉱山の石なんだから、テルル石の結晶にしておいてよ…

…という気分なのですw

もし本当の正体が判明すればそれにこしたことはないですが、不明である今はとりあえず、「テルル石?」という地位に置いておこうかと思います。

このブログではもともと「なんだかよくわからないもの」もどんどん載せていこうと思っていたので、まあお許しください。

 

大体鉱物というものは図鑑等を見ても、そっくりそのままのものが出てくることのほうが少ないですね。生物とはそこが違うところです。

ちょっと違う成分が入れば色もどんどん変わりますし、理想的な結晶の形をしているほうが珍しい。というか、差がはっきりしていないのが普通といっていいみたいです。

たとえば、キノコなんかに、ちょっと似ている気がします。キノコも、同じ名前のつくものであっても、地域によってちょっと違っていたりするような気がします。似た別種のキノコであっても、実ははっきりと分かれているのではなく、鉱物と同様にグラデーションのようにその間が連続しているのではないかと思うことがあります。

めんどくさいことに、名前も地域差があって、これがえらく紛らわしいことになっていたり。イッポンシメジというと、普通は毒キノコですが、地域(山梨や栃木など〈の一部地域?〉)によっては食べられるウラベニホテイシメジのことをイッポンシメジといったり(実際この2つはとても似ている)。それらとやっぱり似ている毒キノコ・クサウラベニタケのことを、ツキヨタケといったり(まったく別の毒キノコ)。ツキヨタケは日本で一番被害の多い毒キノコです(見た目、すごくおいしそうで大きいのです)。

でも鉱物は同定を誤っても、キノコみたいに苦しんだり死んだりしないので、まあ気楽ですねw

 

2020年10月 7日 (水)

鈴木石(群馬県桐生市菱町茂倉沢鉱山)

Suzukiite BaV4+Si2O7 珪酸塩鉱物

 

Suzukiite_mogurazawam_01

Suzukiite_mogurazawam_02

Suzukiite_mogurazawam_03

 

群馬県・茂倉沢鉱山の鈴木石。。。ではないかと思うのですが、どうでしょうね。

かなり珍しい鉱物だと思いますし、1回しか行っていないところでこんなに簡単に見つかるもんかと疑心暗鬼にもなりますが、分析できるわけもなく、見かけ上はそっくりですので、ここは鈴木石ということにさせてもらおうかと思います。

鈴木石はバリウムとバナジウムが主成分で、まさにここ茂倉沢で発見された鉱物です。発見年も書こうと思ったのですが、なぜか様々なサイトで発見年がばらばらなのはなぜ?(最初の発見地についても、何だかあやふやなところがあります) まあめんどうなので、そのあたりのことは追求するのはやめておきます。いろんな事情があるのでしょう。その事情に興味はあまりないので。

そんなことより、この石の美しさを愛でるほうが、より意味があるのではないかと思います。淡いピンクのバラ輝石の中で、鮮やかなエメラルドグリーンが目にしみます。

ところで、これが鈴木石なのかどうか疑問を感じる理由がもうひとつあって、それは、この石の片割れの方に孔雀石がついていたからです。質感は違いますが、どちらも緑色で、孔雀石はさまざまな姿をとることのある鉱物ですから、これも孔雀石なんじゃないかという疑問があったのです。下の写真は、その孔雀石。

 

Malachite_mogurazawam_01

 

これは明らかに孔雀石ですよね。茂倉沢の孔雀石はどうやらかなり稀産らしく、まあこれはこれでうれしいのですが、やはりどこでも見つかるものよりは初めての鉱物のほうがうれしいのは仕方ない。

こうやって写真に撮ってじっくり眺めていると、その違いもはっきり見えてくるような気がします。孔雀石の方は母岩の表面にへばりついているように見えるけれど、鈴木石のほうはむしろ母岩の中に埋もれているように見えますね。3枚目の写真の鈴木石は、ちょっと孔雀石の部分も混じっているようにも見える。。。

こうやって悩むのも、鉱物の楽しみのひとつかもしれません。

 

2020年10月 1日 (木)

スコレス沸石(山梨県道志村道志川流域)

Scolecite Ca(Si3Al2)O10・3H2O 珪酸塩鉱物

 

Scolecite_doshi_01

Scolecite_doshi_02

 

道志の丹沢側地域の産出。

菊花状の薄い結晶群で、多分沸石ではないかと思うのですが、ネット等で検索してもこういう形態はなかなか見つかりません。結晶の先がとんがっていれば、水苦土石がこんな感じですけど、見たことないからなんともいえないし、母岩は閃緑岩ですし、まあ違いますね。

この辺では時にスコレス沸石が見られるようなので、これもそうではないかと考えました。菊花状というより扇形と考えればスコレス沸石によくある形態ですし、スカルンなどによく見られるそうで、採集した沢の近くにはスカルンの露頭があるかもしれないことを考えると、間違いないかな? 結晶が薄いので、ソーダ沸石ではないと思います。中沸石かもしれませんが、見て判別はできないようなのでしょうがない(松原聰「シリーズ造岩鉱物各論 沸石の種類」岩石鉱物化学31、2002)。

スコレスというのはギリシャ語で虫の意味で、熱すると芋虫のように曲がるそうです。もちろん試していません。

1枚目の写真にもありますが、オレンジ色のきらきらした部分が、ちらほらついていました。こっちも気になる。ザクロ石の類かなぁ?

 

道志はずいぶんいろんな鉱物が見られますが、鉱山の類は少なくとも明治以降はほとんどありません(明治以前には水晶を掘っていたらしい)。これは、道志川が相模川の上流域であるためです。神奈川、特に横浜の重要な水源地として認識されていたため、鉱山の話が持ち上がっても、すべて横浜市から横やりが入って、立ち消えてしまったようです(加入道山の石灰岩は試掘くらいはしたんでしょうか)。明治20年に相模川からの取水をはじめていますが、30年には道志川から直接取水するようになり、その後水源涵養林として広範囲の森を買収しています。

だから、このあたりでは横浜市という文字の入った看板がやたら多いです。加入道山への登山道に入ると、森の中に横浜市の区が全部そろってたりします(区ごとに植林をした区画らしい)。室久保川にある道志の湯では、横浜市民はちょっと安くなりますw

横浜市青少年野外活動センターというのもありました。今はもう何もなくなっていますが、当時の子どもが作ったらしい小さな道標だけが、ここからバン木の頭や忘路峠(犬峠)に登る廃道に残されているだけです。ちなみにバン木(盤木)というのは、昔山から木を伐り出して運んだ木馬道〈きんまみち〉というレールの横木のことです。電車のレールを天地ひっくりかえした構造で、電車のレールの枕木の部分が上になっていて、そのレールの上を丸太を載せたソリを滑らせるわけです。昔はこの辺にも、木馬道があちこちにあったんでしょうね。

 

2020年9月26日 (土)

自然蒼鉛(長野県茅野市向谷鉱山)

Bismuth Bi 元素鉱物

 

Bismuth_mukaidanim_01

 

前回のヘドレイ鉱のすぐそばにあった、やはりヘドレイ鉱と思われる集合です(きらきら光沢のある黒い部分)。

その中央部に、周囲とちょっと違う質感の銀色のかたまりがあるのに気づきました。この部分が、自然蒼鉛(ビスマス)だと思います。

ところどころついている黄色いのは、蒼鉛土でしょうか。

『鉱物ウォーキングガイド』の向谷鉱山の項に、以下のような記述があります。

「自然蒼鉛は銀白色(錆びるとピンク色を帯びる)でやや粗粒の石英中におもにヘドレイ鉱を伴って産する。集合体の中心部が自然蒼鉛で、周囲がヘドレイ鉱という場合が多い」(松原聰著『鉱物ウォーキングガイド 関東甲信越版』丸善出版、平成24年)

この説明のとおりの産状ですね。割ってそれほど経っていない時の写真で新鮮なので、まだピンク色を帯びてはいません。

自然蒼鉛の左下のはじが階段状になって虹色に光っているのが、人工的なビスマスの結晶を思い起こさせます(ビスマスは融点が271.3℃と低低く扱いやすいので、一度溶かしてから再結晶させて、アクセサリーにしたりする。ビスマス、結晶で検索するとたくさん出てきます)。

「蒼」という字で青っぽい感じがしますが、蒼鉛は別に青いわけではありません。「蒼」は、青というより緑ですが、「古色蒼然」「鬱蒼」といった熟語からわかるように、深い色、薄暗い色、という意味合いが含まれているようです。

 

宮沢賢治に「永訣の朝」という有名な詩があります。死を目前にして喉がかわいた妹に頼まれ、お椀に雪を取りに外に出る、という内容ですが、そこに「蒼鉛いろの 暗い雲から/みぞれは びちょびちょ 沈んでくる」という一節があります。宮沢賢治は鉱物マニアで、多くの作品にたくさん鉱物やら地学用語が出てきますから、当然蒼鉛も知っていて、実物の自然蒼鉛の色と、字面のイメージから、こう表現したのです。

何節か前では、「うすあかく いっさう 陰惨な 雲から/みぞれは びちょびちょ ふってくる 」と書かれています。上の引用にもあったように、自然蒼鉛は錆びるとちょっとピンク味を帯びます。だから、ここでは「蒼鉛いろ」がまったく正しいわけです。それに、たとえば「鉛いろの暗い雲」では重苦しすぎるけれども、「蒼」の字が入るとちょっとイメージが変わってきますよね。

「雲外蒼天」という四文字熟語があります。雲の上には蒼い空が広がっているということからたとえて、困難(雲)を乗り越えれば必ず道は開ける(蒼天)という意味の熟語です。

蒼鉛の「蒼」という字に触発されたかのように、この後、「蒼天」、つまり「銀河や 太陽、気圏などと よばれたせかいの/そらから おちた 雪の さいごの ひとわんを…… 」という一節が現われ、雲の上まで意識が飛びます。賢治らしく急に意識が宇宙にまで広がり、妹の死というまったく一個人的な世界と、人間の世界をはるかに超越した広い世界が対比され、細々とした人間関係の生々しさがかき消されて、純粋な「生命の終焉」という現象への思いに蒸留されるかのようです。そこから賢治独特の硬質な情感が生まれてくる。

なんだかいささか理屈っぽい説明で、自分でも嫌になってきましたがw 「銀河鉄道の夜」の雰囲気も、まさにこれと同じですね。賢治にとって、鉱物の無機質さ、透明な存在感は、有機交流電燈である人間の魂の理想形だったのかもしれません。この硬質な肌触りが、賢治の一番の魅力ですね。この詩が、単なる一個人の感情の吐露に終わらず、誰しもが共感できる美しい表現となっている所以かと思います。

ところで、春の修羅の「屈折率」という詩では、雲を「亜鉛の雲」と表現してます。こういう細かい表現の違いは、鉱物好きでなければ分からないでしょう。

まさに賢治も、自分にとってはゲーテと同じく、偉大な先輩のひとりですね。

 

ところで全然関係ないのですが、『蒼き鋼のアルペジオ』で金剛が使ってた剣みたいの、デジタル鉱物図鑑の自然蒼鉛、2枚目の写真の、樹木のような形の結晶に似てますねw いや、ふと思い出しただけw

 

2020年9月23日 (水)

ヘドレイ鉱(長野県茅野市向谷鉱山)

Hedleyite Bi7Te3 硫化鉱物

 

Hedleyite_mukaidanim_01

Hedleyite_mukaidanim_02

 

金鶏金山のすぐそばにある向谷鉱山の、ヘドレイ鉱だと思います。

ここでは金属光沢の、特にビスマスとテルルの銀白色の鉱物も多いのですが、ヘドレイ鉱だけは黒くなることが多いようです。「黒色板状の結晶が積み重なった姿となり、へき開もまた板に平行に発達する」「石英に埋没するように産出する」(電子顕微鏡室/Electron Microscope Section、東京大学物性研究所)の説明のままの姿と思われます。

他にもビスマス・テルル鉱物は多く見られましたが、自然金はありませんでした。でも、金よりもビスマス・テルル鉱物のほうが稀産ですし、見つけるとうれしいですねw 判別するのは難しいですが。。。

これを採集した場所ですが、ネットや本で見る向谷鉱山の場所とは違う、ちょっと離れたところだったみたいです。

というのは、普通は稜線の林道から廃林道に入って鉱山跡まで行くらしいのですが、このあたりの林道、うちの車では多分走れないのですよね。林道に非常に弱い車で、目的地目前にしてあきらめるということも時にあったりするので、この時も下の青柳駅に車を置いて、歩いて登りました。地図を見て、目的地までの最短最適のルートを探していくのが好きなので(というか鉱物を集めることよりも、そちらのほうがメインといっていいかも)、まあそれはそれでいいのですが、向谷鉱山までのルートも、結構大変でした。

行ってみるまではどうなっているか分からない廃林道、あるかどうか分からない地形図上の道を探しながら、基本的には地形を読みながら尾根上や沢を歩いたりします。この周辺の地図上には描いてある道も、ほとんどすでに見つけられませんでした。ただ、地形が割となだらかなのと、踏み跡(獣道)やら多分植林の作業道も多く、ヤブも深くないのは助かった。

で、直接下から鉱山跡があると思われる地点まで登りつめ、古い石垣と小さなズリを見つけてそこで採集したのですが、どうやらそこは、メインのズリからちょっと離れた地点だったみたいです。大きめの石を叩いたら、例のニンニクのような匂いがして、割とあっけなく様々な鉱物を見つけることができました。あまり人が来ないところだったのかな。

帰りは芝平峠(オオダオ)に出て、金鶏金山にも寄り下山しましたが、林道の展望が開けたところから、編笠山から蓼科山までの八ヶ岳の大展望もありましたし、登山としても結構面白かったです。

ちなみに、金鶏金山まで普通に登る林道の途中にも八ヶ岳展望台という場所があって、展望図が置いてあったりしますが、木が成長してしまったのか、そこからは何ひとつ見えませんw

Mukaidanim_01

 

 

2020年9月19日 (土)

白鉛鉱(静岡県下田市稲生沢川流域)

白鉛鉱 Cerussite Pb(CO3) 炭酸塩鉱物等

 

Cerussite_rendaiji_01

 

静岡県下田で拾った石。下田の街中を流れるのが稲生沢川。

石の出所としては、河津鉱山の川沿いにあったというズリ跡から流れてきたものだと思います。当然のことながら、数多い坑道のどこから出た石かは分かりません。河津鉱山の石が説明されるときの特徴のひとつである、陶器状の石英のついた石もいくつか見られました。

白く細長いのが白鉛鉱だと思います。UV長波で黄色く光ります。半透明の米粒みたいのはなんだろう? 石英? 方解石? それともこれも白鉛鉱?(この米粒はUVでは光りません)

黄色く染色されているのは、テルル成分かもしれません。他も、黄色に染まった石が多いです。もしそうなら、上部の金属光沢は、自然テルルやテルル蒼鉛鉱などのテルル系鉱物かもしれませんが、見ただけでは判別は無理なので、ここではとりあえずスルーってことでw

このすぐそばの晶洞の様子が下の写真。

 

Cerussite_rendaiji_02

 

半透明の牙状の結晶が白鉛鉱だと思います。ただし、UVで黄色く光る部分と光らない部分があります。その違いは普通の照明をあててみても、まったく分かりません。

こちらにも、半透明や白~肌色の粒状のものがついているのですが、これ、ものによっては六方晶系の短柱状結晶に見えます。これも、UVで黄色く光るものと光らないものが混在しています。白鉛鉱は斜方晶系なので、これは白鉛鉱ではないですね(ただし、双晶によって擬六方晶系の形をとることも多いそうですが)。

最初にこれを見た時は、色とか、六角柱状とか、鉛系ということで、山梨で採集したミメット鉱をすぐに思い出しました(ミメット鉱(山梨県甲州市黄金沢鉱山))。河津鉱山では、緑鉛鉱、ミメット鉱、すべて産出します。種類が多いというのも困りますね、特定しにくくて(贅沢すぎるw)。

まあ今回は白鉛鉱の項なので、どちらであるか予想しませんが、どちらかであろうとは思います。

それにしても、河津鉱山の石、ちょっと割ってみるだけで、非常に面白いです。多分この先鉱山跡に行けるようになることはないと思うのですが、これが今では匂いのひどいドブ川(特に蓮台寺川はひどい。多分水に触ると病気になる)にわずかに転がっているだけというのは、ちょっと悲しすぎませんかね。

結局日本における鉱物趣味は、ヨーロッパのような歴史もないですし(明治以前だとほとんどわずか一人、木内石亭しかいない)、金銀掘って儲けるとか、そんな認識しかないんでしょうね(ただ、武田信玄は鉱物マニアだったような気がしないでもないw)。

 

2020年9月16日 (水)

水晶(日本式双晶など)(長野県茅野市金鶏金山)2

石英 Quartz SiO2 酸化鉱物

 

長野の金鶏金山で見つけた水晶です。日本式双晶を中心にまとめました。その2。

 

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Quartz_kinkeim_05

V字型の双晶2つ。1枚目の写真の水晶は、採集した中でも一番大きいもので、肉眼でも見えるサイズです。

双晶ができる原因は一体なんなのでしょう。不純物で双晶ができやすいといいます。双晶が多い地方に共通するものが多分あるのでしょうが、まだ解明されきっていないのかもしれません。その原因についてかっちり説明してくれるものが、なかなか見当たらないので。

普通はいくら水晶がたくさんあっても双晶なんて見られないのに、あるところにはたくさんあるのが面白いです。その原因が化学物質なのか、環境なのかわかりませんが、何か決定的な原因があるはず。金鶏金山であればビスマスとかクロムとか、そういった特徴的な要素が何か影響していたりするのか。。。

 

ところで、ネットで検索していて、面白いところを見つけました。水晶デバイスの開発の歴史をまとめたサイトです(「微の歴史 QMEMSストーリー」)。とりわけ、第4回、戦後の工業における水晶をめぐる状況や、人工水晶の開発の経緯など、なかなか興味深いものがありますね。ちなみに双晶は水晶デバイスには使用できないそうです。

このサイトはセイコーエプソンのHP内にあります(クオーツ式腕時計を世界で最初に開発したのが、諏訪精工舎=セイコー)。そういえば、金鶏金山に行く途中だったか、エプソンの工場の前を通ったような。。。まあ諏訪がまさに本場ですもんね。

 

Quartz_kinkeim_06

両錘の水晶です。2つの水晶の先端に挟まれています。2つの水晶の間に「種」が挟まり、その種から両側に成長していったということでしょうか。こうやってできるんですねぇ。というか、この水晶自体も貫入双晶になってる?

 

2020年9月12日 (土)

水晶(日本式双晶など)(長野県茅野市金鶏金山)1

石英 Quartz SiO2 酸化鉱物

 

長野の金鶏金山で見つけた水晶です。日本式双晶を中心にまとめました。その1。

大きなものはないのですが、時々平板水晶ばかりついている石があり、そういう石の晶洞を探すと、多くの双晶を見つけることができます。見つけた双晶はすべて平板で、六角柱状のものは見つけていません。V字型が多いです。

顕微鏡があるならば、ここが一番簡単に双晶を見られる産地かもしれません。現地では気づかなかったけれど、家で顕微鏡で見て双晶がついてた! という石がいくつもありました。

 

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水晶の日本式双晶といえば、なんといってもこのハート型ですね。かわいい。

自分が見つけた初めての双晶水晶です。何とか肉眼でも確認できるサイズ。

 

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X字型の貫入日本式双晶。左の大きなのもy字をした双晶ですね。

こんな感じで、小さな晶洞の中にたくさんの双晶がちりばめられていて、顕微鏡で探すのが実に楽しいです。透明度が高いので、群晶になっていると双晶に気づきにくいのです。

 

Quartz_kinkeim_03

これは軍配型といっていいのかな。左右の先っちょに、白雲母がめりこむようにくっついています(金鶏金山では、クロムを含んだ緑の白雲母が多い)。全体的に鉄さびがついて赤茶けています。さびはシュウ酸等でとることもでき、水晶などは透明できれいになるのですが、味気なくなってしまうと感じることも多いです。特にここの石は白雲母の緑と茶色がきれいなグラデーションになっていることも多いので。

 

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